デビュー直後から人気モデルとなり、軽自動車のカテゴリーはもちろん、普通車を含めた自動車全体でも日本一に輝いた大ヒットモデルがホンダの「N-BOX」。街中を走っているクルマを注意深く見れば、その台数の多さには驚かされるはずだ。
軽自動車のカテゴリーでは、その「N-BOX」をダイハツ「ムーヴ」とスズキ「スペーシア」が派生モデルを加えながら追う展開が続いているが、2023年の新年度はどうだったのだろうか?今回も全軽自協(一般社団法人 全国軽自動車協会連合会)が発表した2023年4月の新車販売における人気車種トップ15を紹介する。
2023年4月軽自動車人気車種ランキング
順位 | ブランド通称名 | ブランド名 | 販売台数 |
---|---|---|---|
1 | ホンダ | N-BOX | 14,986 |
2 | ダイハツ | タント | 11,981 |
3 | スズキ | スペーシア | 10,018 |
4 | ダイハツ | ムーヴ | 10,010 |
5 | スズキ | アルト | 5,844 |
6 | ダイハツ | ミラ | 5,540 |
7 | ダイハツ | タフト | 4,992 |
8 | スズキ | ワゴンR | 4,853 |
9 | スズキ | ハスラー | 4,052 |
10 | 日産 | ルークス | 3,646 |
11 | スズキ | ジムニー | 3,267 |
12 | 日産 | サクラ | 2,370 |
13 | ホンダ | N-WGN | 2,247 |
14 | 日産 | デイズ | 2,134 |
15 | ホンダ | N-ONE | 1,377 |
※通称名についてはメーカーごとに同一車名のものを合算して集計(アルト、ワゴンR、ミラ、ムーヴ、eK、ピクシスなど)
※eKにeKクロス EVは合算せず
1位 ホンダ「N-BOX」
スーパーハイトワゴンという人気ジャンルでは2011年12月の登場以来、長年にわたって絶対王者に君臨しているのがホンダの「N-BOX」。現行モデルは2017年12月にモデルチェンジした2代目だが、2022年度は小型・中型乗用車を含めた自動車全体でも日本一売れたクルマだ。
軽自動車では狭い室内空間をどれだけ広くできるかが課題となるが、「N-BOX」では、一般的には後席や荷室下にある燃料タンクを前席フロア下に設置した「センタータンクレイアウト」の採用によって、27インチの自転車や重い荷物もラクに積み込める低床化を実現している。この特許技術は車高の高いボディを低重心化して操縦安定性の向上にも貢献しているが、やはりユーザーから支持される理由はホンダの持つブランド力と、軽自動車の常識を変えたクオリティの高さだろう。
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2位 ダイハツ「タント」
2003年にデビューした「タント」は、実は1,700mmオーバーの車高を持つスーパーハイトワゴンとしては元祖にあたるモデルだ。ライバルとは一線を画す最大の特徴が「ミラクルオープンドア」。これは前席と後席の開にあるピラー(支柱)をドア内部に内蔵することで、巨大な開口部を実現するというアイデアだ。さらにシートの移動量を大きくすることでウォークスルー性能も向上させている。
こういった大きなギミックがある場合、重量の増加や走行安定性に不安が残るが、現行の4代目では親会社であるトヨタ「TNGA」のダイハツ版ともいえる「DNGA」を導入したことで車体性能を大きく向上させた。バリエーションはシャープで迫力のあるグリルを持つ「カスタム」や、SUV風の「ファンクロス」をラインナップしている。
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3位 スズキ「スペーシア」
同じ軽自動車を主業としてきたダイハツとは長年争ってきたスズキのスーパーハイトワゴンが「スペーシア」。ライバルの「タント」が持つ「ミラクルオープンドア」のような大きなカラクリはないが、使いやすいシートアレンジ機構や多彩な収納など、さまざまなアイデアが行き届いている。この辺は軽自動車を知り尽くしたスズキならではだ。
ユーティリティ性能以外の特徴としては、全グレードに「マイルドハイブリッド」が装備している点が挙げられる。これはモーターアシストによって低燃費とパワー、静粛性を実現するものだ。このほか、追従機能付ACC(アダプティブクルーズコントロール)」などの運転支援機能や予防安全技術のほか、事故や故障時などにオペレーターとつながる「スズキコネクト」も装備された。
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4位 ダイハツ「ムーヴ」
「ムーヴ」はスーパーハイト系より控えめの車高とリアに一般的なヒンジ型のドアを持つ軽トールワゴンで、軽規格の乗用自動車として動力性能や居住性、安全装備、価格などのトータルバランスに優れたモデルだ。もともとは1993年に大ヒットしたスズキの「ワゴンR」のライバルとして誕生したため、ダイハツでは1995年からの長い歴史を持つブランドでもある。
スーパーハイト系が主流となった現在は「タント」がダイハツの主力モデルとなったが、「ムーヴ」が善戦しているのはバリエーションモデル「ムーヴ キャンバス」の存在が大きいだろう。後席のドアはスライド化され、レトロポップなデザインは若い女性ユーザーからも人気が高い。2022年のモデルチェンジで「DNGA」とターボを実装し、その勢いは3位の「スペーシア」どころか「タント」にも迫るほどだ。
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5位 スズキ「アルト」
1979年に「47万円」という破格の新車価格で登場し、軽自動車の常識を覆したスズキの小型ハッチバックが「アルト」。以後はワゴンタイプが主流になるまで最前線に立ち、ライバルのダイハツ「ミラ」とはエントリー向けの安価なモデルのほかにもトールタイプや「アルト ワークス」といったハイパワーモデルを展開して競い合った歴史を持っている。
ワゴンタイプがスタンダードとなった現在は、初代のような初心者やセカンドカー向けの小型車に立ち返り、価格も最安では100万円を切るグレードも展開している。また、クラシカルなエクステリアをまとって2002年に登場した「アルト ラパン」も女性ユーザーを中心に根強い人気があり、現在も3代目にモデルチェンジして販売が継続されている。
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今秋にフルモデルチェンジが噂される「N-BOX」。でも、もしもコケたら一大事!?
年度末の3月は「N-BOX」が2位以下に圧倒的な差をつけて首位を獲得したが、2023年度のスタートは2位・3位のダイハツ「タント」とスズキ「スペーシア」が大きく差を詰める結果となった。
ここ数年は王者「N-BOX」を筆頭にスーパーハイトワゴン勢が上位を占めているが、注目してほしいのはセカンドグループ以下で繰り広げられているダイハツとスズキの競争だ。
昔ほど過激ではないが、この二社は激しく競ってきた歴史があり、小型ハッチバックでは「ミラ」VS「アルト」、トールワゴンでは「ムーヴ」VS「ワゴンR」といったように、相手がヒットモデルを出せば必ず競合モデルを繰り出してきた。近年では「タフト」VS「ハスラー」や「ムーヴキャンバス」VS「ワゴンRスマイル」、「スペーシアギア」VS「タントファンクロス」だ。
売れ筋のスーパーハイト系はホンダ「N-BOX」の一人勝ちだが、ほかのNシリーズは苦戦しているため、実は軽自動車全体の総台数で見るとホンダはダイハツやスズキに2倍近い差をつけられている。「N-BOX」は今秋にモデルチェンジが噂されているが、もしもコケたら一大事だ。ホンダとしてはNo.1死守は絶対条件だが、ほかにも「N-BOX」並みに売れるモデルが欲しいのではないのだろうか。