日本で白熱電球が普及し始めてから100年以上が経ちました。その白熱電球も、ここ10年ほどの間にLED電球へと切り替えた家庭が増えています。今後はLED電球が徐々に「LEDフラットランプ」へ置き換わっていきそうです。
LEDフラットランプは、これまでのLED電球とは何が違うのでしょう。パナソニック エレクトリックワークス社(以下、パナソニックEW)の門真本社を訪れ、2月21日に発売した最新モデルを体験してきました。
薄い天井懐でも特別な工事ナシで照明を設置
LEDフラットランプとは、従来の電球よりも高さを抑えた小型のLED照明。GX-53-1口金ソケット(以下、GX-53-1)に対応します。ダウンライト、スポットライト、ブラケット、ペンダントなど、さまざまな照明器具に利用でき、戸建て住宅や集合住宅、ホテルなどで導入が進んでいます。
一般家庭で使われている電球用の口金(くちがね)は、ほとんどがE17とE26の2サイズ。E17が直径17mm、E26が直径26mmです。GX-53-1は2007年の省令改正で認可された比較的新しい規格。E26やE17と違い、ネジのように回してはめ込むのではなく、シーリングライトのように2本のピンをソケットに挿入して少し回すことではめ込みます。
GX-53-1の「53」は、2本のピン幅が53mmであることが由来です。GX-53-1の利点は口金そのものはもちろん、照明も薄く作れること。E17やE26は口金の形状が長細く、構造上どうしても高さが必要になりますが、GX-53-1なら薄くフラットな照明が作れて、天井懐(てんじょうふところ)が狭い場所にも照明を設置しやすいのです。
また、GX-53-1ではない既存のLED一体型器具の場合、交換には電気工事士の資格が必要。工事を依頼すれば費用が発生します。GX-53-1なら、対応ランプの交換は電球と同じくらい簡単で資格も不要なので、一般消費者が自分で交換可能です。
高密度住宅にも対応するため、たとえばマンションの通路やエントランスなど、電気工事士の資格を持たない管理人でも一人ですぐにメンテナンスできます。ホテルの場合は消防法の定めによって、エレベーター前のダウンライトが点かなくなると、ランプを取り替えるまでそのフロア全体が営業を中止しなければなりません。資格いらずで誰でもすぐに交換できるのは、大きなメリットと言えます。
光の色と配光を壁のスイッチで切り替え
GX-53-1口金に対応するLED照明は各社から登場しており、パナソニックは2018年4月にLEDフラットランプの初代モデルを発売しています(当時はパナソニック エコソリューションズ社から発売)。以来、ラインナップを拡大して累計出荷台数は約450万台となっています。
2023年2月21日に発売されたパナソニックのLEDフラットランプは、光色・配光切替タイプ。光色によって、電球色⇔昼白色の「LLD40402CQ1」と、温白色⇔昼白色「LLD40404CQ1」の2種類をラインナップしています。どちらも、配光は拡散⇔集光(ビーム角48°)で、明るさ(クラス)は700⇔500lmです。高さは38mm、直径は70mm。希望小売価格は21,560円。ダウンライトまたはスポットライトとのセット販売もしています。
光色・配光切替にはやや説明が必要でしょう。これは光色と配光を壁のスイッチで切り替えられることを示しています。
通常、照明の壁スイッチは1回押すごととオンとオフですが、この製品はそれに加えて、2回続けて押すことで光色のモードを切り替えられます。続けて押す間隔は30秒ほどが目安で、ある程度間隔を開けると通常のオンオフとなり、光色モードは切り替わらず維持されます。
2製品とも、光を狭く照らす「集光」の色は昼白色。光を広く照らす「拡散」は、LLD40402CQ1が昼白色と電球色の切り替え、LLD40404CQ1が昼白色と温白色の切り替えになります。
昼白色は晴れた昼間の自然な太陽光に近い光色で、調理やメイクに適した明かりです。一方、落ち着いた明るい光色の温白色は、リビングやダイニングでのコミュニケーションに使いやすい明かり。そしてオレンジがかった温かい光色の電球色は、リビングや寝室などリラックスに適した光となっています。
一般的な壁スイッチだけでこれらの光を切り替えられるため、調光線やコントローラーを別途用意しなくて良いのもメリットです。
パソコンの画面がしっかり見えて疲れにくい「パソコンくっきり光」
昼白色は調理やメイクに適した光と書きましたが、パナソニックのLEDフラットランプの昼白色は、通常の昼白色に比べて赤と紫の成分が多めに入っています。白いものがちゃんと白く見え、黒が際立ちコントラストが高くなるよう調整しているため。集光して狭い範囲を照らすことによって、デスクワークや読書がしやすいモードになっているのです。
また、ノートパソコンの画面は色温度が9,500ケルビン程度の場合が多く、青白い光(ブルーライト)が多く出ています。そこに青白い光を当てると黒い文字が見えにくくなってしまいます。赤と紫の成分が多めに入った光は、そのぶん青の成分が少なく、黒い文字を見やすくします。
パナソニックはこの昼白色を「パソコンくっきり光」と呼んでいます。集光とはいえ、適度に光が広がっているので、キーボードなどからの照り返しによってまぶしく感じることもほとんどありません。
今回、明かりの比較を体験したのは、パナソニックEWの門真本社(大阪府)に用意されている試験用の大きなラボ。たとえば、リビングやダイニングでLEDフラットランプを利用した場合、部屋の中や机の上がどのように見えるかをテストできる部屋があります。そこでパソコンくっきり光の威力も実感しました。
ラボには、住宅のリビング、ダイニング、寝室、ロフト、トイレ、洗面所、廊下、階段といった空間が、すべてテスト可能な状態で用意されています。戸建てを使わず、ビルの中にラボとして作っている理由は、外光の影響を避けることや、雨の日でも同一条件でテストするため。
パナソニックのGX-53-1向け照明のラインナップには、「シンクロ調色」という独自の技術を採用している製品もあります。明るさに応じて光の色を自動的に調整する機能です。壁のスイッチにダイヤル式のコントローラーが必要になります。
明かりの光は、白色系で暗いとホラー映画のような気味の悪い雰囲気となり、逆に暖色系で明るいと火の中にいるような暑苦しさを覚えるようになります。シンクロ調色は明るさを変えていくと同時に、人が快適と感じる範囲の色に収まるよう調整します。
なお、パナソニックはGX-53-1用のBluetoothスピーカー「ワイヤレススピーカー(型番:NTN88004W/NTN88004B)」も発売しています。付け外しはLEDフラットランプと同様で、2本のピンで引っかかるようになっています。
スピーカーのオンオフは壁の照明スイッチをそのまま利用。選曲などはペアリングしたスマートフォンから行います。音声はモノラルとステレオが切り替えられ、最大8台まで連動。ユニットは4cmコーン型フルレンジ、実用最大出力は5Wです。
重低音で臨場感を楽しむようなAV観賞用というよりは、スピーカーの置き場所を確保しづらいキッチンの天井や、ホテルやマンションの館内放送用に良さそうです。ホワイトとブラックの2種類があり、希望小売価格は33,400円となっています。
LEDフラットランプは、パナソニックEWの直販サイトなどネット販売が中心。家電量販店やホームセンターでの取り扱いはありません。これは、口金のGX-53-1が新築やリフォームで建築物に採用されるようになってからの時間が関係します。
LEDフラットランプの商品寿命は約10年ですが、パナソニックは5年保証で販売しています。先述のとおり、初代モデルが2018年4月発売のため、最近になってようやく最初に販売した製品の保証期間が過ぎたようなタイミングなので、店頭販売しても成り立つ市場規模に成長していないのです。
今後はGX-53-1を採用した建物が増え、建設時に取り付けたランプの交換ニーズが増えてくれば、店頭でも見かけるようになるかもしれません。自宅でLEDフラットランプを使っている人でも、自分で交換した経験のある人は少ないはず。これからの普及に期待です。