モトローラ・モビリティ・ジャパンが4月21日に発売したSIMフリースマートフォン「moto g13」をさっそく使ってみました。基本性能からすればエントリーモデルに近いのですが、実は細かく見ていくとワンランク上の機能もあり、用途にハマればおすすめできる機種です。
2万円台だけで3機種も集中的に投入、なにが変わった?
まずはスペックからチェックしていきましょう。同メーカーで価格帯の近い「moto e32s」「moto g32」を含めた3機種で比較表を作ってみました。
moto e32s | moto g13 | moto g32 | |
---|---|---|---|
OS | Android 12 | Android 13 | Android 12 |
SoC | MediaTek Helio G37 | MediaTek Helio G85 | Qualcomm Snapdragon 680 4G |
メモリ | 4GB | 4GB | 4GB |
ストレージ | 64GB | 128GB | 128GB |
ディスプレイ | 6.5インチHD+ 90Hz | 6.5インチHD+ 90Hz | 6.5インチFHD+ 90Hz |
アウトカメラ | 広角1,600万画素+マクロ200万画素+深度200万画素 | 広角5,000万画素+マクロ200万画素+深度200万画素 | 広角5,000万画素+超広角800万画素+マクロ200万画素 |
インカメラ | 800万画素 | 800万画素 | 1,600万画素 |
通信方式 | 4G | 4G | 4G |
SIM | nanoSIM×2 | nanoSIM×2 | nanoSIM×2 |
バッテリー | 5,000mAh | 5,000mAh | 5,000mAh |
急速充電 | 15W | 20W | 30W |
防水/防塵 | IP52 | IP52 | IP52 |
生体認証 | 指紋認証/顔認証 | 指紋認証/顔認証 | 指紋認証/顔認証 |
サイズ | 約164.0×74.9×8.5mm | 約162.7×74.66×8.19mm | 約161.78×73.84×8.49mm |
重量 | 約185g | 約184g | 約184g |
発売時期 | 2022年7月 | 2023年4月 | 2022年9月 |
直販価格 | 21,800円 | 22,800円 | 28,800円 |
本題のmoto g13と上下の機種の違いに注目すると、下位モデルのmoto e32sとの比較では「ストレージが64GBから128GBに倍増」「メインカメラが5,000万画素にアップ」「急速充電が15Wから20Wに高速化」、そして発売時期のズレによるものですが「OSが新しいAndroid 13になった」というあたりがカタログスペック上で目立つ違いです。これだけの差があってお値段は+1,000円ですから、後述の機能の違いを見るまでもなく割安な印象を受けます。
一方、上位モデルのmoto g32と比べると、サブカメラやインカメラも含めた全体的なカメラ性能の違いに加え、画面解像度、急速充電、そしてSoCと各所に差があります。同じ2万円台でもmoto g32は3万円寄りになるので、ここは財布と相談して決めたいところですね。
ちなみに、もう一段上の機種は少し価格帯が離れていて、39,800円の「moto g52j 5G」となります。こちらは防水やおサイフケータイなど、日本市場特有のニーズを汲んだ機能の充実ぶりが魅力の機種です。
2万円台の3機種に話を戻すと、これだけ近い価格帯に多数の機種を投入したら自社端末同士で需要を食い合ってしまうのでは……と要らぬ心配をしてしまいそうですが、それだけ低価格帯の需要が大きいと判断して、細かな需要の違いに応えられる選択肢を充実させているということなのでしょう。
モトローラのスマートフォンラインナップは、高価な方から順に、折りたたみの「razr」、ハイエンド~ミドルハイの「edge」、ミドルレンジの「g」、ローエンドの「e」と区分されています。比較表で挙げた3機種はかなり近いですが、「エントリーモデルのmoto eファミリー」(※日本向けモデルはその中では上位寄り)と「ミドルレンジのmoto gファミリーのなかで一番安い機種」という成り立ちの違いがあるのです。
これが複雑なラインナップを読み解くうえで重要なヒントであり、簡単に言えばmoto g13は基本性能だけをみれば「ほぼmoto eファミリーでは?」というエントリークラスの内容でも、+αの機能に目を向けるとあえてmoto gファミリーに組み入れるだけの違いが見えてきます。
性能はエントリークラス、機能はミドルレンジ並
本機種に搭載されているMediaTek Helio G85というSoCはTSMC 12nmプロセスで製造され、Cortex-A75 2.0GHz×2+Cortex-A55 1.8GHz×6のオクタコアCPUとArm Mali-G52 GPUを内包しています。
日本国内で販売された端末での採用例はあまり多くありませんが、直近ではXiaomiの「Redmi 12C」が記憶に新しいところです。2020年発表のSoCで当時としてはミドルレンジと言って良い性能を持っていましたが、2023年発売の機種に搭載されるSoCとしてはエントリークラスと考えるのが妥当でしょう。
以下2枚のスクリーンショットはmoto g13のベンチマーク結果です。
昨今のミドルレンジスマートフォンで主流となっているSnapdragon 695 5Gあたりと比べれば一段劣りますが、画面解像度が1,600×720(HD+)と低い影響もあってか、日常的な用途でのレスポンスは思いのほか悪くありません。
また、アプリの起動でワンテンポ待たされるなどの性能上どうしても遅さを隠せない部分はあっても、一度コンテンツを読み込み終えてしまえばスクロール操作は意外となめらか。「CPU/GPU性能の高くないSoCにリフレッシュレートの高いディスプレイを搭載しても十分なパフォーマンスを引き出せないのでは?」と疑問に思っていましたが、しっかりと操作のストレス軽減に一役買っていそうです。
機能に注目すると、使ってみて特に良いと感じたのはスピーカー。2万円台前半の機種としては珍しくステレオスピーカーを搭載しており、Dolby Atmosによる最適化まで効きます。
ディスプレイがフルHD非対応という点で「動画視聴におすすめ」とまでは言えないのが歯がゆいところですが、音量・音質ともに低価格帯のスマートフォンの中では秀でています。ラフに扱える安価な機種を選びつつ、作業場などで音楽や動画を流したいなんて方にはマッチするのではないでしょうか。
また、カメラ性能も違いの出るポイントです。インカメラ/マクロカメラ/深度センサーの性能は下位モデルのmoto e32と同等ですが、メインカメラには約5,000万画素 F1.8でPDAFにも対応したイメージセンサーを採用。ピクセルビニングを解除し5,000万画素をフルに使う撮影モードや、インカメラ/アウトカメラを同時に起動して自撮りと旅先の風景をセットで残せる「デュアル撮影」など、処理能力を必要としそうな機能も意欲的に取り込まれています。
CPU性能やメモリ容量など基本性能だけに着目すればエントリーモデルとして価格相応のバランスですが、機能的には3万円以上のミドルレンジでも通用するレベルのものも所々に入っており、付加価値でお得感のある機種でした。