今回はCALETが観測を開始した2015年10月13日から2022年4月30日までのデータを用いたといい、測定されたヘリウムのエネルギースペクトルは、DAMPE実験とは絶対値も誤差の範囲内で一致していることが確認された。さらに、250TeVまでスペクトル軟化の傾向が続いていることも判明したとする。

  • CALETにより40GeV~250TeVの範囲で測定された宇宙線ヘリウムスペクトル。エネルギーが大きくなるにつれ急激に小さくなる流束のスペクトル構造を詳細に調べるため、縦軸にはエネルギーの2.6乗が積算されている。これまでの観測のうち、磁気スペクトロメータ(AMS-02)と、カロリメータ(CREAM-I、DAMPE)での測定結果が比較のために載せられている。

    CALETにより40GeV~250TeVの範囲で測定された宇宙線ヘリウムスペクトル。エネルギーが大きくなるにつれ急激に小さくなる流束のスペクトル構造を詳細に調べるため、縦軸にはエネルギーの2.6乗が積算されている。これまでの観測のうち、磁気スペクトロメータ(AMS-02)と、カロリメータ(CREAM-I、DAMPE)での測定結果が比較のために載せられている。(出所:早大プレスリリースPDF)

2022年に発表された陽子のデータを用いた、陽子とヘリウムの比の核子あたりのエネルギースペクトルによれば、先行実験から大幅に誤差が縮小され、傾きが大きく変わることなく核子あたり60TeVを超える領域まで続くことが明らかにされた。また、エネルギーの増大と共に陽子に対するヘリウムの割合が増えていることも確かめられたという。標準モデルでは変化しないという予測だったことから、この結果は、高エネルギー領域において陽子とヘリウムには何か異なる加速・伝播機構があることが示唆されているとしている。

  • CALETにより測定された核子あたりのエネルギーが、50GeV~60TeVの範囲での宇宙線陽子とヘリウムフラックスの比。これまでの観測のうち、磁気スペクトロメータ(PAMERA-CALO)と、カロリメータ(REAM-I+III)が比較のために載せられている。

    CALETにより測定された核子あたりのエネルギーが、50GeV~60TeVの範囲での宇宙線陽子とヘリウムフラックスの比。これまでの観測のうち、磁気スペクトロメータ(PAMERA-CALO)と、カロリメータ(REAM-I+III)が比較のために載せられている。(出所:早大プレスリリースPDF)

標準モデルによる超新星残骸における衝撃波加速は、電荷に比例した加速限界が予見されている。超新星残骸で達成可能な最高エネルギーは、陽子で60TeV、ヘリウムで120TeVと見積られている。一方で地上観測実験により、3ペタeV付近でのスペクトル軟化が測定されており、これは超新星残骸での衝撃波加速が限界を迎え、宇宙線組成が電荷に比例して軽原子核からより重原子核へシフトすることによる構造と考えられるという。地上観測実験では粒子の判別が困難なため、超新星残骸モデルの検証には、宇宙でのCALETによる観測が期待されているとする。

またスペクトル硬化については、これまでに陽子、ヘリウム、ホウ素、炭素、酸素で観測されており、標準モデルでは説明が難しいことがわかっている。ただし現時点でCALETでは、酸素よりも重い原子核である鉄やニッケルでの観測はなされておらず、より高いエネルギー領域でスペクトル硬化が起こるのか、検証を進めていく予定とした。

CALETは今後さらにデータを蓄積し、また高エネルギー側での系統誤差を減らすことで、酸素よりも重い重原子核成分の核子あたり10TeV付近でのエネルギー硬化、また核子あたり10TeVを超えるエネルギー領域の陽子・ヘリウムスペクトル軟化を高精度に決定することで、さらなる宇宙線の加速と伝搬機構の検証を目指すとしている。