レクサスの高級ミニバン「LM」が日本にやってくる。従来型LMは海外のみで売っていたが、先ごろの「上海モーターショー」で世界初公開した新型LMは一転して日本に導入する方針だ。「アルファード」も「ヴェルファイア」もある日本にあえてLMまで入れる理由とは?
日本でも売れる手ごたえがあった?
電気自動車(EV)の出展の多さも話題となった上海モーターショーだが、それ以外で注目を集めた1台といえば高級ミニバンのレクサス「LM」だ。そのスタイルからも想像できるように、新型LMは日本でも大人気となっているトヨタ自動車のミニバン「アルファード/ヴェルファイア」のレクサス版である。
レクサスは2019年4月の上海モーターショーで初代LMを発表し、中国や香港などのアジアを中心に高級ミニバン需要を開拓してきた。新型は2代目モデルとなる。レクサスが満を持して全面刷新した新型LMを、いよいよ日本にも導入するわけだ。
新型コロナウイルス感染症の流行が起こり、外部との接触を抑えることができる移動手段としてクルマが見直されたことは記憶に新しい。ファミリーカーとしてはもちろん、ビジネスシーンで複数人が移動する手段としても、クルマの価値は再評価された。こうした使い方では車内空間の広さが重視される。そこで人気に拍車がかかったのが、高級ミニバンのアルファードとヴェルファイア(2台をまとめて「アルヴェル」と呼ぶこともある)だった。
もともとアルヴェルは、若々しさと押し出し感を強調したヴェルファイアの人気が高かったが、近年はアルファード人気が急上昇し、販売台数は逆転した。以前はアルファードが「トヨペット店」の専売車、ヴェルファイアがトヨタの販売店の中でも販売力の高い「ネッツ店」の専売車だったが、2020年5月にトヨタの全車種全店舗販売が始まったことで、販売台数に変化が出たものとみられる。いずれのトヨタ販売店でもアルヴェルが購入が可能となったことが、ビジネスユーザーと保守的なユーザーを拡大させたのではないだろうか。
アルヴェルの人気が高い理由として、ライバルとなる国産高級ミニバンが不在であることは大きい。高級ミニバンの先駆けであり、かつての宿敵である日産自動車「エルグランド」は、すでにすっかり忘れられた存在となってしまった。今や高級ミニバン=アルファード&ヴェルファイアという図式なのだ。
アジア圏でもアルヴェルの存在感が高まっている。先代モデルの輸出が始まると、海外では広い室内の新たな高級車として認知が拡大。並行輸入という形で未発売の地域に上陸するケースも見られるほど人気が高まった。もちろん、正規であろうと並行輸入であろうと、日本で購入するよりも遥かに高価であるにも関わらずである。
海外専用車のLMには日本でも大きな反響があった。アルファードにLMのパーツを取り付け、見た目をLM化させたカスタム車が多く出現するようになったのだ。高級車にさらなる資金を投入して「レクサス化」する人がいるということは、日本に本物のLMを持ち込んでも成功する可能性が高いのでは? トヨタがそう考えたとしてもおかしくない。
ただ、トヨタが現行型LMの日本導入に踏み切ることはなかった。その理由としては、アルファード/ヴェルファイアのモデルチェンジのタイミングに加え、母国である日本には多くのアルヴェルユーザーが存在するため、より差別化を図ったモデルで勝負したいという思いもあったはずだ。
新型「アルヴェル」との差別化は?
新型LMには2列シート4人乗りのリムジン仕様と3列シート6人/7人乗りの多人数乗車仕様の2タイプがある。日本導入は豪華な4人乗りからだ。これは2023年夏に登場予定の新型アルファード/ヴェルファイアとの差別化を図るためと、初期の供給台数が限定されることが理由だろう。日本導入を豪華仕様からとすることでLMのポジショニングはより明確となるし、新しいアルヴェルとの競合も避けることができる。
何しろ4人乗りのLMは、前席と後席の間にパーテーションがあり、独立した後席には48インチの大画面ワイドモニターや冷蔵庫なども装備できる特別なモデルだ。後席シートも快適性を高めた専用品が備わるという。まさに地上のファーストクラスなのだ。
実は、歴代アルファード/ヴェルファイアには、特装車として4人乗りリムジン仕様「ロイヤルラウンジ」が存在し、極少数が生産されてきた。トヨタにはその知見があるので、LMも、高級車に乗り慣れてきた人でも満足できる内容に仕上がっているはずだ。
新型LMの日本上陸は2023年秋の予定。まだ正式発表前の新型アルヴェルとの激しい争奪戦も予想されるだけに、オーナーにとってLMはより特別な存在となりそうだ。