里見香奈女流王位に伊藤沙恵女流四段が挑戦する第34期女流王位戦五番勝負は、第1局が4月26日(水)に兵庫県姫路市の「夢乃井」で行われました。対局の結果、133手で開幕戦を制した伊藤女流四段が自身初となる女流王位奪取に向けて好スタートを切りました。
向かい飛車対銀冠穴熊
振り駒が行われた開幕局、後手となった里見女流王位は角道を止めた向かい飛車に構えます。これを受け、居飛車党の伊藤女流四段は自玉を銀冠囲いに収めました。続いて銀冠穴熊の堅陣への組み換えを見せたところで、飛車を中央に振り直していた里見女流王位は立て続けに歩を突き捨てて反発。5筋に歩を垂らしてと金作りの攻めを用意しました。
先手の銀冠穴熊は右の金銀が離れたままの不安定な形ながら、伊藤女流四段はここからうまい反発を見せました。右桂を跳ね出して飛車をさばいたのがその第一歩で、敵陣への飛車成りを確実なものにして里見女流王位が暴れてくるのを待つ意味合いがあります。直後、5筋に作られたと金による金取りを放置して6筋の桂を外したのが筋に明るい継続手でした。
大駒封じた5五の歩
盤上中央では先手の右銀に支えられた1枚の歩が、振り飛車の大駒のさばきを封じる要として輝いています。穴熊攻略を狙う後手の里見女流王位ですが、持ち駒が角1枚ではうまい手段が見つかりません。やむを得ず3筋に馬を引き成ったのはこの銀をどかしつつ大駒のさばきを狙った巻き直し策ですが、いかんせん遅きに失した感は否めません。
形勢有利に立った先手の伊藤女流四段は、自玉の堅さを背景に強気の攻めに踏み込みます。馬による銀取りにも構わず5筋に桂を打ったのが味よい角金両取りで、結局この桂が後手の金銀2枚を奪う大活躍を見せました。終局時刻は19時13分、里見女流王位の反撃に苦しみながらも着地を決めた伊藤女流四段が奪取に向け幸先よいスタートを切りました。
里見女流王位の反撃が始まるか、伊藤女流四段が連勝を決めるか。注目の第2局は5月16日(火)に北海道札幌市の「京王プラザホテル札幌」で行われます。
水留 啓(将棋情報局)