若い世代を中心に、利用者が増加しているNISAやiDeCo。しかし、”生活防衛資金”を貯める前にスタートすると、万が一のときに困ってしまうかもしれません。
この記事では、投資に取り組む前に知っておきたい生活防衛資金について、必要なシーンや一人暮らしの目安金額をご紹介。生活防衛資金を用意するために有効な家計の見直し方法も、あわせて解説します。
投資の前に貯めておくべき”生活防衛資金”とは?
「生活防衛資金」とは、災害や病気、失業といった予期せぬ事態に備えて貯めておく資金のこと。
必要になった場合にすぐに引き出さなければならないため、投資用の口座ではなく、利用しやすい普通預金や現金での保有が推奨されています。
また、投資には元本割れのリスクがあるため、生活防衛資金を貯めずに投資を始めると、自分がこれまで貯めてきた金融資産の大半を失う恐れも。
そのため、近年話題のNISAやiDecoを始めようと考えている方も、まずは生活防衛資金の必要性や目安額を理解し、事前に貯蓄しておくとよいでしょう。
生活防衛資金が必要になるシーンはさまざま
生活防衛資金が必要になるケースの多くは、自分では予測していなかったトラブルや事態に遭遇した時。以下では、生活防衛資金がないと困る3つのシーンと、利用事例を紹介します。
被災時
緊急予備資金の被災時における主な使い道は、自宅や避難所での食費や被服費、日用品費など。また、遠方の親戚や友人宅に仮住まいする場合は、現地への交通費としても利用することになるでしょう。
また大規模災害では避難所の後に仮設住宅が提供されることが多いものの、厳格な入居条件が定められている場合も。
被災後にスムーズに生活を再建するには、収入を得られない間も民間住宅の家賃や光熱費を払えるよう、十分な資金の確保が求められます。
ケガ・病気
ケガや病気における緊急予備資金の主な使い道は、診察費、手術費、薬代など。長期の療養やリハビリが必要なケースでは、さらに出費が増加します。
医療費が高額になった場合、窓口で支払った金額の一部が払い戻される「高額療養費制度」もありますが、手続きの完了までには3カ月以上かかるのが一般的。
払い戻しを受けるまでの間に頻繁に通院しなければならない事例もあるため、事前の備えとして生活防衛資金を貯蓄しておくとよいでしょう。
失業
体調の悪化や会社都合など、さまざまな要因によって生じる解雇や雇止め。緊急予備資金は、失業者の再就職活動にかかる費用や、スキルアップのための学習費として利用できます。
代表的な例として挙げられるのは、面接会場までの交通費や着用するスーツ代、資格試験の受験費用。
また、収入が入らない間も家賃や食費、通信費などを支払う必要があるため、求職関連の費用と当面の生活費をあわせて備えておきましょう。
一人暮らしの目安額は生活費3カ月~1年分
生活防衛資金として推奨されることが多い金額は、生活費の3~6カ月分。
一人暮らしの1ヶ月あたりの平均消費支出額は161,753円のため、必要とされる生活防衛資金の具体的な金額は、約48万~97万円となります。
※参考:総務省,『家計調査報告 家計収支編 2022年(令和4年)平均結果の概要』,p.15
しかし、現在の生活に余裕がある方や、すでにある程度貯蓄がある方は、6カ月~1年分の資金を用意しておくのがおすすめ。
例えば、災害によって失業した場合、生活防衛資金を被災時と失業時それぞれの用途で使わなければならないため、より多くの金額が求められます。
また、一部の銀行のATMやカードシステムが停止したり、暗証番号を忘れて引き出せなくなる事態を考慮すると、生活防衛資金は複数の口座と現金に分散させて保有するのがベター。
投資を始める前に、自分の生活費を計算し、「必要な時にすぐ利用できる」お金として3~6カ月分を確保しておきましょう。
生活防衛資金を準備&金額を抑えるためには「固定費」を見直そう
生活防衛資金の確保が重要な一方で、なにかと出費がかさむ一人暮らしでは、目安金額ほどの金額を貯めるのが難しい場合も。そのような方は、まずは身近な生活費の見直しから始めるとよいかもしれません。
中でも、毎月一定の費用を支払う家賃や通信費、サブスクリプション代などの固定費は、家計を無意識に圧迫することが多い支出項目。これらの出費を削減して生活費を抑えれば、生活防衛資金として備える金額も減少します。
自分で調整しやすい食費や水道光熱費と異なり、変更に手間がかかる出費ではあるものの、一度変えればその節約効果が持続するのが大きなメリット。
防犯や利便性の観点から家賃を削減するのが難しい場合は、使用頻度の低いサブスクリプションを解約したり、通信会社の無料キャンペーンなどを利用するのもおすすめです。
生活防衛資金を備えて、安心安全な投資ライフを!
予期せぬトラブルに見舞われた際、私たちの大きな支えとなる生活防衛資金。
NISAやiDeCoだけでなく、株式投資や国債の購入などに興味がある方も、まずは自分に必要な生活防衛資金の金額や、保管方法の検討から取り組み始めるとよいでしょう。
公的医療保険や雇用保険、災害時の助成金など、多様な補助制度が用意されている日本でも、もしもの時への備えは必要。安心安全な暮らしのためにも、生活防衛資金を確保し、投資をスタートしてみてはいかがでしょうか?