マネ―スクエアのチーフエコノミスト西田明弘氏が、投資についてお話しします。今回は、米国の金融政策について解説していただきます。
米国のデフォルト(債務不履行)回避に向けたバイデン政権とマッカーシー下院議長など議会指導部との交渉は、いよいよ大詰めを迎えそうです。
※そもそも、米国はなぜデフォルトしそうなのか。詳細は4月28日付け「米国はデフォルトに近づくのか」をご参照ください。
合意に向けて前向きな発言
5月16日に2回目の交渉を終えて、バイデン大統領は「デフォルトはないと確信している」と発言。9日の1回目の交渉後に「全く建設的ではなかった」と、取り付く島もなかったマッカーシー下院議長も、合意は「実現可能だ」とやや前向きの発言に変わりました。
2回目の交渉後にバイデン大統領はG7広島サミット(5月19-21日)に向けてワシントンを離れました。ただ、その間、バイデン政権と議会共和党の中枢に近い5人が少数精鋭で交渉を続ける模様です。また、バイデン大統領も随時彼らと連絡・協議を行うとのことです。
バイデン大統領は、サミット参加後のパプアニューギニアとオーストラリアの訪問をキャンセルして、5月21日に帰国する予定です。22-26日の週は交渉が大詰めを迎える可能性があります。
「Xデー」はいつか
デットシーリング(政府債務の法定上限)に絡んだ財務省の「特別措置」が尽きる、いわゆる「Xデー」は早ければ6月1日に到来すると、イエレン財務長官は警告しています。6月1日までにデットシーリングを引き上げるためには、法案作成や採決など議会手続きに必要な時間を考慮すれば5月26日までに合意する必要があるとの指摘があります。土日を挟んで29日のメモリアルデー(戦没者記念日)からの1週間は議会が休会に入るためです(休会中でも法案採決のための緊急招集はありえます)。
「Xデー」に関して、イエレン財務長官が数日内に最新の予測を発表する予定です。財務省が6月中旬まで持ちこたえれば、法人税収によって「Xデー」がさらに後ろズレする可能性はあります。ただし、財務省のキャッシュ(保有現金)は当初の想定以上のペースで減少しているとの指摘もあります。6月1日には、社会保障の給付や連邦職員の給与などの支払いが発生します。
交渉内容は不透明
バイデン政権と議会指導部との交渉はどの程度進展しており、落としどころはどこなのか。交渉の内容はあまり伝えられていません。バイデン大統領は、共和党が求める健康保険受給資格の厳格化は拒否する姿勢ですが、他の支出抑制策を容認する可能性はありそうです。一方、共和党は、単独でデットシーリングを引き上げる法案には否定的です。また、政権が提案する徴税強化などの増収策は拒否する姿勢のようです。
デフォルト回避までは紆余曲折も⁉
5月18日の米国市場では、デフォルト懸念が後退して、それまで軟調だった株価は2日連騰となり、長期金利(10年物国債利回り)も上昇。米ドル/円は年初来高値を更新しました。ただ、デフォルト回避が確定するまでには、まだまだ紆余曲折があるかもしれません。