今年は、新卒の初任給アップが話題となっています。たとえば、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは、大卒の初任給を従来の月額20万円台から30万円に引き上げました。では、新卒の初任給の相場は、実際どのくらいなのでしょうか。初任給の相場や推移をご紹介します。

  • 2023年は初任給アップの企業が多い、いくら上がっている?

    2023年は初任給アップの企業が多い、いくら上がっている?

■初任給が上がっている! 大手の初任給はいくらアップ?

この春は、「新卒の初任給がアップした」というニュースを耳にした人は多いのではないでしょうか。では、初任給はどのくらいアップしているのでしょうか。今年、初任給を引き上げた大手企業の動向をご紹介します。

<任天堂>
専門性が求められるゲーム業界では、優秀な人材の囲い込みが激化しています。任天堂では、23万3,000円だった大卒初任給を、この4月からは25万6,000円に引き上げました。なお、全社員の基本給も4月から一律10%アップとなります。

<ファーストリテイリング>
ユニクロを展開するファーストリテイリングでは、大卒初任給を25万5,000円から4万5,000円引き上げて30万円にし、入社1~2年目で就く新人店長の月収をこれまでの29万円から39万円にアップします。

<DMG森精機>
大手工作機械メーカーのDMG森精機では、「国際標準の賃金水準」を目指し、大卒初任給を27万2,210円から30万円へ引き上げます。また、大学院博士課程修了の初任給は、36万3,490円から47万5,000円へと11万円あまりもの大幅アップとなります。

<三井住友銀行>
三井住友銀行では、16年ぶりに新卒の初任給を引き上げ、大卒は5万円増の25万5,000円となります。

<NEC>
NECでは、2023年春季交渉で大卒初任給を1万円引き上げることが決まり、初任給は23万7,000円となります。

<TIS>
情報処理サービス会社のTISでは、2023年4月より、大卒初任給を22万3,000円から2万7,000円引き上げて25万円とします。また、基本給を6%上げ、若手層については最大17%アップします。

<伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)>
2023年4月入社より、これまでの大卒初任給23万円を29万5,500円へ引き上げます。

■大卒・院卒の初任給の相場はいくら?

では、大卒・院卒の初任給の相場はいくらくらいなのでしょうか。厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」をもとに確認してみましょう。

・大卒の初任給
男性…約23万5,100円
女性…約23万2,100円
男女計…約23万3,600円

・院卒の初任給
男性…約26万500円
女性…約24万8,500円
男女計…約25万7,100円

なお、過去5年間の初任給(男女計)は以下のようになっています。

  • ※「令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)」「令和2年賃金構造基本統計調査」「令和3年賃金構造基本統計調査」を参考

・令和3年(2021年)
大卒:22万5,400円
院卒:25万3,500円

・令和2年(2020年)
大卒:22万6,000円
院卒:25万5,600円

・令和元年(2019年)
大卒:21万200円
院卒:23万8,900円

・平成30年(2018年)
大卒:20万6,700円
院卒:23万8,700円

・平成29年(2017年)
大卒:20万6,100円
院卒:23万3,400円

※「令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)」「令和2年賃金構造基本統計調査」「令和3年賃金構造基本統計調査」を参考

初任給に関する賃金構造基本統計調査は、2020年以降、初任給に通勤手当を含めるなど調査定義に変更がありました。そのため、単純に比較することはできませんが、初任給は過去の金額に比べて増加傾向にあります。

なお、厚生労働省の「令和2年就労条件総合調査」によると、1ヶ月あたりの通勤手当の平均は1万1,700円です。この結果を踏まえても、この6年間で、大卒・院卒ともに初任給は1万円近く上がっていることがわかります。

■額面と手取りは異なる! 使い方には気を付けよう

また、社会人になったら覚えておきたいのが、給与の「額面」と「手取り」の違いです。額面とは、会社が従業員に支払う金額の合計のことで、給与明細には「総支給額」として記載されます。ここには、基本給だけでなく、通勤手当や残業手当など各種手当が含まれます。

一方、手取り給与とは、額面からさまざまな控除額を差し引いたあと、実際に受け取れる金額のことです。そのため、手取り給与は額面よりも少なくなります。給与明細には、「差引支給額」として記載されます。

額面から差し引かれるのは、初任給の場合、「雇用保険料」と「所得税」のみです。しかし、多くの企業では、その翌月から社会保険料(厚生年金保険料、健康保険料)も差し引くようになります。

そのため、額面は変わらないものの、手取り給与としては初任給より金額が下がってしまうのです。さらに、入社2年目の6月からは住民税も引かれるようになります。

額面の金額がそのまま振り込まれると勘違いしていると、「もっともらえると思ったのに」とショックを受けるかもしれません。また、特にひとり暮らしの場合、手取り給与の金額を把握しておかないと、やりくりに困る恐れもあります。

初任給を受け取る前に、額面からさまざまな税金・社会保険料が引かれることを知り、どのように給与を使っていくのか計画を立ててみましょう。

■初任給の使い道も考えてみよう

今年は大手を中心に、初任給を上げる企業が目立っています。初任給が多くもらえるならやはり嬉しいですし、働くモチベーションも上がるのではないでしょうか。一方、人生で一度きりの初任給を有意義に使えるよう、金額を気にするだけでなく、その使い道もよく考えてみましょう。