世界自然保護基金ジャパン(以下WWFジャパン)と東京都恩賜上野動物園は、5月31日の「世界カワウソの日」にあわせ、コツメカワウソのペット利用の問題を多くの人に知ってもらうため、来園者向けイベント「“ウラのカオしおり”で知る、飼育員さんだけが知ってるコツメカワウソのウラのカオ」を、5月25日から5月31日まで、上野動物園で開催する。

  • しおりを剥がす前と後のパネル

「世界カワウソの日」は、カワウソ類の啓発や保全に関する意識を世界中の人々に高めてもらおうと、「International Otter Survival Fund(国際カワウソ保護基金)」により提唱された。毎年5月の最終水曜日とされており、今年は5月31日。

その可愛らしい姿から「ペットにしたい」という声も聞かれるコツメカワウソだが、その生態や習性、そして絶滅や密猟・密輸といったペット利用に伴うリスクについては、よく知られていないのが現状だ。

  • パネルとしおり。しおりのウラ面は異なる全3種類

WWFジャパンと上野動物園は、そうした情報をより多くの人に知ってもらうため、「飼育員さんだけが知ってるコツメカワウソのウラのカオ」を気軽に学べる “ウラのカオしおり”を作製し、このしおりを貼ったパネルを上野動物園内に設置する。来園者はこの“ウラのカオしおり”をパネルから自由にはがして持ち帰ることができる。このしおりをはがすと、コツメカワウソの生態や習性、そしてペット利用に伴うリスクに関する情報がパネルに現れる。期間中は毎日105枚のしおりがパネルに貼られる(※なくなり次第終了)。場所は上野動物園 東園 動物慰霊碑横で、入園料が必要。

「飼育員さんだけが知ってるあのペットのウラのカオ」とは

WWFジャパンが行う野生動物のペット利用の見直しを訴えるキャンペーンで、昨年、井の頭自然文化園、上野動物園、京都市動物園、那須どうぶつ王国の協力のもと、コツメカワウソ、ショウガラゴ、スローロリス、フェネック、コモンマーモセット、スナネコの6種類の動物について、動画「飼育員さんだけが知ってる あのペットのウラのカオ」を公開した。動物園の飼育員が、動物の生態や習性、それに伴うペットとしての飼育の難しさを解説し、野生動物のペット飼育に伴う「5つのリスク」を伝えている。

5つのリスク

絶滅 IUCN のレッドリスト掲載動物 約85,000種の20%が絶滅危機種に指定され、そのうち11%でペット・展示利用が確認されている(2022年6月現在)。 例えばコツメカワウソは過去30年間で、個体数は30%以上も減少。現在IUCNのレッドリストで「危急種」に指定されている。

密猟や密輸 2007~2018年に合計78件、1,161匹の動物が、日本向けの密輸として税関で発見された。例えばスローロリスは、2007年〜2018年の12年間で119頭が日本向けの密輸として税関で発見されている。

感染症 野生動物は様々な「動物由来感染症(人獣共通感染症)」の病原体を保有している可能性がある。

動物福祉 5つの自由(飢えと渇き、不快、痛み・傷害・病気、恐怖や抑圧からの自由、正常な行動を表現する自由)を実現するのは極めて困難である。

外来生物 アライグマやグリーンアノールなど、ペット目的で動物が野外に遺棄され、在来種やその土地固有の生態系に悪影響を与える事例が多発している。