日本で商用の電気自動車(商用EV)を販売するHW ELECTROが新たなショールームをオープンする。2021年に小型商用EV「エレモ」(ELEMO)と「エレモK」(ELEMO-K)を導入し、このほど中型バンの「エレモL」を発売したHW ELECTRO。日本でのEV販売は順調? エレモLへの反応は? 新ショールームで同社社長に気になることを聞いてきた。

  • HW ELECTROの「エレモL」

    HW ELECTROがお台場にある「the SOHO」(東京都江東区青海2丁目7-4)1階にオープンする新しいショールーム。通常営業は5月15日からで営業時間は9:00~18:00、土・日・祝日は定休日。以前は南青山にショールームを構えていたが、手狭になったので本社も入居する「the SOHO」に移転したのだという

「EVでキャンプ」が楽しそう?

HW ELECTROは商用EV「エレモ」シリーズの開発、製造、販売を手掛けるファブレスメーカー。日本では2021年4月に輸入小型の商用EVとして初めてナンバーを取得し、2021年7月にエレモ、同年11月にエレモKの販売を開始した。新型車エレモLについてはすでに受注を開始している。

新しいショールームは同社のコーポレートカラーであるブルーをアクセントカラーに採用。店内にはエレモLとエレモKが展示してあった。こちらではエレモの試乗が可能で、事前の予約がなくても車両が空いていればすぐに乗れるとのこと。商談にも対応するという。

  • HW ELECTROの「エレモL」

    HW ELECTROの新ショールーム

新ショールームの内覧会ではHW ELECTRO代表取締役社長の蕭偉城さんと話ができたので、エレモシリーズの日本での反響や今後について聞いてみた。

  • HW ELECTROの「エレモL」

    HW ELECTRO社長の蕭さん

――新ショールームの役割は?

蕭さん:見せたかったのはブランドのVI(ビジュアルアイデンティティ)です。青と白が基調で、清潔感があってエコな感じ。今後は大阪、名古屋にもショールームを展開していく方針です。

――日本の「クルマの電動化」は思ったように進んでいますか?

2021年の参入当時は「日本はEV後進国」という見方もあったのですが、今は「(EV化は)やらなければならない」という認知が広がってきたように感じます。ほかのメーカーも含め、今年が「EV元年」になるのではないでしょうか。流れはすごく早いです。

――商用車の電動化はどうでしょう?

間違いなく加速していきます。商用車ほどEV化するのに向いているクルマはありません。ストップアンドゴーの多い使い方ですし、重い荷物を載せていてもEVならピークパワーが瞬時に出せるので、電動化に適しています。荷主さんが配送業者に「EVにしてほしい」と求めているケースもあります。ただ、コストが下がらなければ普及が進まない分野でもありますので、価格はひとつの課題になります。

――御社の価格設定の感覚は、今のところ「合っている」と思いますか?

EVとしては「合っている」と思いますが、マーケット的には少し高いと思われているかもしれません。

――それは、内燃機関を搭載するクルマと比べられるからですか?

そうです。

――エレモLは既存の車種よりも積載量が大きいですし、航続距離が長いので、使える範囲が広がりそうですね?

ターゲットは「ハイエース」のユーザーさんです。エレモLは長くて大きいクルマに見えるかもしれませんが、幅は1,850mmしかないので日本の道路事情に合っていますし、全長はハイエースのスーパーロングより13mm長いくらいで大して変わりません。日本での需要にマッチすると思い導入を決めました。

――長いハイエースがやっている仕事がエレモLでもできるということですね。なるほど。

あとは、キャンピングカーのベース車両としての需要も重要です。こちらは大きければ大きいほどいいですよね。

――確かに、キャンピングカーのベース車両でEVとなると、選択肢はかなり少なそうです。

ほかには、今のところ全くないのではないでしょうか。

――充電設備の整ったオートキャンプ場に出かけたら便利そうですね。「EVでキャンプ」という打ち出し方はアリかも。

新しい提案になると思います。我々はBtoBがメインだったのですが、これからはBtoCのプロモーションも増えていきます。

  • HW ELECTROの「エレモL」

    「エレモL」は1ナンバー車に該当する中型バン。ボディサイズは全長5,457mm、全幅1,850mm、全高2,045mm。最大積載量は乗車2名を含め1,250kg。一充電走行距離は270km、最高速度は80km/h。当初は左ハンドルのみの販売となる。価格は495万円

  • HW ELECTROの「エレモL」

    ショールームの周辺で「エレモL」を実際に運転してみた感想としては、車幅がそこまで広くないので取り扱いに困ることはなく、左ハンドルだと気になる右前方にも必要以上に気を遣うことはなかった。EVだから車内は静かで、振動も少ないように感じた。電気の加速で発進直後からスーッと速度が上がっていくので、「大きいのにスイスイ走るクルマだな」と感じた次第だ

  • HW ELECTROの「エレモL」
  • HW ELECTROの「エレモL」
  • キャンピングカーのベース車両としても使えそうな「エレモL」。試乗車はHW ELECTROがキャンピングカー仕様に架装した車両で、タイヤもオフロード用をはいていた

  • HW ELECTROの「エレモL」
  • HW ELECTROの「エレモL」
  • HW ELECTROの「エレモL」
  • デジタルメーターなのが意外だった。もちろんいい意味で

――エレモLに対する反響はいかがでしょう?

3月から問い合わせはほぼ毎日ありますし、すでに受注も10台ほど入っています。まだ積極的に売っていませんし、価格も先ごろ公表したばかりなのですが、すでに10台というのは我々にとって大きな数字です。エレモLの日本導入を発表して、アンケートを取ろうと思っていたんですが……。

――先行マーケティング的な意味合いも込めて、手ごたえを見るために発表した側面があるにもかかわらず、前倒しで注文が入ったわけですね。生産のキャパ的はどうなんでしょう? 売れすぎても作れないとか。

そんなことはありません。工場は相当、大きいので。

――エレモやエレモKの実績はどうなんですか?

受注は合わせて600台くらいです。2023年の事業計画としては3,000台ほど販売したいと考えています。エレモLについては7月くらいにローンチイベントを開催しますが、2023年中に500台という目標を立てています。

  • HW ELECTROの「エレモK」

    こちらが「エレモK」

――日本の商用EV市場は今後、どうなっていくでしょうか。特に来年、再来年には日本勢も商用EVを出してくると思いますが。

もっと早くEVが出てほしいですし、インフラも早く整備されてほしいと思っています。スズキさん、ダイハツさん、ホンダさんも商品を出してくると思いますが、我々が市場を独占するということはまずないですし、そのつもりもありません。どのEVを選ぶかはお客様ですし、我々はお客様が欲しいと思うものを提供していくというスタンスです。

――商品が出そろって市場が活性化してくれた方が、むしろ売りやすいですか?

今は最初に「EVかガソリンか」という選択があって、ほとんどの方がガソリン車を選んでいる状況ですが、早く「EVの中で何を選ぶか」という状態になってほしいです。

――日本勢が参入してきても、商品で勝負できますか?

もちろんです。デザインもそうですし、我々は「プラットフォーム」としての便利さ、サービスを提供していくつもりですので、そういうところでも選んでもらえると思っています。

――「プラットフォーム」というのは、クルマの使い方を含めた商売を志向されているということでしょうか?

そうです。車両の販売だけではありません。「Apple Store」を想像していただきたいのですが、車両が携帯、デバイスで、そこにサービスを提供することで収益を上げるというモデルです。物流の改革であったり、IoTによる新たなサービスであったり。

――「エレモを買えば、効率的な物流の構築というところまでサポートできますよ」というのが、御社の強みになるわけですか。

その通りです。

――日本での今後の商品展開は?

秋口に新車を発表する予定です。今のラインアップは「セントロ」というパートナーが作って欧米で売っている車両を日本向けにローカライズしたものなのですが、次の新車は全く新しい、我々のオリジナル車両です。