第36期竜王戦3組ランキング戦(主催:読売新聞社)は、決勝の郷田真隆九段―三浦弘行九段戦が5月17日(水)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、85手で勝利した三浦九段が3組優勝と決勝トーナメント進出を決めました。

郷田九段の横歩取らせ作戦

振り駒で先手となった三浦九段は相掛かりの序盤戦を志向。後手が7筋の歩を突いたのに反応して飛車先の歩交換に出たのが積極的な作戦で、横歩取りの要領で一歩得に成功しました。対する後手の郷田九段は攻めの銀桂を素早く中央に繰り出すことで歩損の代償を求めます。早々に定跡を離れた中盤戦、両対局者は1手1手慎重に時間を投入します。

手番を握った三浦九段が3筋の桂頭に歩をたたいた局面が本局における分岐点となりました。実戦の郷田九段は先手の主張を通す桂跳ねで自重しましたが、直後の桂ぶつけが三浦九段の味よい対応。桂交換になると飛車銀両取りの狙いが生じるのが大きく、ここで三浦九段が一歩抜け出しました。郷田九段としてはたたきの歩を強く金で取る手も有力でした。

三浦九段が最速の寄せで優勝飾る

形勢容易ならずと見た後手の郷田九段は右桂を素早く活用して勝負を迫ります。この桂を5筋に成り捨てて先手の玉形を乱したのは戦果ですが、優位を自認する三浦九段の対応は冷静でした。飛車取りの金打ちに構わず7筋に桂を打って先述の飛車銀両取りの狙いを実現したのが決め手。飛車を取って敵陣一段目に打ち込めば、後手玉はひとたまりもありません。

終局時刻は21時1分、郷田九段の猛追を振り切って最速の寄せを決めた三浦九段が快勝で3組優勝と決勝トーナメント進出を決めました。一局を振り返ると、3筋に打たれた先手からのクサビの歩が最後まで後手玉の逃げ道をふさぐ寄せの要として働いた格好です。敗れた郷田九段は「指してみたい形だったが思っていたより苦しかった」と語りました。

  • 三浦九段は住み慣れたランキング戦1組への復帰を目指す(計13期在籍)

    三浦九段は住み慣れたランキング戦1組への復帰を目指す(計13期在籍)

水留 啓(将棋情報局)

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