2023年5月22日、韓国・ソウルで開催されているタクティカルFPSゲーム『VALORANT』の国際リーグ「VALORANT Champions Tour 2023 Pacific League」(以下、VCT Pacific)にて、プレイオフDay4までの試合が終了し、国際大会「Masters Tokyo」への出場チームが確定しました。
「VCT Pacific」には、6月11日より日本で行われる国際大会「Mastars Tokyo」への出場権をかけ、東南アジア・韓国・日本・南アジアから10チームが出場。現在は、総当たり戦のリーグプレイを勝ち抜いた6チームによるプレイオフが行われています。
日本チーム「ZETA DIVISION」(以下、ZETA)は、プレイオフDay3に行われたロワーブラケットの試合で、韓国チーム「T1」と対戦しました。3マップにわたる大激戦をくり広げましたが、あと一歩及ばず、マップカウント1-2で敗北。「Mastars Tokyo」への出場権を逃す結果となりました。
また、日本チーム「DetonatioN FocusMe」(以下、DFM)は0勝9敗、ランキング10位で敗退。チーム結成からおよそ半年の「DFM」は、出場メンバーやロール、IGL(インゲームリーダー)の変更などさまざまな試行錯誤が続き、リーグプレイでの勝利をあげることは叶いませんでした。
記事では、ここまでの「VCT Pacific」プレイオフの模様や、日本開催となる「Masters Tokyo」について、そして日本2チームが次に挑む「Last Chance Qualifier」(以下、LCQ)についてまとめます。
4位で進出した「ZETA」、プレイオフで惜しくも敗退
「ZETA」は、8週にわたって行われたリーグプレイで5勝4敗、ランキング4位でプレイオフへ進出しました。リーグプレイの最終週、「ZETA」はボーダーライン付近に位置していましたが、最終試合で韓国チーム「Gen.G Esports」に勝利し、プレイオフ進出を確定させています。
プレイオフDay1で「ZETA」は、フィリピンチーム「Team Secret」と対戦。2マップ続けて相手チームのリードに対して「ZETA」が追い上げる展開を見せ、オーバータイムに持ち込みます。しかし、どちらもオーバータイムを勝ち切れず、「ZETA」はマップカウント0-2で敗北。負けたら大会敗退となる、ロワーブラケットへと移りました。
「Masters Tokyo」への出場権を獲得できるのは、上位3チーム。プレイオフDay2では、アッパーブラケットで勝利した、韓国チーム「DRX」とシンガポールチーム「Paper Rex」が、ひと足先に「Masters Tokyo」への出場を確定させます。ロワーブラケットに移った「ZETA」が3位以内に入るには、2試合連続で勝利する必要がありました。
「ZETA」がプレイオフDay3で戦ったのは、韓国チーム「T1」。1マップ目を落とし、後がなくなった「ZETA」ですが、2マップ目でオーバータイムにもつれ込む激戦を制し、3マップ目につなぎます。3マップ目では、何度も同点に並ぶギリギリの接戦が続きましたが、最後は10-13で決着。「ZETA」は惜しくもマップカウント1-2で敗れ、「Masters Tokyo」の出場権には届きませんでした。
なお、翌日のプレイオフDay4では、「T1」が「Gen.G Esports」に勝利。これにより、「Masters Tokyo」へ出場する3チーム目は、「T1」に決定しました。「VCT Pacific」の残る日程は、5月27日から「Jangchung Stadium」にて開催される、ロワーファイナルとグランドファイナルの2日間となります。
■「ZETA」のプレイオフ試合結果
Day1:ZETA [0-2] Team Secret
1マップ:13-15(ヘイヴン)
2マップ:12-14(アセント)
Day3:ZETA [1-2] T1
1マップ:10-13(ヘイヴン)
2マップ:14-12(バインド)
3マップ:10-13(フラクチャー)
格別の思いを込めた「Masters Tokyo」出場に届かず
6月11日から25日にかけて、国際大会「Masters Tokyo」が開催されます。日本での国際大会開催に至った背景としては、2022年の国際大会「Masters Reykjavík」で「ZETA」が世界3位を獲得する大躍進を遂げ、日本の『VALORANT』シーンの盛り上がりが世界から注目を集めたことが大きいでしょう。
自国で開催される念願の国際大会とあって、選手たちもさまざまなインタビューで、「Masters Tokyo」への出場にかける並々ならぬ思いを語っていました。「ZETA」のXQQコーチは自身の配信で、「命を削ってでも出たい」と語っていたほどです。しかし、その思いは叶わない結果となりました。
FPSゲームのeスポーツシーンにおいて、日本チームが自国での国際大会出場を逃すのは、2度目のことです。『レインボーシックス シージ』でも、日本チームがベスト4という快挙を成し遂げたのち、日本で国際大会が開催されましたが、残念ながら日本チームは出場権を得ることができませんでした。
こうした出来事からは、eスポーツの世界で“勝ち続ける”ことの難しさを感じさせられます。世界であまり注目されていなかった日本チームも、ひとたびジャイアントキリングを起こせば、多くのチームから注視され、より一層の研究や対策の対象になります。さらには、めまぐるしく変化するメタにも、常に対応しながら戦っていかなければなりません。
日本チームにとって、国際大会での1勝があまりに遠く感じた2021年以前のことを思えば、飛躍的な成長です。しかし、これからは、さらなる壁を乗り越え、より安定して結果を出し続けられる力が求められるでしょう。
「Masters Tokyo」優勝地域は、「LCQ」の追加枠を獲得
日本チームの出場がなくなったとはいえ、世界の各地域からトップ12チームが集う「Masters Tokyo」で、見ごたえのある戦いがくり広げられることは間違いありません。そのうえで、ぜひ応援したいのが、日本チームが属する地域「VCT Pacific」から出場する、「DRX」と「Paper Rex」と「T1」の3チームです。
「Masters Tokyo」で優勝したチームが属する地域は、「LCQ」で追加の1枠を獲得します。「LCQ」とは、年間最大の世界大会「Champions 2023」出場への、最後のチャンスをかけた予選。「VCT Pacific」に属するチームが「Masters Tokyo」で優勝すれば、「LCQ」からの出場枠が1つ増え、日本チームの「ZETA」と「DFM」にとって大きなチャンスにつながります。
なお、「VCT Americas」と「VCT EMEA」では、現時点でまだ「Masters Tokyo」への出場チームは確定していません。「Masters Tokyo」には、各リーグから上位3チームと、中国から2チームが出場します。ただし、国際大会「VCT 2023 LOCK//IN サンパウロ」で優勝したチーム「Fnatic」の属する「VCT EMEA」は、1枠が追加され、4チームが出場します。
■「Masters Tokyo」開催スケジュール
・TIPSTAR DOME CHIBA
6月11日~14日:グループステージ
6月16日~21日:プレイオフトーナメント
・幕張メッセ
6月24日:ロワーファイナル
6月25日:グランドファイナル
日本2チームの次なる挑戦は、7月に開催される「LCQ」
2023年の大会形式においては、各地域のリーグで「Masters Tokyo」への出場権を獲得したチームが、同時に「Champions 2023」への出場権を得ます。ただし、「Masters Tokyo」に4チームが出場する「VCT EMEA」については、リーグの上位3チームが「Champions 2023」への出場権を得ることになります。
それらのチームに加えて、「Champions 2023」に出場できる最後のチャンスが与えられるのが「LCQ」。日本チームの「ZETA」と「DFM」は、ともに7月15日から23日にかけて開催される「LCQ」に挑みます。「LCQ」は各地域のリーグで実施され、それぞれ上位1チーム(「Masters Tokyo」優勝チームの属する地域は2チーム)が世界大会「Champions 2023」への出場権を手にします。
シーズンの集大成となる「Champions 2023」は、8月6日~26日にかけてアメリカ・ロサンゼルスにて開催。トップ16チームが集い、年間王者の座をかけて争います。「Masters Tokyo」の出場を逃した日本チームにとっては、なんとしても「Champions 2023」への出場権をつかみ取りたいところ。「VCT Pacific」での経験を活かし、活躍を見せてくれることに期待しましょう。
■「VCT Pacific」地域の「LCQ」出場チーム
・「Gen.G Esports」(韓国)
・「Team Secret」(フィリピン)
・「ZETA DIVISION」(日本)
・「Rex Regum Qeon」(インドネシア)
・「Global Esports」(インド)
・「Talon Esports」(タイ)
・「DetonatioN FocusMe」(日本)