2040年までに新車販売の100%を電気自動車(EV)および燃料電池自動車(FCEV)にすると宣言しているホンダ。この目標を打ち出したのは2021年4月のことだが、電動化の現状は? ホンダの三部(みべ)敏宏社長と青山真二副社長が出席した記者会見から気になったポイントをチョイスしてお伝えしたい。

  • ホンダ「e:Nシリーズ」

    ホンダが上海モーターショーで世界初公開したEV「e:Nシリーズ」

四輪(クルマ)の電動化は? 日本で発売するEVは?

2030年までにグローバルでEVの年間生産台数を200万台超とする計画。2040年までには新車販売の全てをEVと燃料電池自動車(FCEV)にする。

北米では2024年にゼネラルモーターズ(GM)との共同開発モデル「プロローグ」をホンダから、「ZDX」をアキュラ(Acura、ホンダの高級車ブランド)から発売。2025年にはホンダ独自のEV専用プラットフォームを使った中大型EVを投入する。

中国ではEVの「e:NS2」「e:NP2」を2024年初頭に発売。上海モーターショーで公開したコンセプトモデル「e:N SUV 序」をベースとした量産モデルは2024年中に発売する。これら3車種を含め2027年までに計10車種のEVを投入予定。他地域に先駆け、2035年までにEV販売比率を100%とする。

  • ホンダ「e:NS2」
  • ホンダ「e:NP2」
  • 左が「e:NS2」、右が「e:NP2」

  • ホンダ「e:N SUV 序」

    コンセプトモデル「e:N SUV 序」

日本では軽自動車の商用車「N-VAN」をベースとするEVを2024年前半に発売する。2025年には軽自動車「N-0NE」ベースのEV、2026年にはSUVタイプを含む小型EV2車種を発売予定。

  • ホンダ「N-ONE」

    軽自動車の「N-ONE」

中国勢のEVシフトは相当スゴい。このままだと勝てないのでは?

「上海モーターショーでは中国の地場企業が圧倒的な数のNEV(New Energy Vehicle、新エネルギー車=PHEVやEVのこと)を展示していた。一方の日系各社はホンダを含め、(EVに焦点を当てた発表、展示は行ったが)実際のところハイブリッド車をかなり展示していた。地場企業の数に圧倒された」(青山副社長)

「(今のままのやり方ではかなわないのでは? との問いに)私の認識とずれていない。ホンダの中国サイドからも、コロナ期間中の中国はソフト面も含め相当に進化したと聞いていたが、想定以上に先を行っている。このままでいいわけはない。反撃すべく、中国の自動車会社とは違う攻め口を考えながら、新しい価値を出していきたい。そうしないと負けてしまう。技術的な進化では、中国が間違いなく先を行っている。遅れていることは認めつつ、必ずひっくり返すと思って進める」(三部社長)

EVに不可欠なバッテリー調達はどうする?

当面の間は地域ごとに液体リチウムイオン電池の外部パートナーシップを強化。グローバルでバッテリー必要量を安定的に調達するめどが立ちつつある。

北米ではGMから「アルティウム」バッテリーを調達するとともに、LGエナジーソリューションとバッテリー生産の合弁会社を2023年に設立する。

中国ではCATLとの連携を強化、日本では軽商用EV向けにエンビジョンAESCからバッテリーを調達する。

2020年代後半以降は液体リチウムイオン電池の進化に加え、「半固体電池」「全固体電池」などの次世代電池を開発・投入していく。

GSユアサとの合弁会社では高容量・高出力なEV用液体リチウムイオン電池を開発する。

2024年には全固体電池の実証ラインを立ち上げ、2020年代後半に投入するモデルへの採用を目指す。

半固体電池(リチウム金属二次電池)についてはEV用バッテリー研究開発会社のSESに出資して共同開発を行う。

バッテリーの技術開発、調達、生産は「投資額がものすごく大きい。技術開発が進む中で投資戦略も変わってくるので、いくつかのシナリオを持っている」(三部社長)。

二輪(バイク)の電動化は?

2025年までにグローバルで電動バイク合計10モデル以上を投入。2030年には総販売台数の約15%にあたる年間350万台レベルの電動バイクの販売を目指す。

  • ホンダ「Honda Cub e:」

    中国ではZ世代に向けた電動バイク3車種を2023年1月に発表。写真は「Honda Cub e:」(ホンダ・カブ・イー)

交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」(モバイルパワーパック イー)を搭載した「EM1 e:」(イーエムワン イー)を日本、欧州、インドネシアで2023年中に発売する。市場環境やユーザーの用途、技術進化を踏まえ、交換式バッテリー以外の選択肢も検討していく。