ソニーの「Xperia」シリーズに、ハイエンドの「Xperia 1 V」とミッドレンジ「Xperia 10 V」の2機種が新登場。特に今回、カメラ機能が進化した「Xperia 1 V」を重点的にチェックしてみました。
カメラの進化に注目の「Xperia 1 V」
ハイエンドモデルの「Xperia 1 V」は、5世代目となった「Xperia 1」シリーズで初めて、カメラがピクセルビニングに対応しました。「Xperia 1」シリーズでは、当初センサーとして裏面照射型のExmor R for mobileを採用し、続いて高速性能などを高めたExmor RS for mobileに移行していましたが、今回新たに開発されたExmor T for mobileセンサーを搭載しました。
Exmor T for mobileは、Exmor RSと同じく裏面照射型で積層型という特徴に加えて、新たにこれまで一体化していたフォトダイオードとトランジスタを分離することで、フォトダイオードの容量が向上。トランジスタも拡大したことで低ノイズ化を実現しているといいます。
従来モデルに比べてイメージセンサーサイズも約1.7倍と大型化したことで、トータルで性能向上が図られています。これに連写合成を活用することで、低照度下における耐ノイズ性能とダイナミックレンジが「フルサイズセンサー搭載のデジカメ並み」になったとアピールされています。
新センサーは、特に夜景撮影や暗所でのポートレート、逆効果のような日中のポートレートで威力を発揮するといいます。イメージセンサーは入ってくる光の量を一定量(飽和信号量)までしか受け取れませんが、この飽和信号量が従来比で約3倍になっているそうで、より多くの光を取り込んでノイズの少ない画像が実現できるというメリットもあるそうです。
新たに動画専用の絵作りとして「S-Cinetone for mobile」も搭載。カラーグレーディングなしに人肌の質感をきれいに描写してくれるとしています。
同時にカラープリセットの「Creative Look」も搭載。静止画/動画で選択することで、撮影者の思った通りの雰囲気に仕上げられます。プリセットはST/NT/VV/FL/IN/SHの6種類が用意されています。
従来からのAI機能は継続して搭載されていますが、「Xperia 1 V」では新たに「AI深度推定」を投入。リアルタイムに撮影映像を取り込んでAIが深度情報を推定。被写体の距離を推定して背景と分離し、高精度にAFを合わせられるとしています。従来は、ToFセンサーによって被写体との距離を測定していましたが、本機ではToFセンサーを非搭載。それでもAI推定によって遠い位置の被写体や画面端の被写体にもピントが合いやすくなったそうです。
また、動画のVlog向け機能として、顔ではなくて前の商品にピントを合わせる商品レビュー用設定や、カメラ正面の音を集音する背面の声優先マイクも搭載しました。
なお、Exmor Tセンサーはメインの広角カメラのみに採用され、有効画素数は4,800万画素、ピクセルビニングによって1,200万画素で記録されます。実はセンサーの総画素数は5,200万画素ですが、アスペクト比が4.3:3と少し特殊なため、4:3で切り出して4,800万画素を利用し、それを1,200万画素で記録する形になっています。
メインカメラのセンサーサイズは1/1.35型。レンズはZEISSブランドのT*コーティングを施した24mm F1.9レンズです。超広角は16mm F2.2レンズと1/2.5型1,200万画素Exmor RSセンサー。望遠は85~125mmの光学ズーム搭載レンズで、F値はF2.3-F2.8、センサーは1/3.5型1,200万画素Exmor RSセンサーとなっています。
メインカメラの4,800万画素センサーはピクセルピッチが1.12μmですが、ピクセルビニングによって2.24μmとなり、AFや暗所性能が高められています。
4K HDR 120HzのOLEDディスプレイや10%音圧を向上させたフルステージステレオスピーカー、ピアノの集音にも対応した「Music Pro」アプリ、使い勝手の向上したゲームエンハンサーなど、従来の機能も多くアップデートされています。
SoCはSnapdragon 8 Gen 2でパフォーマンスは十分と予想されます。カメラ動作時の消費電力は約20%減、さらに本体の熱拡散シートの体積を約60%拡大したとのことで、カメラ撮影時の熱による機能低下を抑えられそうです。
注目はやはり新しいセンサーと「Xperia 1」初のピクセルビニングでしょう。これが「Xperia」の画質をどこまで向上させるのか。素直な画質と高速AFなどが特徴の「Xperia 1」シリーズですが、HDRや夜景などのComputational Photographyでは、他社にやや差を付けられていたようにも感じますので、今回の新センサーに加えてピクセルビニングと重ね合わせの連写合成がどのような性能を示すか、実際の製品の登場が楽しみです。