リモートワーク+出社というハイブリッドワークなど、多様な働き方が選択できる企業が増えてきた。
各企業が「正解」を求めて模索する中、都心部の大型複合開発や、リゾート地でのホテル&リゾート事業を手掛ける総合不動産ディベロッパーの森トラストがオフィスを移転し、関係者に向けて新オフィスを披露。
オフィスビジョン「DESTINATION OFFICE」を掲げ、社員を引きつけるオフィス=目的地となるオフィス(※destinationは目的地を表す英語)の実現をサポートするという同社の取り組みから、「いま求められるオフィス」のヒントを探してみたい。
オフィスに必要な3要素
以前5フロアに分かれていた執務スペースを1フロアに集約。フロアで分断されていた垣根を無くし、社員同士の交流の促進を図るのが狙いだという。
その結果、来客受付や応対、ミーティング、イベントを行う「Lobby」、同社の社員がいれば入室できる「応接室」、業務を行う「執務室」、社員同士の交流や社内イベントを行う「Lounge」でフロアは主に構成されている。
また、キーワードとして挙げられているのが、リアルで高まる熱量をもたらす「ENERGY」、共創を生む「SYNERGY」、仕事への好影響をもたらす快適さ「COZY」の3要素だ。働く社員がオフィスに求めるものが同要素であり、それらをバランスよく満たすことが必要だと同社は定義する。
もう一つのキーワードが可変性だ。これはオフィス内での使い方に応じて家具や社員間の距離を調整できるレイアウトのこと。
具体的には執務室内に壁を立てず、間仕切りはスライディングウォールを活用。必要に応じて簡単に取り外して空間を広げることができたり、床上に電源コンセントを出さず、モバイルバッテリーを貸し出したりするなど、レイアウト変更する際の柔軟性を担保するようにしてある。
この考え方は働き方改革をオフィスから考える他の企業、例えば、働き方をリサーチするコクヨも「可変性のあるオフィス家具」を展開するなど、同じ考え方だといえるだろう。
文字通り「拠点」となる場所
業務スタイルはABW(Activity Based Working)型で、ひとりで集中して仕事をしたい時、数人でコミュニケーションを取りながらの仕事する時など、自身のその日の仕事内容に合わせて働く場所や机などを選ぶ働き方となる。
同社では「WORK AGILE(ワークアジャイル)」という自社ツールで座席を予約して仕事をする形となり、集中したい時の「フォーカスブース」、オンラインミーティング用の「TELブース」なども用意されていた。なお、同ツールについては、後ほど改めて紹介したい。
容易なレイアウト変更が可能な点は除くと、ABWを導入する他の企業と似ているが、ユニークなのが部署の拠りどころ「BASE(ベース)」という存在。部署単位での窓口・情報発信源として機能する部署専用の座席となる。
フリーアドレスはメリットも多いがデメリットもある。その一つがチームや部署単位でのコミュニケーション不足に陥りやすい点だろう。意識して凝集性を高めないとメンバーの意思統一において阻害する要因になる。
それを解消するのがBASEに求められる役割なのだろう。そして部門の業務内容や、部門長の考え方に応じて座席数を変更するなどしていくそうだ。
なお、移転前のオフィスは固定席の社員、部署単位でのグループアドレスを併用していた社員が混在していたが、今回のABW化による戸惑いは特になく、スムーズに移行できたと担当者は明かす。
同社がオフィス事業を展開し、社員の多様な働き方への理解度が高いこと。また、世の中的にその考えが浸透してきたこともある気がした。
社員の動きを可視化する
もう一つ筆者が注目したのがWORK AGILEだ。座席の予約以外にも、社員の居場所を検索できる把握機能、そして出社率の推移やフロア利用状況まで分析できる。
権限を持つ管理者はそうしたデータを閲覧でき、各ブースや座席の利用レポートを参考にメンバーの働き方を可視化し、今後「オフィスをどのように可変させていくか」の判断材料にするという。
ハイブリッドワークが進む企業では、社員が「そこで働きたい」と思えるオフィスが求められている。今回の取り組みが社員にどう受け止められ、検証されていくのか、注目したい。