バイク人気を持続するためには、敷居を低くすることが大切。ということで、今年の「モーターサイクルショー」では価格や維持費が「安」く、車体が「軽」く、でもデザインや走りは「楽」しめる「安・軽・楽」な新型バイクが目立っていた。運転免許取り立ての人にオススメしたい注目モデルを紹介していこう。
ホンダは250ccスクランブラーを発表
二輪車の数が増えたと感じることが多い。筆者の自宅近くを通る東京の環状七号線(環七)もそうで、最近は寒さが和らいだこともあり、目に見えて多くなった。
日本自動車工業会(JAMA)の統計にもバイクブームの兆候は表れている。国内の二輪車出荷台数は2020年の32万8,346台が2022年には36万2,082台まで伸びた。
ただし排気量別で見ると、伸びているのは原付第一種(50cc以下)と小型二輪車(251cc以上)で、間にある原付第二種(51~125cc)と軽二輪車(126~250cc)はほぼ横ばいだ。
二輪車に乗る人であれば知っていると思うが、50cc以下は最高速度が30km/hで、多くの交差点で二段階右折が必要となるなど使いやすいとはいえない。一方で251cc以上は車検が義務付けられるなど、維持費が嵩む。
その点51~125ccは、四輪車を持っている人なら任意保険のファミリーバイク特約で保険をカバーでき(50cc以下も同様)、126~250ccは車検がないのに高速道路に乗れる。加えて251cc以上と比べれば価格は安めで車体は軽い。初めて乗る人にとってはメリットが多いのだ。
せっかく乗る人が増えているからこそ、気軽に付き合える車種を用意してあげたい。今年のモーターサイクルショーには、メーカーのそんな気持ちが表れていた。
代表格はヤマハ発動機だろう。同社のモーターサイクルの3本柱であるスーパースポーツの「YZF-R」、俊敏な走りと独創的なスタイルが特徴の「MT」、スポーツヘリテージの「XSR」の全てで125ccの「YZF-R125」「MT-125」「XSR125」を用意し、「R」については155ccの「YZF-R15」もそろえた。
でもこうした動きはヤマハだけではない。たとえば本田技研工業(ホンダ)は、大ヒットしているクルーザータイプの「レブル」をベースとしたスクランブラースタイルの「CL250/CL500」を送り出した。メインフレームやエンジンをレブルと共用しながら、タンクやシート、マフラー、ホイールなどを変えることで、巧妙に変身させていて感心した。
エンジンは250が単気筒、500は並列2気筒。500は大型自動二輪免許が必要なので、ビギナーにはハードルが高めだ。レブル同様、車検なしでありながら高速道路に乗れて、車両重量は20kg軽い172kgとなる250がビギナー向きだろう。
カワサキモータースジャパンがモーターサイクルショーで初公開した「エリミネーター/エリミネーターSE」はレブルのライバルというべきクルーザー。エンジンは400ccの並列2気筒なので、車検はあるものの普通自動二輪免許で乗れる。
車両重量は176~178kgとレブル250に近い数字であることもうれしいし、シート高は690mmのレブルには及ばないものの、735mmという数字は十分低い。小柄なライダーでも400ccのパワーを安心して体感できそうだ。
プジョーは本格派モーターサイクルを発表
輸入車ではまず、クルマでもおなじみのフランスのプジョーに注目したい。このブランドとしては珍しいスポーツタイプの「PM-01」を日本に導入することになったからだ。
単気筒エンジンの排気量は125ccと300cc。高速道路を使いたいという人は300cc、そうでない人は維持費が安く抑えられて、小型限定普通自動二輪免許で乗れる125ccがいいだろう。
PM-01で目を引くのはやはりデザインだ。エッジを効かせたフォルム、ライオンのかぎ爪をモチーフにした縦3本のLEDランプなど、プジョーらしさにあふれていて、他の国のモーターサイクルとはあきらかに違うという印象だった。
昔から排気量が小さく値段もお手頃な車種を用意してきた輸入ブランドとしては、英国発祥で現在はインドで生産されるロイヤルエンフィールドがある。モーターサイクルショーでは人気の「クラシック350」と同じエンジンを持ち、モダンなデザインを組み合わせた「ハンター350」が初登場した。
ロイヤルエンフィールドは今となっては希少な空冷エンジンにこだわっており、ハンター350も空冷の単気筒エンジンを積む。水冷とはひと味違う独特の響きを味わいながら走りたい人にオススメだ。
Vツインの「ボバー」でも125ccが選べる!
イタリアは本来、多くのブランドがひしめくバイク大国なのだが、残念ながらモーターサイクルショーは欠席が多かった。そんな中、小粒ながらピリリと辛い存在感だったのが、125cc単気筒エンジンを積むFBモンディアル「ピエガ」だった。
近年のFBモンディアルはレトロタッチの車種が多かったが、ピエガは一転してモダンテイスト。造形も色使いもスタイリッシュで、ヘッドランプやステップ周りなど細部まできっちりデザインされていて、さすがイタリア生まれと唸らされる出来だった。
モーターサイクルショーには韓国のブランド「ヒョースン」も姿を見せていた。その中からここで紹介するのは「GV125Sボバー」だ。
「ボバー」とは第二次世界大戦前の米国で、ダートトラックレースに出場するためリアフェンダーを切り落とすなど装備を削ぎ落とし、軽量化した仕様がルーツ。馬の尾を短く切ることを「ボブ」といっていたことに由来していて、髪型のボブと語源は同じだ。
本家といえるハーレーダビッドソンをはじめ大排気量車に多いこのスタイルを、125ccで展開したのは異例であるうえに、エンジンはこのクラスでは唯一のV型2気筒を採用。車体は「GV300Sボバー」と共通なので堂々としている。街乗りメインでボバースタイルを楽しみたい人向けだ。
125ccのバイクは以前から東南アジアやヨーロッパで人気のクラスだったこともあり、個性的なモデルが数多くラインナップされている。なので、サイズは立派で仕立ては上質。何車種か試乗して走りが本格的であることも確認している。
つまり、価格の安さや車体の軽さ、シートの低さはキープしつつ、見た目で引け目を感じることはあまりない。ビギナーだけでなく、ひさびさにモーターサイクルに乗るリターンライダーも注目していいのではないだろうか。