スバルが新型「インプレッサ」を発表した。パワートレインはガソリンエンジン車とマイルドハイブリッド車(「e-BOXER」搭載)の2種類。価格は229.9万円~321.2万円となる。セダン設定の予定があるかなど、気になるポイントがいくつかあったので開発陣に聞いてきた。
シート刷新! 乗り心地が明確に進化
「インプレッサ」はスバルブランドのエントリーモデルとなるコンパクトカーだ。先に登場したコンパクトSUV「クロストレック」とは兄弟車という位置づけ。スバル 商品企画本部の刀祢友久さんはこれら2台を「スバルのスタンダード」だと説明する。そもそも「スタンダード」の仕上がりがハイレベルなので、これらの上位に位置するスバルのスポーツモデル、SUVの出来栄えについては推して知るべし、というメッセージが読み取れる言葉だ。
新型インプレッサは従来型と同じ「SGP」(スバルグローバルプラットフォーム)を採用しているし、電動化技術も「e-BOXER」で同じなので、ぱっと見ではあまり変わっていないような印象を受ける。でも中身を見ると、いろいろな面で進化を遂げているのだ。
例えばSGPについては「ウエルドボンド」(接着剤のようなもの)の使用量を従来の7mから30m級に拡大。これにより剛性が高まっている。e-BOXERもハード(モーターやバッテリーなど)こそ変えていないが制御は全面的に刷新。モーターが回り始めるときの継ぎ目やショックを乗り手に感じさせないよう、スムースな動きに磨きをかけたそうだ。
今回はインプレッサの新旧を乗り比べてみたのだが、明らかな進化を感じたのは「シート」だ。
新型インプレッサはフロントに新しいシートを採用している。スバルが群馬大学医学部と協力し、医学的アプローチで乗り心地のよさを追求した自慢のフロントシートだ。現行型インプレッサも別に乗り心地は悪くない。でも新型に乗り換えると、シートのホールド感は素人でもはっきりと感じられるほど違った。サーキットでの試乗だったので高速でコーナーに侵入する場面も多かったのだが、腰のあたりがシートにびたっと密着する感じで、頭を左右に振られる感覚も抑えられていた。
この違いは助手席で体験すると、さらに明確に感じられる。運転手は自分でクルマを操作するから、どのタイミングで自分の体にGがかかるかわかるので、揺れに備えられる。ところが助手席では、クルマがどんな挙動をするかはっきりとは予想できないので、揺れに備えるのが難しい。なので助手席に座っていると(特にサーキット走行では)疲れたり、気分が悪くなったりするのだと思うが、新型インプレッサの助手席はシートのホールド感が高いので、しっかりと踏ん張っていられる感じで負担が少なかった。
セダンなし? 理由は?
このように進化を遂げている新型インプレッサだが、いくつか気になる点もあったので開発陣に聞いてみた。まず、現行型インプレッサにはハッチバックの「スポーツ」とセダンの「G4」があるが、新型ではどうなるのか。
スバルによると、新型ではセダンタイプを設定しないことに決めたそうだ。
セダンの車種が減ってきているのは業界の潮流でもある。現行型インプレッサでもG4を選ぶ人は年々少なくなっていたとのこと。セダンはボディ剛性を高められるので走りのいいクルマに仕上げやすいそうだが、荷物をたくさん積みたいとか、多人数で乗りたいといったニーズが高まっているうえ、昨今のアウトドアブームも相まってセダンのニーズは縮小。スバルではインプレッサのモデルチェンジにあたり、顧客の声を聞いたりデータを調べたりした結果としてセダンの廃止を決めた。「でも、セダンも作ってみたかったのでは?」との問いに開発陣の1人は、「技術者としてはもちろん作りたかったんですけど、自己満足になってもいけませんし……」と少し寂しそうだった。
もうひとつ、e-BOXERのみのクロストレックとは違って、新型インプレッサにはガソリンエンジン搭載モデルが存在する。これはなぜなのか。スバル広報とインプレッサ商品企画担当の話を総合すると、以下のような理由があるようだ。
スタンダードなクルマ、「ザ・クルマ」という感じのクルマを好む層の中には、ガソリンエンジン搭載モデルがいいという人が一定数いる。
価格的な意味もある。ガソリンエンジン搭載モデルは手の届きやすい価格設定が可能。
例えばレンタカーなど、フリートで使いたいという顧客もいる。コンパクトなサイズで気軽に乗れる、インプレッサの本当にベーシックなモデルとしてガソリン車を用意した。
ガソリンエンジン搭載モデルはe-BOXERに比べ150kgほど軽く作れるらしい。今回は乗れなかったが、より軽やかに走るガソリン車というのもそれはそれで魅力があるかもしれない。
ちなみに、クロストレックとインプレッサに装備面での違いはほぼない。違いがあるとすれば「ルーフレールくらい、ですかね」というのが商品企画担当の回答だ。