西武鉄道は11日、今年度は総額251億円の鉄道事業設備投資を実施すると発表した。アフターコロナを見据え、より安全で快適な設備の追求、環境負荷の削減をめざすとともに、出かけたくなる駅・まちづくりや次世代に向けた技術革新を推進し、事業の根本にある職場環境の改善も行う。

  • 西武鉄道の通勤車両40000系。今年度は4編成を増備する

2023年度の新造車両として、通勤車両40000系を4編成(計40両)増備。最新技術のモーターを採用するなど、旧型車両から省エネルギー化・低騒音化を図り、環境負荷を削減する。車内の安全確保・防犯対策で車内防犯カメラを設置するほか、車いす・ベビーカー利用者に便利な「パートナーゾーン」も備え、安全性・快適性向上を実現している。

車内防犯カメラは既存車両でも整備に向けた準備を進めるとのこと。列車運行中の前方・後方映像を記録するドライブレコーダーも、全編成への導入に向け、今年度から設置を進めていく。

車両新造や既存車両の機器更新に加え、省エネルギー化を加速推進すべく、「サステナ車両」の導入も予定。「サステナ車両」はVVVFインバータ制御車両など環境負荷の少ない他社からの譲受車両を指す同社独自の呼称で、現在は導入に向けた準備を進めているという。

  • 所沢駅ホームドア

安全で快適な設備も追求。ホームドアをはじめとしたバリアフリー設備の整備を促進すべく、鉄道駅バリアフリー料金制度を導入し、3月18日から料金の収受を開始した。この制度を活用し、バリアフリー設備の整備を推進する。

ホームドアは1日あたり利用者10万人以上の6駅22番線で整備が完了しており、今後は池袋駅(1番・7番・特急ホーム)、中村橋駅、富士見台駅、練馬高野台駅、石神井公園駅、新桜台駅、東村山駅、新所沢駅の8駅23番線で整備に着手する予定。加えて、花小金井駅と小平駅の2駅6番線への整備も検討する。

  • 列車運行情報提供システム ディスプレイ

  • 車内防犯カメラ

運転見合わせ等の輸送障害発生時、文字情報と路線図による運行情報を提供する列車運行情報提供システムも整備。吾野駅にてスロープ設置とホーム上の内方線付点状ブロック整備を実施する。老朽化したエレベーター・エスカレーターの更新も加速推進する。

より安全な踏切への投資として、高規格な踏切支障検知装置の新設と更新、特殊信号発光機(踏切内の異常を運転士に知らせる信号)とATS(自動列車停止装置)の連動化、踏切異常検知システムの新設を予定している。

  • 豊島園駅の新駅舎

  • 池袋駅ホーム

出かけたくなる駅・まちづくりに関して、6月16日の「スタジオツアー東京」開業に向けた池袋駅と豊島園駅のリニューアルが完了。引き続き沿線自治体やワーナー・ブラザース・スタジオジャパンとともに、豊島園駅周辺エリアの活性化に取り組む。次世代の新宿線に向けたまちづくりも進め、連続立体交差事業を推進。西武新宿駅からつながる新宿サブナードとメトロプロムナードを結ぶ新しい地下通路の整備に向けた準備なども進める。

次世代に向けた技術革新として、無線式列車制御(CBTC)システム実証試験、現行運行管理システムの老朽を機に機器集約を図った新たなシステムの導入、転てつ器の状態を遠隔で監視する転てつ器監視装置の整備推進など実施。スマートな鉄道事業の運営と、自動運転等の技術革新の基盤構築をめざす。

  • 運行管理システムイメージ

従業員が働きやすい・働きがいのある環境を整え、将来を担う人財を確保する観点から、職場環境の改善も実施。現業施設の建替え、宿泊施設の個室化、駅の従業員用休憩室のリニューアル等により、従業員のプライバシー確保や労務環境の改善を図る。