第73期ALSOK杯王将戦(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は、一次予選の山崎隆之八段―池永天志五段戦が4月25日(火)に関西将棋会館で行われました。対局の結果、81手で勝利した山崎八段が二次予選進出まであと1勝としました。

相掛かり中原流

先手となった山崎八段は相掛かりの序盤戦を選択。飛車を自陣四段目に構えたのち素早く右銀を繰り出したのは中原(誠十六世名人)流とも呼ばれる攻撃的な布陣で、早繰り銀の要領で後手陣にプレッシャーをかける狙いがあります。これを受けて後手の池永五段は歩交換後の飛車を五段目に引き、この飛車の横利きで先手の銀出をけん制しました。

池永五段の受けの姿勢を見た山崎八段は方針を転換。飛車先に合わせの歩を放って手順に飛車を3筋に活用しました。形勢は互角ながら、飛車と攻めの右銀、そして2枚の桂の活用が見込める山崎八段がうまく攻勢を取って局面は中盤の盛りを迎えます。この直後、銀交換を果たした山崎八段は後手陣深くに角を打ち込んで本格的な戦いを開始しました。

自陣飛車を貫いた割り打ちの銀

山崎八段の打ち込んだ角は後手の銀打ちによって押さえ込まれますが、これを勢いよく切り飛ばしたのが継続の勝負手。瞬間的に角銀交換の駒損ながら、後手陣を乱して飛車を打ち込むのが本当の狙いでした。一方の池永五段は「駒得のときは丁寧に」の原則通りに自陣飛車の受けを放ちますが、結果的にこの手が山崎八段の攻めに勢いをつけることになりました。

目論見通りに飛車を打ち込んだ山崎八段は、持ち駒の2枚の銀を生かして最後の寄せに出ます。この数手後、後手の飛車と金を同時に狙う割り打ちの銀が決め手となりました。終局時刻は16時16分、池永五段の見損じに乗じて駒得を拡大した山崎八段が勝って一次予選ブロック決勝に進出。次局で二次予選進出をかけて高田明浩四段と対戦します。

水留啓(将棋情報局)

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  • 山崎八段が次局で顔を合わせる高田四段は森信雄七段門下の弟弟子のひとり

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