今回の研究では、2018年3月10日から4月7日までの28日間、地下18mに位置する地下室の2か所に原子核乾板を水平に設置。そして回収された同乾板をナポリ市内で現像したのち、名大とナポリ大でそれぞれ解析を行ったという。
宇宙線の観測により得られるイメージから未知の埋葬室を探査するため、既知の地下構造から期待されるイメージのシミュレーションが行われた。そのため、地上からアクセス可能なすべての地下構造のレーザースキャンを行い、正確な地下空間の3Dモデルを作成したとする。
その後、原子核乾板の結果とシミュレーション結果を比較分析することで、未知の埋葬室が探査された。埋葬室が空洞のまま残っていれば、その空洞を通って検出されるミューオンはシミュレーションから予測される量よりも多く観測される。そして解析の結果、地下の排水ネットワークや地上の建築物、地中の密度の非一様性を考慮しても説明できない、ミューオンの超過領域が検出されたという。その超過領域が示す空洞の大きさと3Dモデル中での位置を推定したところ、地下約10mに位置する2~3mの大きさの新しい埋葬室であることが判明したとしている。
今回の成果は、研究チームがこれまでに進めてきたエジプトのクフ王ピラミッドの探査に続き、宇宙線イメージング考古学という新たな文理融合研究をさらに発展させるものとする。また、新たに発見された埋葬室のほかにも、地下の排水ネットワークや未知の空洞の可能性が示唆される領域も検知されており、宇宙線イメージングが地下構造の把握に極めて有効な手段であることが実証されたとのことだ。
また今回の研究成果は、国内で年間約9000件もの陥没事故の原因となる地下空洞を、宇宙線イメージングによって探査・検知することで、事故を未然に防ぐ新たな防災技術につながるとした。