北海道で有名な観光スポットは多数あるが、中でも今年、注目を集めているのが北海道日本ハムファイターズの新本拠地「エスコンフィールドHOKKAIDO」だろう。球場へのアクセスも話題になったが、今回は筆者自身の体験も踏まえ、札幌駅からのアクセスについてレポートしたい。
2022年シーズンに新庄剛志監督が就任して以降、ファイターズはプロ野球ファンだけにとどまらず、幅広い層から注目を集めてきた。例を挙げると、2022年の流行語大賞では、「BIGBOSS」(新庄監督の2022年シーズン登録名)や「きつねダンス」(ファイターズガールが踊る、狐をモチーフにしたダンス)といった、ファイターズに関連するワードがノミネートされている。
そのファイターズが2023年シーズンから本拠地とする球場が、新たに開業させたエスコンフィールドである。この球場を中心に、周辺エリアも含めて「北海道ボールパークFビレッジ」として開発が進む。「世界がまだ見ぬボールパークを」というコンセプトの下で工事が行われ、2023年3月にエスコンフィールドで公式戦が開幕。ファイターズは開幕戦で黒星を喫したが、4月1日の2戦目(対東北楽天ゴールデンイーグルス戦)でサヨナラ勝ちを収めた。
北海道在住の筆者はもちろんファイターズのファンであり、幸運にもエスコンフィールドでの公式戦初勝利の日に現地で観戦できた。
■4/1の快速「エアポート」はすし詰め状態「uシート」通路も開放
現在、エスコンフィールドへの最寄り駅はJR千歳線の北広島駅である。札幌駅から快速「エアポート」に乗れば2駅で着き、所要時間は約15~20分。新千歳空港から札幌駅へ向かう途中にあり、札幌方面の列車から見て進行方向左手にエスコンフィールドが見える。
新千歳空港行の快速「エアポート」が発着する札幌駅5・6番線ホームに上がると、空港に向かう乗客とエスコンフィールドに向かう乗客が同時にホームへ押し寄せ、かなり混雑していた。とくに土日祝日はデーゲームが多いため、6両編成の列車はすぐにすし詰め状態になってしまう。筆者が観戦した日も土曜日のデーゲームだったが、混雑を軽減するため、4号車の指定席「uシート」も通路を開放しているような状態だった。
JR北海道は今年3月のダイヤ改正で、ナイトゲーム開催時の増発と、土休日運休としていた快速「エアポート」や普通列車の一部を毎日運転とするなどの対策を施している。ボールパーク付近への新駅設置も2028年度に予定されているが、JR北海道も球団も現時点では観客誘導を模索している段階であり、決定的な効果を実感するまでにはまだ時間がかかるのではないかと思う。
北広島駅からエスコンフィールドまでは、有料のシャトルバスに乗車する方法もあるが、実際には徒歩で移動する人が多かった。タクシーも利用できなくはないが、とくに試合終了後の配車は困難だろう。
筆者も観戦当日は北広島駅から徒歩で移動した。同駅東口を出て、線路脇の遊歩道を歩く。街灯の柱には松本剛選手や伊藤大海投手など、ファイターズの主力選手をデザインしたフラッグが掲げられている。「BIGBOSS Bridge」と命名された歩道橋を渡ると、エスコンフィールドに到着。駅から球場までは約1.5km。歩いた時間は20分ほどだった。
帰りも徒歩で移動したが、4月の北海道は日が暮れるとかなり寒い。観客を見ていると、足早に駅へ向かう人が多かった。筆者が北広島駅に着いた際、入場規制は行われていなかったが、列車の停止位置を変更し、ホーム内で快速「エアポート」と普通列車の乗客を分散させることで混雑緩和を図っていた。筆者は普通列車に乗車し、札幌駅へ。かなり空いていて安堵したのを覚えている。
■「あの新球場は行ってみたいね」道民の注目度は高い
今回の記事執筆にあたり、試合がない平日にもう一度、エスコンフィールドに行ってみようと考えた。行きは前回と同じく北広島駅から徒歩、帰りはシャトルバスを利用することに。4月下旬の北広島はエゾヤマザクラが満開で、歩いていても気持ち良かった。
エスコンフィールドの大きな魅力のひとつが、試合がない日でも球場に入れることである。球場グルメの一部を食べられるほか、球場内の醸造所で作られたクラフトビールを味わうことも可能。最大規模のグッズショップも営業しており、お土産や応援グッズを購入できる。スタジアムツアーに参加すれば、普段は入れない選手たちのロッカールームやグラウンドなどに入って、球場の魅力を実感できるという。
なお、球場内の支払いはすべてキャッシュレスで、現金は利用できない。事前に「Fビレッジ」の公式アプリをスマートフォンにダウンロードし、設定しておくと便利だろう。
筆者は外野スタンドの席に座って、球場内の店舗で買ったサンドイッチを頬張った。可動式の屋根が開いていて、晴れているのに風が強く、少し寒い。
修学旅行で来たらしい中学生たちが、バックスクリーンを指さして盛り上がっている。中学生たちの視線の先を見ると、「●●中学校の皆さん エスコンフィールドHOKKAIDOへようこそ」と歓迎のメッセージが表示されていた。粋な演出だと感心しつつ、球場が道内から修学旅行で訪れるようなスポットになっていることにも驚いた。
思えば、試合の日以外に球場に入って楽しむという体験も今回が初めてである。これまで北海道の各所で取材してきたが、どの現場でも、「あの新球場は行ってみたいね」という地元の人々の世間話をよく耳にした。それだけ道民の注目度が高く、かつ多くの人にとって魅力的な球場だということなのだろう。
エスコンフィールドからのシャトルバスは北広島駅、新札幌駅、野幌駅へ向かう。今回は北広島駅行に乗車した。電動バスの走行音は非常に静かで、あっという間に北広島駅西口に到着。乗車時間は5分ほどだった。北広島駅行のシャトルバスの料金は大人200円。支払いは現金かVISAカードのタッチ決済のみで、交通系ICカードには対応していない。
実際にエスコンフィールドに行ってみて、野球ファンだけでなく多くの人がワクワクできる場所だと感じた。現時点で、移動面に課題がないわけではない。ただ、シーズンを重ねるうちに、それも徐々に改善されていくのではないかと思える。執筆時点のファイターズはパ・リーグ最下位と苦戦しているが、今後の奮起に期待したい。