雑草の主な種類

一口に雑草と言っても、日本には数百種類の雑草があり、普段私たちが見かける雑草は全体のごく一部に過ぎません。雑草は、定義的には「畑の価値を下げるもの」や「目的外の場所に生える植物」と考えられており、発生する場所や時期、形態的な特徴などさまざまな観点から分類分けされます。一般的に言われる「一年生雑草」や「多年生雑草」は、雑草の発生サイクルで分けられたものというわけです。

一年生雑草

一年生雑草は、土に落ちた種子から発芽して、花を咲かせ、種子を作り、1年以内に枯れる雑草のことを指します。

一年生雑草は、同じ一年生の中でも夏生一年生雑草と冬生一年生雑草に分けられます。これらは夏雑草・冬雑草とも呼ばれ、前者は春先に発芽して夏に生育が旺盛になり、後者は晩秋に発芽して冬に生育が旺盛になり、春に花を咲かせるものとして区分されます。

多年生雑草

多年生雑草は、一年生雑草と同じように種子から発芽しますが、地上部が枯れても地中の根や地下茎は枯れずに生き残り、翌年また芽を伸ばす雑草です。

種子から発芽するものも多いですが、一度根付くと宿根草となり、根や地下茎から再生して繁殖するものも少なくありません。中には地下茎がどんどん横に広がっていき、あたり一面に広がってしまうという種類もあるので注意が必要です。

主な一年草雑草

ここでは普段からよく目にすることの多い、代表的な一年生雑草をピックアップしました。

・カラスノエンドウ
・ホトケノザ
・メヒシバ
・ツユクサ
・ハコベ
・エノコログサ
・ヒメジョオン

以上7種類の雑草の基本的な情報や特徴について解説します。

カラスノエンドウ

科・属名 マメ科・ソラマメ属
花期 春から初夏(3-6月)
草丈 60-150センチメートル
分布 本州・四国・九州・沖縄

カラスノエンドウは標準和名をヤハズエンドウと言います。日本では本州以南であればどのような場所でもよく見かける雑草で、暖かくなると鮮やかな紫色の花を咲かせます。古代オリエントでは食用として栽培されていたようで、しっかり加熱をすれば豆は食べることができます。根の張りも強くないので、比較的簡単に引き抜くことが出来る雑草です。

ホトケノザ

科・属名 シソ科・オドリコソウ属
花期 春から初夏(3-6月)
草丈 10-30センチメートル
分布 本州・四国・九州・沖縄

葉の見た目が、仏が座る台座に見えることからホトケノザと言います。花期になると薄紫の筒状の花を咲かせます。日本では北海道以南の広い範囲に分布し、田畑や路肩など場所を選びません。春の七草に数えられるホトケノザとは違い、毒性があり食用には向きません。全く異なる種類なので混同しないよう注意が必要です。

メヒシバ

科・属名 イネ科・メヒシバ属
花期 夏から秋(7-11月)
草丈 30-70センチメートル
分布 日本全国

メヒシバは非常に繁殖力の強いイネ科の雑草です。花の代わりに小穂ができ、沢山の種を辺りにばらまきます。メヒシバの種はバラバラのタイミングで発芽するので、何度除草しても同じ場所から生えるといったことがよくあります。メヒシバが繁殖すると、他の植物や雑草の生育を妨害してしまうので、継続的な防除が必要になります。

ツユクサ

科・属名 ツユクサ科・ツユクサ属
花期 初夏から秋(6-9月)
草丈 10-20センチメートル
分布 日本全国

ツユクサは群青色の1-2センチほどの花を咲かせる雑草です。花は午前中に咲き、午後には萎んでしまいます。標高の低い場所であれば、どのような場所でも見かけることができます。日本では万葉集にも詠まれるなど、古来から染料や生薬として人々に利用されていました。またツユクサは食用できる雑草で、お浸しや炒め物として食べることができます。

ハコベ

科・属名 ナデシコ科・ハコベ属
花期 冬から春(2-5月)
草丈 10-20センチメートル
分布 日本全国

コハコベとミドリハコベを総称してハコベと呼びます。ハコベはハコベラとも言い、春の七草に数えられています。近縁種が非常に多く、世界では120種、日本にも18種あり、地域によって分布する種が変わります。地這い性の植物で、地面を這うように成長し、白く小さな花を咲かせ、食用や薬用にも用いられるほか、ニワトリや小鳥などの飼料としても使われています。

エノコログサ

科・属名 イネ科・エノコログサ属
花期 初夏から秋(6-9月)
草丈 30-70センチメートル
分布 日本全国

エノコログサは日当たりのよい畑や荒れ地などに広く分布する雑草です。細長い毛が沢山生えた穂は猫じゃらしとしてよく知られています。穀物の粟の原種であり、ユーラシア大陸原産です。日本には縄文時代に粟作とともに入ってきたと言われています。群生すると他の植物の成長を阻害すると考えられており、耕作地では注意しましょう。

ヒメジョオン

科・属名 キク科・ムカシヨモギ属
花期 春から夏(5-8月)
草丈 50-130センチメートル
分布 日本全国

ヒメジョオンは日当たりのよい草地や道端などに広く分布し、白い小さな花を咲かせます。ハルジオンと非常に良く似ていますが別種です。本種は要注意外来生物や侵略的外来種に指定されているほど繁殖力が強く、1つの株から47,000個もの種子が作られると考えられています。また種子自体も30年以上の発芽能力を持つなど、除草が難しい雑草の代表格とも言えるでしょう。

主な多年生雑草

ここでは普段から目にする機会の多い、代表的な多年生雑草をピックアップしました。

・シロツメクサ
・ハマスゲ
・ドクダミ
・スギナ
・チガヤ
・タンポポ
・ヤブカラシ

以上7種類の雑草の基本的な情報や特徴について解説します。

シロツメクサ

科・属名 マメ科・シャジクソウ属
花期 春から夏(5-8月)
草丈 10-20センチメートル
分布 日本全国

シロツメクサは一般的にはクローバーと呼ばれ、空き地や田畑などによく生える雑草です。小さく白い花がたくさん集まって、1つの花に見えます。葉は卵型で、3枚1組で構成されています。種子のほか茎から根が出て繁茂します。マメ科植物のため根粒菌と共生しており、土壌力向上に使われることもあります。

ハマスゲ

科・属名 カヤツリグサ科・カヤツリグサ属
花期 夏から秋(7-10月)
草丈 15-40センチメートル
分布 関東以西の本州・四国・九州・沖縄

砂浜やグラウンド、畑など日当たりのよい砂地や荒れ地によく生える雑草です。茎の断面は三角形で、3方向に葉を伸ばします。花期になると濃褐色の小さな穂を出します。ハマスゲは種子のほか地下茎からも増えるため繁殖力が非常に強く、中途半端に刈り取ったり耕したりすると、余計に増えてしまうこともあり根絶は困難です。

ドクダミ

科・属名 ドクダミ科・ドクダミ属
花期 春から夏(5-8月)
草丈 20-60センチメートル
分布 日本全国

ドクダミは日当たりが悪く湿った場所を好み、庭や空き地、道端や山などあらゆる場所に分布し、花期になると穂の伸びた白い花を咲かせます。地下茎から分かれて伸びるため、放置しているとあたり一面にドクダミが広がってしまいます。またドクダミは生薬やお茶としても有名で、食あたりや下痢、皮膚病などさまざまな用途に用いられます。

スギナ

科・属名 トクサ科・トクサ属
花期 なし
草丈 30-40センチメートル
分布 日本全国

スギナは日当たりのよい痩せた土地を好み、畑や庭でもよく見かけます。非常に繁殖力が強く、胞子のほか地下茎からも広がっていきます。地下茎は切断されても繁殖する能力を失わないので、安易に耕運してしまうと余計にスギナが広がる原因になってしまいます。また、スギナの胞子体をツクシといい、食材や生薬として使われることもあります。

チガヤ

科・属名 イネ科・チガヤ属
花期 春(5-6月)
草丈 30-80センチメートル
分布 日本全国

チガヤは日当たりのよい草地や田畑、河原や砂丘などさまざまな場所で見られます。葉は細長く、花期になると白い綿毛状の種子が生えた花穂を出します。地下茎が横に伸び細根から葉を出して成長します。そのため地上部を刈り取っても、地下茎が残っていると再度繁殖してしまいます。また地下茎からは、他の植物の繁殖を抑える物質が分泌されるので田畑などでは注意が必要です。

タンポポ

科・属名 キク科・タンポポ属
花期 春(3-5月)
草丈 15センチメートル
分布 日本全国

タンポポは日当たりのよい土地であれば場所を選ばず繁殖します。タンポポには在来種のニホンタンポポと外来種のセイヨウタンポポがあります。ニホンタンポポは春にしか花を咲かせませんが、セイヨウタンポポは一年中花を咲かせます。地上部を刈り取っても根が残っていれば再生できるほど生命力が強く、厄介な雑草です。

ヤブカラシ

科・属名 ブドウ科・ヤブガラシ属
花期 夏(6-8月)
草丈 2-3メートル
分布 日本全国

ヤブカラシはツル植物で、フェンスや壁、樹木などにツルを伝って伸びていきます。ヤブガラシ、ビンボウカズラとも呼ばれます。東日本の本種は実をつけませんが、西日本では光沢のある黒い実をつけます。地上部が枯れても地下茎が残っていると再びツルを伸ばすので、完全な駆除が難しい植物の1つです。

【雑草の対処法①】草むしり

庭や畑を美しく保つには、草むしりは欠かせません。ですが、草むしりは面倒な上、かなりの重労働。春や秋など涼しい季節に行う分にはまだ良いですが、夏に行う草むしりは暑さ対策をしっかりしてもかなり大変です。ここでは、草むしりをするときに必要なもの、あると便利なものなどを紹介します。なるべく効率的に草むしりが出来るよう、事前の準備はしっかり行いましょう。

草むしりに使用するもの

【マストアイテム】
・スコップ
・手袋
・バケツ、ゴミ袋
・ほうき(熊手)
・虫よけスプレー

【あると便利なアイテム】
・ねじり鎌
・除草フォーク
・三角ホー
・草刈り機

スコップ

ガーデンスコップや移植ゴテとも言います。土を掘って雑草を根っこごと引き抜くために使います。また、スコップの縁の部分を使って、細い茎などの地上部をこそぎ落とすように切り取ることもできます。

手袋

草むしりは握力を使うので、グリップ面にゴムがついている物が良いでしょう。軍手でもゴム手袋でも構いませんが、草をつかんで引き抜くという動作をする以上、柔らかい素材のものがおすすめです。

バケツ・ゴミ袋

むしった草を捨てるために使います。捨てる際は各自治体のゴミ出しルールを確認しましょう。

ほうき(熊手)

草むしり後に散らばった雑草を一箇所にまとめるために使います。

虫よけスプレー

茂った雑草には様々な虫が潜んでいます。蚊やアブなどに刺されないためにも、虫よけスプレーは忘れずに。屋外用蚊取り線香なども使うと効果的です。

ねじり鎌

草刈鎌の中でもねじり鎌は必要な力が小さく、簡単に草を刈り取ることができます。柄の長いタイプもあり、立ったまま草刈りができるものもあるので、用途に合わせて使いましょう。

除草フォーク

テコの原理で簡単に雑草を引きぬことが出来る道具です。庭や花壇など狭い範囲の草むしりをするときに便利です。

三角ホー

立ったまま草を削り取ることができる道具です。縁を地面に押し当てて手前に引くような感じで使います。そのため、土が固いところで使うとより便利です。

草刈り機

草刈り機(刈払機)はエンジンやモーターで稼働する草刈り機です。手作業よりも早く簡単に除草をすることが出来ます。エンジンは作動音がうるさいですが、稼働時間や力強さなどに優れます。モーター式は静音性が高いですが、稼働時間などは一歩譲るといった傾向にあります。草刈りをする環境や面積に応じて使い分けましょう。

草刈りのコツ

◯雨上がりに行う
◯根っこからしっかり抜く
◯種ができる前の時期に抜く
◯涼しい時間帯に行う

夏場など、晴れた日が続くと土が乾燥して固くなります。土が固いと引き抜くのが大変なので、雨上がりなどの土が柔らかいときに草むしりを行いましょう。
雑草の中には、根など地下茎が残っていると再生してしまうものもあります。根からしっかり抜くようにしましょう。

種子ができる前に抜かないと、来年も同じ雑草が生えてきてしまうかもしれません。雑草に気づいたら早め早めに抜きましょう。草むしりは大変な作業です。朝や夕方など涼しい時間にやりましょう。

【雑草の対処法】除草剤

範囲が広い場合や、長期間雑草を生やしたくない・徹底的に除草したいという場合は薬剤による除草も有効です。ここでは、除草剤について簡単に解説していきます。

除草剤の種類

除草剤は光合成や成長を阻害することで草を枯らすことができます。液体タイプの茎葉処理型・粒剤タイプの土壌処理型の2種類と、両者の良いところを兼ね備えたハイブリッド型があり、前者は速効性がありますが発生の予防は出来ません。後者は遅効性で長期間雑草の発生を抑制できます。用途によって使い分けることが大切です。

茎葉処理型(液体)

数日で効果が現れ、雑草を枯らすことができます。液体なので散布もしやすく、土に残らないので使いやすい薬剤と言えるでしょう。

土壌処理型(粒剤)

効果が現れるまで時間がかかりますが、薬剤が土壌に残るので長期間雑草を抑制することができます。駐車場や道などに適した薬剤です。

除草剤を使用する際のコツ

◯雑草の状態によって除草剤を使い分ける
◯天気の良い日に行う
◯メーカーが推奨する適切な濃度で使用する

雑草が生えている場所に使う場合は液体、予防に使いたい時は粒剤など状態によって適した薬剤は異なります。事前に除草場所の状態を確認しましょう。また薬剤はよく晴れた日に最も効果を発揮します。天気の良い午前中に散布すると尚良しです。その際は、適切な濃度で使いましょう。ところで、駐車場や空き地など農作物がない場所では非農耕地用の強い薬剤が使えますが、農作物など植物を育てている場所には農耕地用の登録がある薬剤しか使えません。間違えないようにしましょう。

雑草をよく知って、正しく付き合おう

一年生のものや多年生のものなど、生態も種類も異なる様々な植物が「雑草」として扱われています。それぞれの違いや特性などをよく知ることが、雑草管理の第一歩です。

除草作業をするときも、それぞれの目的や環境にあった方法を選んで、より効率的な作業を心がけましょう。除草は1年のうちに何度もあり、一生続く作業です。奇麗に庭や畑を管理することも良いですが、無理のないように続けていくことが何よりも大切です。