「節操がない」とはなんとなくネガティブな言葉だとはわかるものの、明確な意味や使い方を知らないという人も多いでしょう。
本記事では「節操がない」の詳しい意味や、使い方と例文、言い換えや英語表現を紹介します。節操がない人とは具体的にどんな人を指すのか、その特徴もまとめました。
「節操がない」の意味とは
「節操がない(せっそうがない)」の意味とは、節義や自分の信念・主張を守り通さずに、事あるごとに主張をひっくり返してしまったり、あっちこっちの異性とみだりに付き合ったりすることです。
主に否定的な意味で使われる言葉で、「無節操(むせっそう)」とも言います。
「節操がない」の「節操」の意味には、「節義を堅固に守り変えないこと」「自分の信念を守り通すこと」などがあります。「節操を貫く」などの形にすると、「節操がない」とは反対に、節義や、自分の信念・主張を守り通すことを表します。 なお「節義」とは、人としての正しい道を歩むことです。
「節操がない」の由来
「節操がない」の正確な由来は定かではありませんが、それぞれの漢字の意味を知ることで、成り立ちが見えてきます。
まず「節」は、「志を固く守ること」「区切り」「言動にけじめをつけ、はみ出ないこと」などの意味を持ちます。読み方は「セツ」の他にも「ふし」や常用外で「みさお」などがあります。
そして「繰」は「あやつる、思い通りに動かす」の他に「固く守ってぶれない志、誘惑や困難に負けないこと」「貞操」などを意味します。「ソウ」の他には「あやつ(る)」、そしてこちらも「みさお」と読みます。
このように似た意味を持つ「節」「操」を合わせて、「節操がない」は「けじめのある言動ができておらず、志を守っていない」という意味で用いられるようになったと考えられます。
「節操がない」の使い方と例文
「節操がない」は、何に対して使うかによって少しずつニュアンスが異なります。ここからは、「節操がない」という言葉について、具体的な使い方と例文を紹介します。
信念や主張に対して
「節操がない」とは、信念や主張が一貫していない場合に用いられており、自分の考えが無かったりその時々で相手に合わせたりして、意見をコロコロ変える人に対して使われます。
うそをつくつもりはなくても、その場を取り繕おうとする八方美人の人は、「節操がない」と言われてしまうこともあるでしょう。
「あの人の行動には節操がない」「あの人は節操がなく、うそを平気でつく」のような使い方をする場合は、「あの人の行動には一貫性が無い」や「あの人は主張に一貫性がなく、うそを平気でつく」といった意味になります。
異性関係に対して
「節操がない」を異性関係に対して使う場合は、「異性関係にだらしない人」や「恋人がすぐに変わる人」「見る度に違う相手を連れている人」などを指す際に使用します。
恋愛において行動に一貫性がなく、軽率な行動をする様子、誠実でない様子を表しています。
「異性に対して節操のない男だ」「彼女は恋愛においては節操がない」のように使う場合には、「浮気者」「貞操観念が低い人」などを意味します。
統一性の無さや欲深さに対して
あれこれと何にでも手を付けてしまうような様子に対して「たくさんの趣味に手を出して節操がない」のように使用することもあります。
計画性なく手あたり次第に、欲深いといった様子を表し、こちらもどちらかというと否定的なニュアンスです。
「節操がない人」の特徴とは
ここらからは、節操がない人によくある特徴について説明します。「彼は節操がない人だ」などと言われないよう、自分がこのような言動をしていないかチェックしてみましょう。
自分の損得のみで行動する
周囲への配慮、道徳観などを気にせず行動したり、自分に得が無いと判断すればすぐに意見や行動を変えたりする人は、節操がない人といわれます。言動の原理が「自分が最も得をすること」のため、自己中心的とも言い換えられるでしょう。
逆にいえば、冷静に損切り(駄目なものには固執しないこと)ができる性格ともいえるため、ビジネスにおいてはこの性格が良い働きをする場合もあります。しかし、人付き合いにおいては信用を得にくいと考えられます。
恋愛において異性にだらしない
浮気を繰り返したり、交際相手がコロコロと変わったり、異性からの誘いにすぐにのってしまったりする人は、節操がない人といわれることがあります。
異性にだらしないと見られると、周囲の人々と安定した関係が築けず、トラブルに発展することも考えられます。
信念や一貫性がない
節操がない人は、一つのことを徹底的に追求したり、長期的に継続したりすることが苦手です。何事も浅く考えてしまうため、自分自身の意見や信念の確立ができず、周りの意見に振り回されたり、軽率な行動をしたりすることがあります。
また、周囲の意見に合わせてしまうことが多く、自分の意見が一貫していないので、相手に対して不信感を与えることもあるでしょう。
一方このタイプの人は、自分が相手の立場に立って考え、柔軟に対応できる人ともいえる場合があります。自分勝手な主張をしないため、人とのコミュニケーションがスムーズに行えるのです。
「節操がない」の類語・言い換え表現
「節操がない」を他の言葉で置き換えることも可能です。ここでは、類似する意味を持つ言葉をいくつか紹介します。
無節操
無節操は「節操がない」と同じ意味で使われます。節操がないの「ない」を漢字表記にして前に置いた言葉です。
「節操がない」と同じ意味のことを名詞として使いたい場合に「無節操」を使います。例えば、「自分の利益しか考えられない彼は、本当に無節操だ」のように用いることができます。この場合、「本当に節操がない」と意味は変わりません。
いい加減
「いい加減」は、無責任でおおざっぱな態度や考え方を意味します。「節操がない」よりも日頃の会話でよく使われている言葉といえます。
「彼の仕事ぶりはいい加減だ」「いい加減にしてください」などの形で使用します。
「いい加減」には大きく2つの意味があり、上記の意味の他に、程度が適当でちょうどよい様子を表す意味があります。「好い加減」と漢字表記されることもあります。
両者はアクセントに違いがあり、無責任の意味のときは「い『いかげん』」、ちょうどよいの意味のときは「『い』いかげん」と発音します。
八方美人
人の顔色を見て、誰からも悪く思われないように振る舞う人を「八方美人」と呼びます。八方美人の人は、あっちにもこっちにもいい顔をするため、どこかでほころびが生じて最終的には信頼されなくなる可能性があります。
本来の意味は、文字通り「八方のどちらから見ても美人である」となり、誰に対しても抜かりなく振る舞うことです。しかし、本来の意味から転じて、現在では主に否定的な言葉として定着しました。
日和る(ひよる)
「日和る」は本来、「有利な方につこうと、成り行きを伺いながら自分の行動を決める様子」を表します。「自分の考えがない彼は、いつもひよって態度を変えてばかりいる」といった形で使用します。
最近では若者言葉として「怖じ気づく」「ビビる」といった別の意味も広がっています。
「ひよる」とは? 本来の意味や若者言葉での意味、使い方に類語、英語も解説
軽率
「軽率」とは、言動に慎重さを欠く様子や、よく考えずに行動することをいいます。「慎重」と逆の意味を持っています。「軽」は、「かろやか」や「かるい」を意味し、「率」は「ひきいる」や「おおむね」「ありのまま」などの意味です。
一般的には「軽率な行動をしてはいけません」のように、否定的な意味で使われます。
「節操がない」の対義語
「節操がない」とは、自分の信念が無かったり、貞操観念が低かったりすることを指します。ここからは「節操がない」の対義語について紹介します。
意志が強い、意志を貫く
「意志が強い」「意志を貫く」とは、「最後まで一つのことをやり遂げる」「自分の考えを曲げたりしない」「目的を定め、そのために努力する」などの意味を持ちます。
「意志」は「何かを行いたい、実現したい」という考えを表し、「志」は「何かをしようと思う心の動き」や「心が、ある方向を目指すこと」を意味します。
似た言葉で「意思」もありますが、こちらは「何かをやりたい、やり遂げる」といった意味は入っておらず、単純に「思い」「考え」のことを指します。「意思表示する」「意思疎通を図る」と言った形で使われます。
貞操を守る
「貞操」とは、「人として正しい道を守る」や「夫婦や恋人同士が性的純潔を守る」といった意味を持ちます。
「貞操を守る」という形で、主に後者の意味で使われています。
また「貞操」はその他にも「あの人は貞操観念が高い」や「貞操義務に違反した場合、慰謝料を請求します」のように使われます。
「貞操」と似た言葉に「貞節」がありますが、「貞節」は「女性が特定の男性以外に体や心を許さないこと」を意味しており、女性限定で使われる言葉です。
「節操がない」の英語表現
「節操がない」を英語で表現したいときに使える単語を例文と共に紹介します。
- unprincipled(節操のない、不道徳な)
- fickle(変わりやすい、気まぐれな)
【例文】
・I'm dumbfounded at her unprincipled behavior.
(彼女の節操のない行動にはあきれてしまった)
・Taro is very talented but unprincipled.
(太郎は才能はとてもあるが無節操です)
・He is fickle in love.
(彼は恋愛において気まぐれです)
「節操がない」は否定的な意味の言葉なので、慎重に使おう
「節操がない」とは、自分の信念を持たず言動に一貫性がないことや、恋愛面では浮気者、気が多い人などを表します。
一般的に否定の意味で使われるため、他者に対しては慎重に使用するようにしましょう。