最適な組み合わせのGPUとCPUを選択すれば、ミドルレンジ向けで優れたゲーム体験を引き出せる‥‥米Intelが「Arc Balanced Builds」という新しいグローバルプログラムを開始した。限られた予算の中でPCを組む一般的なPCゲーマーをターゲットに、Intel ArcグラフィックスとIntel Coreプロセッサの最適な組み合わせを提案する。
最も強力なパーツを揃えてPCを組めば、その時の最高のパフォーマンスを引き出せるが、IntelのRyan Shrout氏によると、PCゲーマーの多くは900〜1,500ドルの範囲でPCを構築しようとしている。そこで重要になるのが"バランス"だ。最速のCore i9を使っても、廉価帯のGPUを組み合わせたらGPUがボトルネックになってCPUの性能を引き出せない。2つのコンポーネントが手を取り合ってスケールアップできるシステムを構築することで、それぞれのパーツが実力を発揮できる。そのスイートスポットがどこなのか、Intel Arcラボが大規模な内部テストを実施して、ゲームに最適なCoreプロセッサとArcグラフィックスの組合せを導き出した。
検証は、Core i9-13900K、第12世代および第13世代のCore i5/ Core i7プロセッサ、9種類のGPUを用意し、2つの解像度で50種類以上のゲームを動作させた結果を比較した。テスト回数は15,000回以上、データ量は22GBを超えたという。GPUとCPUの組み合わせによる「ゲーム体験」の違いをグラフにしたのが下の図だ(結果データは「Intel Arc Balanced Builds: Maximum Value, Optimized Performance」から入手可能)。
Arcシリーズの末っ子モデルのArc A380 GPUは、Coreプロセッサのラインナップの低い段階でゲーミング体験の伸びの鈍化が始まっており、Core i7やi9と組み合わせてもプラスをほとんど得られない。Core i3またはi5との組合せが最適である。Arc A750およびA770 GPUは、第12世代および第13世代のCore i5またはi7 CPUでピーク性能に達する。「Unconstrained GPU」は予算や電力の制約のない最も強力なGPUで、テストでは450WのNVIDIA Geforce RTX 4090を使用した。RTX 4090はCore i9でも向上が止まることはなく、上位のCPUと組み合わせるほどゲーミング体験の快適性が増す。
グラフィックスAPIについては、レイヤーが薄くてGPUが近いDirectX 12に比べると、DirectX 11ゲームではCPUの感応度が大きい。だが、それでもArc A750とCore i9-13900Kの組み合わせと、i5-12400Fとの組み合わせでGPUの実効性能の違いは10%以内に収まる。NVIDIAのGeForce RTX 3060(12GB)でもArc A750とほぼ同じ結果になっており、Intel Arcに限らずミドルレンジのGPUにCore i5-12400Fよりも上位のCoreプロセッサを組み合わせても大きな違いは得られない。
まとめると、900〜1,500ドルのミドルレンジのゲーミングPCを考えているなら、ミドルレンジ向けのArc A750 GPUにCore i5以上のCPUパワーを追加してもほとんどスケールしないため、Core i5またはi7との組み合わせがスイートスポットになる。コンテンツ制作やストリーミングなどゲーミング以外のCPU負荷の高いワークロードで使うならハイエンドCPUは有効だが、ゲームでCore i9プロセッサを使うならウルトラハイエンドのGPUを組み合わせないと最高のスケーリング効果は得られない。