「通して」と「通じて」は似た言葉ですが、微妙なニュアンスの違いがあります。
本記事では「通して」「通じて」のそれぞれの意味や使い方、使い分けのポイント、類語に英語まで、豊富な例文とともにわかりやすく紹介します。
「通して」「通じて」のそれぞれの意味とは
「通して(とおして)」と「通じて(つうじて)」は非常に似た言葉です。どちらも大きく言うと、媒介や手段とすることや、全体、全期間にわたって、という意味を持っています。
「通して」と「通じて」のそれぞれの意味を、詳しく見ていきましょう。
「通して(とおして)」の意味
「通して」は動詞「通す」の連用形「通し」に、接続助詞である「て」を合わせた語です。
「通して(通す)」の意味には複数ありますが、主に下記のようなものがあります。
- 一方からもう一方へ突き抜けさせる
- 人や物を隔てて何かをする、媒介・手段とする
- 全期間、または全体にわたって何かを行うこと
1は「針に糸を通して(通す)」などの例を思い浮かべるとわかりやすいでしょう。
2は「窓ガラスを通して外の様子をうかがった」「私とAさんは、Bさんを通して知り合った」といった具合です。
3は「その日は一日を通して働き詰めだった」といったケースが当てはまります。
「通じて(つうじて)」の意味
一方「通じて」は動詞「通ずる」の連用形「通じ」に、接続助詞である「て」を合わせた語です。
「通じて(通ずる)」の意味にも複数ありますが、主に下記のようなものがあります。
- 道筋がつながる、到達する
- 広く行き渡る、通用する
- 人や物を媒介・手段とする
- 全体を包括する
1は「この道は国道へ通じている」などの例を思い浮かべるとわかりやすいでしょう。
2は「仲間内では、◯◯の名で通じている」といったケースが当てはまります。
3は「私とAさんは、SNSを通じて知り合った」といった具合です。
4は「◯◯は、一年を通じて暑い国です」「◯◯が全国を通じて流行している」などを思い浮かべるといいでしょう。
「通して」と「通じて」の違い・使い分けのポイントとは
「通して」と「通じて」は、非常に似た意味を持つ言葉であり、どちらに置き換えても使用できることが多いです。
あえて違いを述べるとすれば、下記のような違いがあるといわれています。
積極性
「通して」は、より積極的な媒介・手段に対して使用され、「通じて」は比較的、積極性が弱いニュアンスがあります。
例えばある二人が、共通の友人の紹介で知り合ったことを説明する際には、「私とAさんは、Bさんを通して知り合った」のように、「通して」がよく使われます。この場合、積極的に友人の紹介を受けたというニュアンスです。
一方、SNSを使ううちに、いつの間にか知り合いになったことを説明する際には、「私とAさんは、SNSを通じて知り合った」のように、「通じて」を使用することが多いです。こちらは、知り合いになるために積極的に動いたわけではないが、SNSを媒介として結果的に知り合ったというニュアンスです。
より書き言葉的か
「通して」も「通じて」もどちらも書き言葉として使われますが、特に報道や報告書などの硬い文章では、「通じて」の方が好まれているようです。
カッチリした印象を出したいときには、「通して」より「通じて」を使うといいでしょう。
「通して」「通じて」の使い方と例文
ここまで述べたように、「通して」と「通じて」はどちらも媒介や手段とすることや、全体、全期間にわたって、という意味を持っています。
どちらを使用しても意味が通じることが多いですが、「通して」の方がより積極的、「通じて」の方がより硬い表現というニュアンスがあります。
例文を紹介するので、使い方のイメージをさらにふくらませていきましょう。
「通して」を使った例文
まずは「通して」の例文を紹介します。
- SNSを通して、農作業の実態を広く発信していきたい。
- 私は異文化交流を通して、日本の文化を学んだ。
- 私たちは、夜を通して語りつくした。
なお、「通して」を媒介や手段とすることや、全体、全期間にわたって、という意味で使用するときに、「通して」自体を敬語にはできません。
そのため敬語で話したい場合は、前後の言葉に敬語を用い、文章全体が丁寧に表現されるようにしましょう。
- ゼミ活動を通して学んだことを、御社で生かしたいと考えております。
この例文では、「考えております」とすることで、文章全体を敬語にしています。
「通じて」を使った例文
次に「通じて」の例文を紹介します。
- 知人を通じて耳にしたことなので、真偽は不明である。
- 彼とは趣味を通じて知り合った。
- 大臣は、大使館ルートを通じて抗議したことを明らかにした。
「通じて」自体にも敬語表現がないため、敬語にしたい場合は、前後の言葉に敬語を用います。
- 私はそれを、テレビのニュースを通じて耳にいたしました。
この例文では、「耳にいたしました」とすることで、文章全体を敬語にしています。
「通して」「通じて」の類語・言い換え表現
「通して」「通じて」の持つ、媒介や手段とすることや、全体、全期間にわたって、という意味の類語を紹介します。
~によって
「~によって」は、物事の原因や手段などを表す言葉です。
以下は例文です。
- 私は、恩師によって紹介された企業に勤めている。
- 彼はそのことを、新聞の報道によって知ったと言っていた。
~を介して
「~を介して(かいして)」は、~を仲立ちとして、~を仲介として、という意味の言葉です。
以下は例文です。
- 彼とは恩師を介して知り合った。
- パンフレットを介してその活動に興味を持った。
総じて
「総じて」は、全部で、全般的な傾向として、といった意味の言葉です。
以下は例文です。
- あの国は、何月でも総じて暑いです。
大抵
「大抵」は、事柄の大部分などを意味する言葉です。
「通して」「通じて」の場合は全体、全期間にわたって、という意味なので、全てではない分、差はあるものの、近い意味で使えるでしょう。
以下は例文です。
- あの国は、一年のうち大抵の日が暑い。
「通して」「通じて」の英語表現
ここでは「通して」と「通じて」の英語表現について、例文を挙げて紹介します。
まず「通して」「通じて」が持つ、媒介や手段とするという意味を表したいときは、「through」を使用して表現することができます。以下が例文です。
- We must beware of fake news through social medias.
(私たちはSNSを通したフェイクニュースに気を付けなければいけない)
次に「通して」「通じて」が持つ、全体、全期間にわたってという意味を表したいときは、「throughout」を使用して表現することができます。以下が例文です。
His name is famous throughout the world.
(彼の名は世界を通じて知れ渡っている)The surf shop is open throughout the summer.
(そのサーフショップは夏を通してずっと営業している)
「通して」と「通じて」の意味や違いを知って使いこなそう
「通して」と「通じて」はどちらも媒介や手段とすることや、全体、全期間にわたって、という意味を持っています。
どちらを使用しても意味が通じることが多いですが、「通して」の方がより積極的、「通じて」の方がより硬い表現というニュアンスがあります。
微妙な違いを知り、状況によってうまく使い分けましょう。