ゴールデンウィーク初日の4月29日、東京・代々木第一体育館で開催された『RIZIN LANDMARK 5』のWメインエベント、朝倉未来(トライフォース赤坂)vs.牛久絢太郎(K-Clann)、平本蓮(剛毅會)vs.斎藤裕(パラエストラ小岩)は、ともに両者譲らぬクロスファイトとなった。
朝倉は約1年5カ月ぶりのMMA(総合格闘技)戦を勝利で飾り、連勝中だった平本は「1-2」のスプリットデシジョンで元王者に敗れた。この結果によりふたりの「因縁の対決」は遠のいたのか? 朝倉は平本の試合を観て何を思った?
■実質はドローファイト
「ダメージでポイントを取っていると思っていた。それで3ラウンド目に勝ちに徹した(積極的に攻めなかった)のが敗因ですね。MMAをやり過ぎてしまった。もっと自分のボクシングを信じて闘えばよかった。
負けたけど負けていない。負けた気がしません。これまでにやってきた練習は間違っていなかった。次の試合に向けて頑張ります」
試合直後、控室で悔しさを爆発させ何度も叫び声をあげた後にインタビュースペースに姿を現した平本は、そう話した。
観衆1万3837人(超満員/主催者発表)。熱狂の中で、開始のゴングが打ち鳴らされた。
昨年11月、名古屋での弥益ドミネーター聡志(team SOS)戦と同様にカラテ構えでリング中央に悠然と立った平本がローキックで先制。だがその後、斎藤に組みつかれ幾度も金網に押しつけられた。それでもグラウンドの展開に持ち込ませない。体幹の強さ、そしてテイクダウンディフェンス練習の成果を存分に発揮、倒されても巧くケージを使って立ち上がりスタンド状態に戻していた。
「本当は(相手がタックルに)入ってくる前に打つつもりでいた。でも実際には、(タックルを)受けて、切って、殴るという形になってしまった。あんなに、のらりくらりな展開になったのは自分のミス」
平本は、敗因をこう分析したが、これは斎藤が導いた展開だったとも言えるだろう。慎重に試合を運びながらも、パンチでの一撃を恐れずに覚悟を持って前に出た。もし斎藤に躊躇いがあったなら、平本の強打の餌食になっていたかもしれない。元王者のキャリアが活き、そして勇気が光った。
相手に与えたダメージでは、平本が僅かに上回り、積極的にタックルを仕掛け試合を主導したのは斎藤。だが互いに、15分間の闘いで相手を圧倒することはできなかった。
「RIZIN MMAルール」に引き分けはない。いずれかが勝者となるマストシステムが採用されている。その上でのスプリットデシジョンだから、実質はドローファイト。観る者に平本のMMAファイターとしての急成長を強く印象付けた一戦でもあった。
■大晦日に「朝倉vs.平本」実現か?
この日のファイナルマッチは、朝倉未来が牛久絢太郎を3-0の判定で下した。
約1年5カ月ぶりの復帰戦を制した朝倉は自身の試合の直前、平本と斎藤の試合をモニターで観ていたようで、大会後にその感想を次のように話している。
「平本は予想していたよりもやるな、と思いました。テイクダウンディフェンスもできていたし(崩されてから)立つのも上手かった。急成長していますね」
そう評価した後に、こうも口にした。
「これからもっと強くなると思いますよ。でも、ここからが長い。(いまの平本は)テイクダウンディフェンスに偏っているから(持ち味の)打撃を上手く出せないでいる。(この辺りを融合させるには)まだ時間がかかるでしょう」
平本との対戦についても朝倉は触れている。
「まぁ、タイミング次第ではやってもいいですけどね。でも一番闘いたいのはクレベル(・コイケ、RIZINフェザー級王者/ボンサイ柔術)なんで。平本と試合をしても俺にはメリットがない。やるんだったら社長(榊原信行RIZIN CEO)とお金(ファイトマネー)の話をします(笑)」
朝倉は勝ち、平本は負けた。
この結果により両者の直接対決が遠のいた観もあるが、実現しないことはないだろう。実力差が有る無しにかかわらずファンが待ち望んでいる対峙だからだ。それをRIZINがマッチメイクしないはずがない。
朝倉は言った。
「年内に、あと1試合やれればいいかなと思っている」と。
おそらくは、大晦日のリングを見据えている。
朝倉にとって興味を抱けるオファーがあれば別だろうが、そうでなければ夏、秋に無理に試合をしなくてもいいとの考えだ。
対して平本は「すぐにでも試合をしたい」と口にしている。
7月、9月にRIZINは首都圏でのイベント開催を予定している。このいずれかに平本は参戦するだろう。相手は今回の敗者同士である牛久になるのか、デビュー戦で苦汁を舐めさせられた萩原京平(SMOKER GYM)とのリベンジマッチになるのか、誰になるかは現段階ではわからない。それでも、ここでインパクトのある勝ち方をすれば、朝倉未来戦を望む声はさらに大きくなろう。
大晦日、さいたまスーパーアリーナのリングで「朝倉未来vs.平本蓮」が実現─。そう私は予想している。
文/近藤隆夫
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