ステランティスジャパンはフィアットのMPV「ドブロ」を日本に導入する。MPVはミニバンのような多人数乗車に適した車種だ。日本ではプジョー「リフター」、シトロエン「ベルランゴ」、ルノー「カングー」などたくさんの欧州製MPVが売っており、選択肢はもう十分なような気もするが、なぜドブロが入ってくるのだろうか。

  • フィアット「ドブロ」

    フィアット「ドブロ」が日本上陸! なぜ?

フィアットにようやく大きなクルマが登場

フィアットの新型車は5人乗りの「ドブロ」と7人乗りの「ドブロ・マキシ」の2タイプ。価格は5人乗りが399万円、7人乗りが429万円だ。パワートレインは1.5Lのディーゼルターボエンジンのみ。輸入車では依然としてディーゼルエンジンが人気(シェア20%超とのこと)であることと、多人数乗車をしても発進時から力強く走れるディーゼルのトルクフルな特性を考慮してパワートレインを決めたそうだ。

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    ボディサイズは5人乗りが全長4,405mm、全幅1,850mm、全高1,800mm、ホイールベース2,785mm、7人乗りが同4,770mm/1,850mm/1,870mm/2,975mm。外観はフィアットらしく丸みがあり、顔つきは親しみやすくフレンドリーな印象だが、ところどころをブラックで引き締めて精悍さを加味している

  • フィアット「ドブロ」

    サイドのエアバンプは実用性とデザインを両立させた装備。ルーフレールは標準装備となる

  • フィアット「ドブロ」
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  • リアゲートはガバっとも開けるし、ガラスハッチだけを開くこともできる

  • フィアット「ドブロ」
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  • インテリアは黒基調でシックな雰囲気

  • フィアット「ドブロ」

    7人乗りの3列目には、それぞれ独立した2座のシートを用意。ステランティスジャパンの説明によれば「エマージェンシー用ではなく、大人の男性でもしっかり座れる」座席になっているとのこと。130㎜のスライドが可能

  • フィアット「ドブロ」
  • フィアット「ドブロ」
  • 車内には収納がたくさん。フロントシートには8カ所も収納スペースがあるとのこと

ドブロは親しみやすさの中にオシャレさも感じるMPVで、昨今のギラギラした日本製ミニバンに辟易している人には魅力的な選択肢になるはず。ただ、とはいえ、ステランティスの日本向けラインアップにはリフターとベルランゴという2台のMPVがすでにある。そこに追加でドブロを導入する理由はなんだろう。

ドブロの発表会でステランティスジャパンのフィアット担当に話を聞いたところ、大きな理由は2つあるらしい。まずは、フィアットのラインアップ拡充のためだ。

フィアットといえば「500」があまりにも有名。小さくてかわいくて個性的な500は日本でも大人気で、現行型はフルモデルチェンジから15年が経過しているにもかかわらず、2022年に日本での販売台数記録を更新するほど売れている。

  • フィアット「ドブロ」

    日本における「500」の販売台数。毎年4,000台以上と堅調に売れており、2022年には最高記録を更新した

ただ、フィアットで大きなクルマを探そうとしても選択肢がなかった。せいぜい「500X」という500のSUVバージョンがあるくらいで、大人数でゆったり乗れるクルマは選べなかったのだ。500でクルマデビューを果たし、フィアットのファンになった人が家族を持ち、そろそろミニバンに乗りたいと思ったとしたら、別のブランドに行くしかなかったというわけだ。ドブロがあればフィアットファンの流出を防げる。

もうひとつの理由は、日本のミニバン市場の堅調さとリフター/ベルランゴの好調ぶりだろう。日本のミニバン市場は自動車市場全体の20%強のシェアで安定的に推移している。そこに導入したリフターとベルランゴは国産ミニバンとの違いが受けたのか好調に売れている様子。ベルランゴはシトロエンのラインアップで最も売れているモデルになっており、2022年は2,000台以上を販売したそうだ。

ベルランゴ/リフターとドブロは兄弟車という関係性なので、性能や装備に大きな違いはない。基本的にはキャラが違うだけなので、好みで選んでも大丈夫なはずだ。値段はベルランゴが422.7万円から、リフターが436.8万円からで、400万円を切っているのはドブロだけ。例えばベルランゴには付いている「パノラミックガラスルーフ」がドブロには付いていなかったりするが、そのぶん安く買えるようにしたようだ。