ワイモバイルから2023年1月に発売されたスマートフォン「Android One S10」を試用してみました。低価格でも長く使えるスマートフォンをお探しの方には、一考の価値がある機種です。

  • Android One S10

    Android One S10

割引込みなら1万円台で買えるAndroid Oneシリーズ最新機種

Android OneはGoogleが各国の端末メーカーと協力し展開している端末ブランドで、OS標準に近いシンプルなUIと長く安心して使えるアップデート保証が特徴です。日本では507SH(2016年7月発売)を皮切りにワイモバイルが継続的に新機種を投入してきました。

当初はお手頃路線のSシリーズと少し高性能寄りのXシリーズの2系統がありましたが、Android One X5(2018年12月発売)以降Xシリーズの投入は途絶えており、よりサブブランドの料金プランや客層にマッチする低・中価格帯のSシリーズに絞られています。

  • ベーシックな機能・性能とアップデート保証が特長の「Android One」シリーズ最新機種。メーカーは京セラ

    ベーシックな機能・性能とアップデート保証が特長の「Android One」シリーズ最新機種。メーカーは京セラ

今回紹介するAndroid One S10はSシリーズの最新機種で、4月17日時点のワイモバイルオンラインストアでの通常価格は36,000円。新規契約/MNPなら割引が適用され、「シンプルS」プランを選択した場合で18,000円、「シンプルM」以上なら14,400円で購入できます。

  • 通常価格は36,000円だが、新規契約やMNPなら2万円を切る価格で購入できる

    通常価格は36,000円だが、新規契約やMNPなら2万円を切る価格で購入できる

5G対応のミドルレンジスマホ、eSIMやFeliCaにも対応

まずはスペックから見ていきましょう。Android One S10の主な仕様は下記の通りです。

  • OS:Android 13
  • SoC:MediaTek Dimensity 700(2.2GHz+2.0GHz オクタコア)
  • メモリ(RAM):4GB
  • 内部ストレージ(ROM):64GB
  • 外部ストレージ:microSDXC対応(最大1TB)
  • ディスプレイ:約6.1インチ TFT液晶 フルHD+(2,400×1,080ドット)
  • アウトカメラ:約1,600万画素+約1,600万画素
  • インカメラ:約800万画素
  • 最大通信速度(5G):下り1.8Gbps/上り159Mbps
  • 最大通信速度(4G):下り285Mbps/上り46Mbps
  • SIM:nanoSIM/eSIM
  • Wi-Fi:IEEE 802.11a/b/g/n/ac
  • Bluetooth:バージョン5.3
  • バッテリー:4,380mAh
  • 外部端子:USB Type-C
  • 防水/防塵:IPX5、IPX8/IP6X
  • 生体認証:指紋認証/顔認証
  • その他の機能:NFC/FeliCa(おサイフケータイ)対応
  • サイズ:約153×69×8.9mm
  • 重量:約169g
  • カラー:ホワイト、ネイビー、ピンク

SoCが2020年発表と古めの物である点が長期サポートを考えると気がかりですが、メモリ容量や通信など全体としては悪くなく、ミドルレンジスマートフォンとして十分な構成です。eSIMやおサイフケータイにも対応している点は評価できます。

  • Geenbench 6のベンチマークスコア

    Geenbench 6のベンチマークスコア

  • 3DMark(Wild Life)のベンチマークスコア

    3DMark(Wild Life)のベンチマークスコア

また、低価格帯の機種では電池持ちの良さに直結する大容量バッテリーを武器にしがちな割に、コストのかかる急速充電技術が省略され、結果として充電時間の長さがストレスになる物も少なくありません。その点では、PD-PPS対応の純正充電器(27W出力)を使えば4,380mAhの大容量バッテリーを約85分で充電できるという本機種の充電性能は良好です。

ディスプレイの解像度や視野角は申し分ないものの、白背景の表示で縁を見ると、最近の携帯端末としては珍しいギャップによる影が残るのは気になるところ。細長いアスペクト比を採用していてボディの幅も幅69mmに抑えられており、扱いやすいサイズです。

  • 6.1インチというと数年前の感覚ではそこそこ大きい機種のようにも思えるが、細長いアスペクト比とベゼル(余白)のバランスにより、意外とスリムでコンパクトな印象を受けた

    6.1インチというと数年前の感覚ではそこそこ大きい機種のようにも思えるが、細長いアスペクト比とベゼル(余白)のバランスにより、意外とスリムでコンパクトな印象を受けた

広角+超広角のデュアルカメラを搭載し、どちらもイメージセンサーは約1,600万画素。ミドルレンジでも5,000万画素クラスの機種も珍しくない昨今のスマートフォンのカメラとしては精細さでは一歩劣る印象ですが、強調しすぎずナチュラルな色味で悪くない写りです。超広角カメラは歪み補正が弱く、明暗差のある場面もあまり得意ではないため、使いこなすのが少々難しい印象でした。

  • 広角カメラ(メイン)で撮影した花の写真

    広角カメラ(メイン)で撮影した花の写真

  • 広角カメラで撮影した料理の写真

    広角カメラで撮影した料理の写真

  • 超広角カメラに切り替えて撮影した写真

    超広角カメラに切り替えて撮影した写真

低価格スマホとしては長い「ソフトウェアの寿命」が利点

端末の高価格化が進んでいること、市場の変化によって大きな割引を受けにくくなったこと、あるいは倹約意識や環境意識の高まりで一つの物を長く使おうという人が増えたことなど、様々な理由で「できるだけ長くスマートフォンを使いたい」と考える人も多いと思います。

画面割れなどのハードウェアの破損・故障に関しては、機種にもよりますが発売から4~5年程度は修理可能なものが多いですし、それを過ぎても壊れるまで大事に使うことはできます。一方で、フィーチャーフォン(ガラケー)の頃とは違い、スマートフォンを長く使うにはソフトウェア面での限界が早く訪れます。

  • OSは発売時点で最新のAndroid 13

    OSは発売時点で最新のAndroid 13

  • 継続的なアップデートが保証されている点がAndroid Oneの強み

    継続的なアップデートが保証されている点がAndroid Oneの強み

あまりにもOSのバージョンが古くなれば、使いたいアプリをインストールできない、あるいはこれまで使ってきたアプリが使えなくなるといったことも起きますし、常時インターネットに接続される機器ですからセキュリティ上の不安も増えていきます。

スマートフォンを長く使いたいなら、OSアップデートやセキュリティパッチの配信が確約されていて、長く面倒を見てもらえる機種を選ぶべきです。ただ、メーカー側としても対応コストや性能の問題があり、アップデート保証を行う機種はやはりハイエンドが中心です。そこで、低価格機でも一定のアップデート保証があるAndroid Oneという枠組みの価値が出てきます。

Android One S10の場合、「発売から24カ月間に最低1回以降のOSアップデート」と「発売から3年間のセキュリティパッチ配信」が保証されています。ハイエンド機のアップデート保証と比べればメジャーアップデートに関しては手薄ですが、このクラスの機種を選ぶ人で、常に最新バージョンのOSや新機能を使えることを重視する人は少ないでしょう。長く安心して使えるという点では十分な保証内容といえます。

  • ホーム画面。メーカー独自のカスタマイズはほとんどされておらず、シンプルなUI

    ホーム画面。メーカー独自のカスタマイズはほとんどされておらず、シンプルなUI

  • プリインストールアプリはOS標準の基本機能とGoogle系サービスに、キャリアの独自サービスが数個加わる程度

    プリインストールアプリはOS標準の基本機能とGoogle系サービスに、キャリアの独自サービスが数個加わる程度。システムに深く入り込んでいる独自アプリは少ない

また、冒頭で触れたように、アップデート保証と並んで「OS標準に近いシンプルなUI」もAndroid Oneの特徴です。一般的なAndroidスマートフォンなら、OS開発元であるGoogleの設計を土台に、各メーカーがUIの外観をカスタマイズしたり独自の機能を盛り込んだりしていくのですが、その「個性」をあえてそぎ落としているのです。

機能面での独自性や目新しさには欠けるものの、どのメーカーのAndroidスマートフォンから買い替えても最大公約数的な仕様でとまどうことは少ないでしょう。同じワイモバイルのAndroid Oneシリーズのなかでも、S7はシャープ、S8~S10は京セラ、X5はLGなどと複数のメーカーが混在していますが、この差も買い替え時にあまり意識することなく使えるはずです。

  • 同じAndroid Oneというブランドで複数のメーカーの機種が展開されているが、一般的なAndroidスマートフォンと違ってメーカーごとの使い勝手の違いは出にくいため、同シリーズでの買い替えであっても心配にはおよばない

    同じAndroid Oneというブランドで複数のメーカーの機種が展開されているが、一般的なAndroidスマートフォンと違ってメーカーごとの使い勝手の違いは出にくいため、同シリーズでの買い替えであっても心配にはおよばない

アップデート保証以外にも安心の要素

ソフトウェアアップデート以外の要素に目を向けても、「安心」は本機種のキーワードとなっています。

防水/防塵はもちろん、ついやってしまう人も多いけれど通常の防水スマートフォンでは実はNGな「ハンドソープで洗う」「アルコール除菌シートで拭く」といった手入れ方法も認めています。ディスプレイとボディには抗菌・抗ウイルスまで施し、衛生面が気になる人も安心して使える仕様です。

また、最近の携帯端末としては非常に珍しく、開発から製造、アフターサービスまですべて日本国内で行う「JAPAN MADE」体制で作られていることも特筆すべき点。同等のことができるメーカーは、今となっては京セラかFCNTぐらいのものでしょう。お手頃価格の機種ですから、年配の家族にはじめてのスマホとして買って渡す場合など、意外と気にされがちなポイントで不安をひとつ減らせるかと思います。

  • 最後に外観をチェックしておきたい。前面はホームボタンなどを持たないフルタッチ操作の一般的なデザインで、インカメラは水滴型ノッチで画面に食い込む配置。現行機種の中では上下のベゼルがやや広めか

    最後に外観をチェックしておきたい。前面はホームボタンなどを持たないフルタッチ操作の一般的なデザインで、インカメラは水滴型ノッチで画面に食い込む配置。現行機種の中では上下のベゼルがやや広めか

  • 広角+超広角のデュアルカメラを搭載。指紋センサーは背面中央に位置する。FeliCa対応を示すマークも見える

    広角+超広角のデュアルカメラを搭載。指紋センサーは背面中央に位置する。FeliCa対応を示すマークも見える

  • 側面には音量キーと電源キーに加え、Googleアシスタントの呼び出しキーも搭載。音量/電源キーは別パーツではなくボディの一部をコの字に切って作られているのが珍しい。コストダウンのための工夫だろうか

    側面には音量キーと電源キーに加え、Googleアシスタントの呼び出しキーも搭載。音量/電源キーは別パーツではなくボディの一部をコの字に切って作られているのが珍しい。コストダウンのための工夫だろうか

  • サラサラとした質感の樹脂製ボディは、やや滑りやすいが汚れにくく清潔感がある。抗菌加工が施されているのも特徴だ。また、前面から見て左下の角には、スマートフォンではすっかり減ったストラップホールが用意されている

    サラサラとした質感の樹脂製ボディは、やや滑りやすいが汚れにくく清潔感がある。抗菌加工が施されているのも特徴だ。また、前面から見て左下の角には、スマートフォンではすっかり減ったストラップホールが用意されている