医療機器メーカーのスタートアップCureAppは、毎年5月17日に制定されている「世界高血圧デー」(World Hypertension Day)にあわせて高血圧疾患啓発イベントを都内で開催した。後援は日本高血圧協会。特別ゲストとしてデヴィ夫人、お笑いコンビのFUJIWARAの原西孝幸さん、藤本敏史さんが招かれた。

  • 5月17日の「世界高血圧デー」にあわせ、高血圧疾患啓発イベントが開催された

アプリで患者を治療する

イベントの冒頭、CureApp代表取締役社長の佐竹晃太氏が登壇して同社の事業内容について説明した。CureAppでは、スマートフォンのアプリを使って患者を治療することを目指している。「テクノロジーの力により、すべての人々が安心して、いつでも良質な医療を享受できる社会をつくっていきたい」と佐竹社長。

  • CureApp代表取締役社長の佐竹晃太氏

これまでCureAppでは、慶應義塾大学、自治医科大学などと連携しながら、高血圧、ニコチン依存症、アルコール依存症などに対して有効なアプリの開発を行ってきた。同社のアプリは、学会のガイドラインに沿った治療法などを採用しているのが特徴。一般的なヘルスケアアプリとは違い、エビデンスの確かさを重要視している。

  • CureAppが取り組む事業

「たとえば高血圧の患者に向けたアプリでも、確かに血圧を下げる効果があるものを提供しています。生活習慣だったり精神的な疾患に向けても、医学的なエビデンスに基づいたアルゴリズムを採用したコンテンツをご利用いただけます」(佐竹社長)。

自身も医師として活動する佐竹社長。高血圧の診療においては「できることなら降圧薬を減らしたい」「でも、どうやって生活習慣を直していけば良いのか分からない」と悩む患者も多いとして、次のように続ける。「薬による治療が必要というより、いかに生活習慣を改善していくか、そちらが極めて重要になるケースも多いのが事実です。そこで当社では、治療用のアプリの開発に取り組んでいます」。アプリの開発により費用対効果の高い治療が行えるようになる、国民医療費が45兆円と言われるなかで医療費の適正化にも貢献できる、とアピールした。

高血圧の対策として有効なものは?

続いて、特別ゲストによるトークセッションが行われた。デヴィ夫人は、83歳となった今も健康を維持している。またFUJIWARAの2人は50代に差し掛かり、日々の生活習慣に気を付けるようになったと話す。そんな3人に向けて、日本高血圧協会の樂木宏実氏が高血圧の危険性について解説した。

  • トークセッション中の(左から)FUJIWARAの原西孝幸さん、藤本敏史さん、デヴィ夫人

樂木先生によれば、血圧値が140 / 90mmHg以上だと高血圧と診断されるとのこと。「どちらかだけでも高い人、たとえば150 / 80の人も高血圧です。日本人は高血圧に関連する病気(脳卒中、心筋梗塞、心不全、腎不全など)で年間10万人以上が亡くなっているんです。だから、高血圧=病気ですよ、ということを皆さんにも知って欲しい。そのために制定されたのが、世界高血圧デーです」と説明する。これに藤本さんは「高血圧って我々、ちょっと軽く見ている部分がありますもんね」、デヴィ夫人も「どこか痛いとか、熱が出るとか、症状が出ないのが怖いですよね」と応じる。

  • 日本高血圧協会理事長の樂木宏実先生

樂木先生によれば、日本国内で高血圧患者は約4,300万人いると推定されており、しかも約3,000万人以上がその治療を十分に受けていない状況だという。食生活の欧米化や高齢化に伴い、今後、高血圧患者数はさらに増加すると予想されている。

デヴィ夫人は、日本人の3人に1人が高血圧だという事実に驚き、「遺伝するものなんですか?」と質問。これに樂木先生は「遺伝が半分、環境が半分あると考えてください」と回答する。

  • 自身は低血圧だと話す、デヴィ夫人

では、高血圧の対策として有効なものは? 藤本さんは「感情を無にして生活する」、デヴィ夫人は「規則正しい生活をする」、原西さんは「塩分量を減らすと良いって聞きます」。これに樂木先生は「3人とも正解です。実際のところ、患者さんは薬で解決しようとしますが、元の生活習慣が乱れていると効きが良くない。実際には(薬を飲まず)生活習慣の改善だけで治るケースも多いんです」。

  • 高血圧の対策として有効なもの

なかでも減塩は、高血圧対策の一丁目一番地だと樂木先生。ラーメンが大好きでスープはいつも最後まで飲み干す、という原西さんに対して「ラーメン、うどんの麺には塩分が練り込まれていますし、スープも塩分量が多い。パッケージを見ていただくと、麺とスープ、それぞれの塩分量が書かれていることもあります。ラーメンを味わっていただくのは良いんですが、塩分の量にお気を付けください」とアドバイスを送る。

  • 家庭の味付けが濃いので減塩したい、という原西さんに対して、藤本さんは「家庭の事情があって数年前から毎日、外食やコンビニ弁当になりました」

樂木先生は「是非、5月17日の『世界高血圧デー』を良い機会として、ご自身の血圧を測っていただき、もし高かったら診療所を訪れてください。かかりつけ医を見つける良いきっかけにもしてもらえたら」とした。

生活習慣の改善のひとつ『運動』については「通勤で歩くことも、立派な運動になります。ポイントは、姿勢を正しく、肩には力を入れずに、真っすぐ正面を向いて歩くこと。心持ち大股で、少し速めに、1日20~30分を目安に歩いてみてください」と呼びかけた。

  • 大きく手を振って、少し汗ばむくらい歩くと良いという