ユーグレナはこのほど、日本睡眠学会認定医であり精神科医の市川メンタルクリニック院長・芦澤裕子氏が解説した「五月病」の予防対策を発表した。

  • ユーグレナが「五月病」の予防策を発表。日本睡眠学会認定医、精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、指導医の芦澤裕子氏監修の「五月病」対策とは?

■五月病チェックリスト

まず、芦澤氏が作成した五月病のチェックリストを紹介。2項目以上チェックがつく人は、環境の変化による精神的ストレスや肉体疲労をためてしまうリスクがあるため、ライフスタイルを工夫してほしいとのこと。

□完璧主義である
□この春、仕事や家庭において大きな人間関係の変化があった
□勤務時間が1日10時間以上の日がほとんどである
□リモートワークであまり日中外出しない
□1日中スマートフォンやPCなどを見ている
□愚痴を言う家族、同僚、パートナーがいない
□寝不足と感じる日が多い
□糖質や脂質に偏った食事など、栄養バランスの悪い食事をすることが多い
□お酒を頻繁に飲んでいる
□軽い運動もする習慣がない

■コミュニケーションにおける予防策

次に、芦澤氏による五月病予防対策を見ていく。同氏は、人とのコミュニケーションにおける対策として特定の人物と会うと動悸がするなど、ストレスの原因が明らかな場合は、その人物から距離を取らせてもらうといった物理的な対処をすすめている。

また、コミュニケーション不足で五月病的な傾向になる人に対しては、周囲の人が「いつでもなんでも聞いて」という姿勢を示したり、複数人での会議開始時に雑談の時間を持ち、話しやすい環境づくりを行ってほしいとしている。

■質のいい睡眠で「五月病リスク」軽減

続いて紹介する予防対策は睡眠。五月病と感じる精神的な無気力さは、何らかの理由で自律神経、脳神経が上手に機能できていないことなど、さまざまな要因が考えられるという。

自律神経・脳神経は身体の組織の一つであり、それらの疲労が回復され、栄養や酸素がいきわたっている状態を作ってあげることが重要で、そこには睡眠の量や質が深く関わっていると説明している。

そこで次からは、良質な睡眠につながる方法を紹介。

  • 睡眠で疲労回復

1. 起床時間を一定にする

睡眠の質を上げるには、起床時間を一定にすること。人間の概日リズム(生体リズム)は約25時間と、1日の24時間より1時間ほど長いという。この差を修正するには起床時刻を一定にするのに加え、朝、光を目の中に入れ、24時間周期にリセットする必要がある。それにより、自律神経や脳神経の正常化するのに有用なホルモン、セロトニンの正常な分泌にも役立つという。

2. 食生活で睡眠の質を向上

睡眠には食生活も重要。神経伝達物質を作る「タンパク質」、セロトニンの合成に必要な「ビタミンB6」、脳神経の正常な働きをサポートする「ビタミンB12」、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の原料「トリプトファン」、ドーパミン作成に必須とされる「鉄」、ストレスを和らげ神経を落ち着かせる「GABA」、体の末端部分の血行量を増やして深部体温を冷やす「グリシン」を意識して摂取していきたいという。

主食には、GABAが豊富な発芽玄米がおすすめ。主菜には、肉や魚をしっかり取り入れ、ビタミンB12を多く含むしじみやあさりなどの貝類、グリシンたっぷりのエビやウニ、トリプトファンが豊富な豆腐や納豆も積極的に摂ってみてほしいとしている。

  • 睡眠の質の向上には食生活も重要

3. お酒・カフェイン&食事量に注意

お酒は睡眠の質を下げ、アルコールの利尿作用で就寝中に目を醒ませてしまうなどデメリットが大きい。入眠しづらくなってしまうカフェインも、摂るならば就寝時間の5時間前までにと説明している。また、夜は脂っぽいものをなるべく摂らないか控えるほか、食事(特に夕食)は腹八分目を心掛け、理想は就寝の3時間前、難しい場合は2時間前には食べ終えてほしいとのこと。

4. 適度な運動で睡眠を改善

適度な運動も睡眠を改善する効果が期待できるそう。運動すると身体に疲労物質が作られ、身体が疲労回復しようとするために入眠しやすくなる。また、運動をすることで全身の血流、ないしは脳の血流もよくなり、思考の処理などが行われやすくなることも。

運動習慣を持つことで、中期的に体力がつくので仕事の集中力・意欲の維持にもつながり、仕事への自信喪失などに起因する5月病リスクも軽減できるかもしれないとしている。運動をする際は、午前中に屋外で15分以上散歩するなど、うっすら汗をかく程度が理想的だという。

5. ぬるめの半身浴で深部体温を下げる

良質な睡眠には「入浴」も効果的だと芦澤氏は話す。身体内部の温度(深部体温)が下がる時に副交感神経が優位になり、入眠しやすくなる。眠るタイミングで深部体温の低下を下げるには、春夏は1時間前までに38度~40度のぬるめの半身浴で20分ほどゆったりつかるのがおすすめとのこと。

6. 就寝前のパソコン・スマホは避ける

ブルーライトには、光の脳への刺激により睡眠相(睡眠リズム)を崩す作用があるほか、眠る前のネットサーフィンも交感神経が優位になり、入眠の際に優位になるべき副交感神経がうまく作用せず、なかなか寝付けなくなってしまうそう。そのため、就寝1時間前からは、パソコンやスマートフォンの液晶画面は見ないように注意が必要だ。

  • 就寝1時間前からパソコンやスマホは見ないようにしよう

■GWの理想的な過ごし方

芦澤氏いわく、せっかくの連休だからといって計画的にみっちり動き回るのは、あまりおすすめしないとのこと。これが逆に精神的な疲労につながったり、充実した休みの後に仕事へ復帰すると、ギャップで精神的な落ち込みが大きくなったりするリスクもあるという。同氏は「気を許せる家族やパートナー、友人たちと、ほどほどに予定を入れて、夜は早めに眠る」、そんな過ごし方がおすすめとしている。