上司と部下が円滑なコミュニケーションを取ることは、良い仕事をする上で非常に重要です。
しかし「上司に相談しにくい」と困っている部下の方や、「部下が相談してくれないので不安」と感じる上司の方も少なくないでしょう。
そこで本記事では、部下と上司の双方の観点から「上司に相談しにくい」ことの原因や解決法、相談しないことで発生する弊害を紹介します。
コミュニケーションの問題を解決し、生産性の高い仕事をしましょう。
「上司に相談しにくい」と思う部下の心理
まずはじめに、部下が「上司に相談しにくい」と思ってしまう主な心理を紹介します。部下の立場の方は、自分に当てはまる部分がないかチェックしてみてください。
責任感や独立心が強い
部下が上司に相談しにくくなる心理の一つとして、部下自身の責任感や独立心が強いことが挙げられます。責任感が強いあまり、自分で何でも解決しなくてはいけないと思い込むことで、相談しにくくなるのです。
責任感や独立心が強いことは悪いことではありません。しかし、相談や報告が遅くなるとトラブルに発展したり、取り返しがつかない結果を生んでしまったりする場合もあるため、適切なタイミングで相談をすることが重要です。
上司の評価を気にし過ぎている
上司の評価を気にする心理が、相談をできなくさせてしまうこともあります。これは、相談をすることで自分の評価を下げてしまうのではないかと、不安を感じるためです。
自分で考えて行動することは大切です。しかし、知識が浅かったり、全く経験したことのない仕事だったりすると、分からないことが出てくるのは当然です。
分からないときは、気負い過ぎずに上司に相談してみましょう。むしろ相談せずに失敗するよりも、相談して確実に仕事をこなした方が評価は上がるはずです。
なお相談する際は何もない状態でただ質問するのではなく、ある程度自分で調べたり考えをまとめたりした上で、考えが間違っていないかを相談するとよりいいでしょう。
時間を取らせて申し訳ないという遠慮
上司に相談できない原因として、「相手に時間を取らせて申し訳ない」という心理が働いている場合もあります。自分の相談に時間を取らせることに、負い目を感じてしまうのです。
上司の時間に遠慮してしまう方は、上司にとっては部下の相談に乗ることも重要な仕事の一部なのだ、と捉えることがおすすめです。また相談せずに失敗したり対応が遅れたりすると、かえって上司の迷惑になることもあります。
上司の主な仕事は部下のマネジメントなのですから、遠慮なく相談してみましょう。
上司が部下から相談されない原因
上司に何かしらの原因があり、部下が相談しにくい状況に陥っている場合もあります。そこでここからは、上司が部下から相談されない主な原因を紹介します。
「部下があまり相談してくれない」と悩んでいる上司の立場の方は、自分が以下の状態に当てはまっていないかを確認して、改善しましょう。
対応が冷たい、「嫌われている」と思わせている
上司の対応が冷たいことが理由で、部下が相談しにくいと感じている場合もあります。周囲の人から話し掛けられた際に、反応が薄い、よそよそしい、無表情、後回しにするなどの対応をしていませんか。
普段から接し方が冷たいと感じられている場合は、部下は「上司へ相談することが怖い」「相談してもどうせ話を聞いてもらえない」と思い、相談しにくくなります。
さらに部下は「自分は上司から嫌われているんだ」と思い、及び腰になっている可能性もあります。
いつも忙しそうにしている
上司がいつも忙しそうにしていると、部下は相談しにくいと感じてしまいます。なぜなら、「忙しいのに相談をして、時間を取らせることが申し訳ない」と思って気を遣ってしまうためです。
上司になると自分の仕事以外にも、部下の面倒を見たり、チームをまとめたりと仕事量が増えて忙しくなるでしょう。しかし、いつも忙しそうに振る舞うよりも、余裕があるように見せる方が、部下は相談しやすいと感じます。
怒りっぽい、いつも機嫌が悪い
普段から怒りっぽいと、部下は「また怒られてしまうのではないか」と不安を抱き、相談しにくくなります。
つい大きな声を上げたり、すぐに怒って言葉がきつくなってしまったりなどの心当たりがある場合は、要注意です。忙しさなどからイライラしてしまうこともありますが、怒りを表に出しすぎることはよくありません。イライラしても感情を抑え、冷静な態度を常に心掛けましょう。
忙しかったりトラブルがあったりしてもいつも冷静な態度で接することで、部下は「頼りになる上司だ」と感じ、相談しやすくなります。
上司に相談しないことで生じるデメリットとは
上司に相談しないこと、また部下から相談されないことで、以下のような弊害が生じてしまいます。
- 仕事が効率良く進まない
- ミスによる失敗、間違いが起きる
- お互いの評価が下がる
- 信頼関係が築けない
特に、仕事が効率良く進まなかったり、ミスによる失敗や間違いが発生しやすくなったりすることは、会社にとっても大きなデメリットになります。
大抵の場合、上司は部下より経験豊富であったり、自分自身に直接的なナレッジがなかったとしても、誰に聞けば解決のヒントが得られるかなどの知見があったりするものです。
部下が業務を進める際に、本来は上司に相談することで業務を効率良くこなすコツを教えてもらえたり、問題をスムーズに解決できたりしますが、相談できる環境でないとそうはいきません。
また失敗やミスが続くと、上司から部下に対する評価が下がったり、相談しにくいことを理由に部下から上司への尊敬がなくなったりする恐れがあります。
このことが原因で信頼関係が築けず、さらに相談しにくい関係性に陥ってしまうという、悪循環が生じてしまうのです。
部下が上司に相談するときのポイント
上司への相談をしやすくするためには、相談の仕方を工夫することや、相談した方が会社や仲間のためになるという考え方が大切です。
ここからは、部下が上司に相談するときのポイントを紹介します。上司に相談しにくいと感じている部下の方は、実践しやすい方法を取り入れてみましょう。
忙しい上司にはアポイントメントを取る
「上司が忙しそうだから相談しにくい」と感じている方は、上司にアポイントメントを取り、相談する時間を設けましょう。忙しいときに相談を持ち掛けても、後回しにされて忘れられてしまったり、話を真剣に聞いてもらえなかったりする可能性があります。
まずは相談したいことがあると伝えて、上司の都合の良い時間を聞き出しましょう。相談する時間を確保することで、上司も相談に乗りやすいでしょう。
相談内容を分かりやすく伝える資料やメモを作る
自分の悩みや考えを分かりやすく伝えるために、簡単な資料を作ることもいいでしょう。この方法は、相談することで上司の時間を取ることを申し訳なく思っている方におすすめです。資料を作っておくことで、忙しい上司でもすぐ理解できるように説明ができます。
資料を作ると自分の考えがまとまり、見れば内容を思い出せるため、上司と話すと緊張したり怖いと思ってしまったりしてうまく話せない、という方にも有効です。
特に経緯や案が複雑な場合や、数値的なものは可視化(図示)する資料があるといいでしょう。
ただし、この資料を作ることに時間を掛ける必要はありません。あくまで簡易的なもので、口頭で説明する際の手助けとなるものと考えてください。ラフに手書きしたものや箇条書きのメモでもいいので、気楽に用意できる程度のものがあれば十分です。
第三者に相談する
どうしても上司に相談しにくい場合は、第三者に相談してみるのも一つの方法です。
例えば、社内の相談窓口を活用してみたり、人事部や同僚などに相談してみたりしましょう。第三者に相談することで、その人からためになるアドバイスがもらえる場合や、自分が悩んでいることを上司に伝えてもらえる可能性があります。
上司が怒りっぽいなど、上司に問題がある場合は、自分から上司本人に「あなたが○○なので相談がしにくいです」と伝えるのは難しいものです。このような場合は特に、第三者に相談することがおすすめです。
「相談しやすい上司」になるための方法
部下の悩みを聞き、部下が能力を発揮できるようにすることは、上司の仕事の一部であり、会社の利益につながります。
部下に相談してもらいたいものの、なかなか相談してもらえない場合は、上司である自分自身に問題があるかもしれないと認識することが大切です。
そこでここからは、相談しやすい上司になるためのポイントを紹介します。相談しない部下が悪いと思うのではなく、相談しやすい環境を作ってあげましょう。
部下が話し掛けやすい雰囲気を作る
まずは、部下が「話し掛けやすい」と思ってくれるような雰囲気を作りましょう。
部下が「上司に相談しにくい」と思う原因は、忙しそうに見える、態度が冷たい、怖いなど、多くの場合は上司の醸し出す雰囲気が理由です。
そのため自身の気持ちにゆとりを持ち、険しい表情をせずなるべく笑顔を心掛けるなど、話しかけやすい雰囲気を作ることを意識しましょう。
普段から、話し掛けられた際の第一声にも気を付けたいものです。「ちょっとよろしいでしょうか」と尋ねられた際に、つい「何!?」「はい!?」「今無理!」などと強めの口調で返したり、不機嫌そうなトーンの声を出したりしていませんか。
「いいですよ~」「大丈夫ですよ」「ちょっとだけ待ってくださいね」など、柔らかい口調を心掛けましょう。
また時間のあるときに、自分の失敗談や正直な思いなどを話して、親近感を得ることも有効です。
部下と真摯に向き合う
普段から、部下と真摯に向き合うことも大切です。部下の話を熱心に聞いたり、気に掛けたりすることで「上司は自分のことを分かってくれる」と思われ、部下から相談されやすくなります。
忙しくて部下とコミュニケーションを取る時間がないという方もいるかもしれませんが、なるべく部下との意思疎通を心掛けて、部下と向き合う機会を設けましょう。
コミュニケーションの機会を増やす
部下とのコミュニケーションの機会を増やすことも大切です。コミュニケーションを重ねることで、徐々に信頼関係を築けるはずです。
コミュニケーションの機会を増やす方法としては、メールやチャット、グループウェアなどの活用、意思疎通のための会議や個人的な面談を定期的に行うなどが挙げられます。日々の挨拶や、声掛けも重要です。
また、ランチミーティングや飲み会など、仕事以外で互いの素顔が見られる場を持つこともいいでしょう。
「上司に相談しづらい」「部下に相談してもらえない」という悩みを解決しよう
「上司に相談しにくい」と思っている部下の方は、問題を解決させ仕事を進めやすくするために、相談することが重要だと考えましょう。
部下の相談に乗ることは、上司の仕事の一部でもあるので、遠慮する必要はありません。
また「部下が相談してきてくれない」と不安に思う上司の方は、自分に原因がないか、状況を改善できる手だてはないか、今一度確認してみましょう。
相談しやすい環境を作り、仕事を円滑に進められるように、「上司に相談しにくい」「部下から相談されにくい」という悩みを、お互いが歩み寄って解決していきましょう。