藤井聡太叡王に菅井竜也八段が挑戦する第8期叡王戦(主催:株式会社不二家)は、第3局が5月6日(土)に愛知県名古屋市の「か茂免」で行われました。対局の結果、163手の熱戦を制した藤井叡王がスコアを2勝1敗として防衛まであと1勝としました。
再びの相穴熊戦
両者1勝1敗のスコアで迎えた本局で、後手となった菅井八段は第2局に続いて三間飛車穴熊の作戦を採用。先手の藤井叡王もこれに居飛車穴熊で応じ、戦型は再び三間飛車対居飛車の相穴熊となりました。囲い合いが続いたのち、藤井叡王は4筋の歩交換で戦いを開始。菅井八段も歩を使ったジャブで応戦して、盤面全体を使った小競り合いが始まりました。
8筋に角を活用した藤井叡王は、手順に銀を繰り出して後手の金との交換を迫ります。この交換は拒否されて先手は角金交換の駒損となりますが、後手玉の近くに銀を成り込んだのは大きな戦果です。形勢は互角で、6筋に垂れた先手の歩がと金になるまでに後手が手を作れるかが焦点となりました。菅井八段の飛車は、自陣を守る守備駒へと役割を変えています。
菅井八段の攻め、藤井叡王の粘り
手番を握った後手の菅井八段はここから猛攻を開始します。香を打って角取りとされた局面で、スパっとこれを切り飛ばして穴熊の銀と刺し違えたのが「終盤は駒の損得より速度」の格言通りの一着。7筋の拠点を生かしてうまく攻めをつないだ菅井八段が形勢をリードして、局面は終盤戦に突入しました。一方の藤井叡王は千日手含みに粘る苦しい時間が続きます。
手数は100手を数え、両者すでに一分将棋に入っています。先手の藤井叡王がじっと角を打ち込んで手を渡した局面で後手の菅井八段は9筋の歩を突いて端に手段を求めましたが、結果的にこの手を境に形勢は混とんとすることになりました。藤井叡王がこれを手抜いて攻め合いに転じたことで局面は一気に複雑化し、勝負の行方は指運勝負に導かれます。
決め手与えず藤井叡王が辛勝
お互いの囲いを削る攻め合いが繰り広げられたのち、優勢を築いたのは藤井叡王の方でした。終局時刻は18時57分、最後は堅さの差を生かして一手勝ちを読み切った藤井叡王が菅井八段の玉を即詰みに討ち取って熱戦に幕が下ろされました。感想戦では両対局者は、ともに先述の端歩突きの局面で形勢を悲観していたことを明かしました。
藤井叡王が防衛して七冠への道を進むか、菅井八段が最終局に持ち込むか。菅井八段の先手番で迎える注目の第4局は5月28日(日)に岩手県宮古市の「浄土ヶ浜パークホテル」で行われます。
水留 啓(将棋情報局)
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