マネ―スクエアのチーフエコノミスト西田明弘氏が、投資についてお話しします。今回は、2023年GWにおける金融市場の注目イベントについて解説していただきます。
間もなく大型連休がやってきます。いうまでもなくGW(ゴールデンウィーク=黄金週間)です。今年は4月29日昭和の日が土曜日なので、東京市場が休みとなるのは5月3-5日の3日間だけですが、1-2日も市場は閑散となるかもしれません。もっとも、海外の市場はGWとは無関係。日本のGW中にも重要なイベントが控えており、休み明けの5月8日には景色が一変している……なんてことにならないとも限りません。
以下では、GW前後の重要イベントと注目点を時系列で挙げておきましょう。
4月28日: 日本銀行の金融政策決定会合
4月9日に就任した植田総裁が初めて臨む金融政策決定会合です。金融市場には、現在の金融政策である「長短金利操作付き量的・質的緩和」が修正されるとの思惑があります。植田総裁は10日の就任会見で、「現在の金融政策は適切」との見解を示しました。ただし、同時に「持続的な金融緩和の枠組みを探っていく」とも述べ、金融政策の修正に含みを持たせました。3月以降、世界の金融市場では銀行破たんに伴う金融不安が台頭しており、日銀関係者の間でも現時点での政策変更は時期尚早との見方が支配的なようですが、果たしてサプライズはあるでしょうか。
なお、1年前の金融政策決定会合も4月28日で、昭和の日の前日でした。その会合では、金融緩和の継続が決定され、長期金利の上昇を抑制するために国債購入の「指値オペ」を毎営業日実施することも表明されました。当時進行していた「円安」を抑制するために、日銀が金融緩和を修正するとの市場の思惑は外されました。そして、会合後の黒田総裁の会見を受けて、円は対ドルで約20年ぶりの130円台をつけました。
5月2-3日: 米国のFOMC(連邦公開市場委員会)
米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が金融政策を決定するFOMCが開催されます。金融市場では0.25%の利上げが決定されるとの予想が有力です。利上げの有無以上に注目されるのは、次回6月以降に関して、どのようなフォワード・ガイダンス(金融政策の見通し)が示されるか。金融市場では、昨年3月以降続けてきた利上げがこの5月で打ち止めとなり、今年後半には利下げに転じるとの見方が強まっています。一方、3月の会合後の会見で、FRBのパウエル議長は「23年中の利下げは想定していない」と明言しました。金融市場の見方とFRBの意向に大きな隔たりがあるとみられますが、その溝は埋まるのでしょうか。<FOMCの結果判明は日本時間4日午前3時>
なお、FOMC前には重要な経済指標の発表もあります。4月27日の1-3月期GDP(国内総生産)、28日の3月PCE(個人消費支出)デフレータ、5月1日の4月ISM製造業景況指数など。5日発表の4月雇用統計(後述)もFOMCが事前に概要を入手している可能性があります。
5月3-4日: ユーロ圏のECB(欧州中央銀行)理事会
統一通貨ユーロを用いる加盟20カ国の中央銀行であるECBが金融政策を決定します。主要中央銀行のなかでも、ECBは最も強くインフレ抑制の姿勢をみせています。多くの中央銀行が利上げ幅を縮小するなか、ECBは前回3月の理事会で0.50%の大幅な利上げを決定。今回、金融市場では0.25%利上げの予想が有力ですが、ECB関係者からは0.50%利上げもあり得るとの発言も聞こえてきます。<結果判明は、日本時間4日午後9時15分>
5月5日: 米国の雇用統計(4月分)
グローバルに注目されている経済指標です。コロナの制限が緩和されて、米国の労働市場は堅調が続いてきましたが、ここ数カ月は雇用の増加ペースがやや鈍化しています。労働市場が変調をきたすようなら、FRBが利上げを停止する可能性が高まりそうです。NFP(非農業部門雇用者数)や時間当たり賃金、失業率など、それぞれが金融政策に影響を与えます。<発表は、日本時間5日午後9時30分>
5月11日: BOE(英国中銀)のMPC(金融政策委員会)
BOEの金融政策が決定されます。英国のCPI(消費者物価指数)は前年比で10%を超える上昇が続いており、主要国のなかでも高インフレが目立ちます。BOEは英国のインフレ率が今年後半に顕著に鈍化すると予想してきましたが、徐々に自身を失いつつあるかもしれません。金融市場では0.25%利上げの予想が有力です。次回6月以降も利上げを続ける意向が示されるでしょうか。同時に公表される「金融政策報告」でそのあたりのヒントがうかがえるかもしれません。<MPCの結果判明は日本時間11日午後8時>
以上、主要な中央銀行の政策会合を中心に解説しましたが、金融市場が大きく動くのは全く予期しなかったサプライズが発生した場合です。したがって、事前に想定するのは難しいかもしれません。それでも、上記のイベントに対して金融市場が大きく反応する可能性はあるので、少なくとも心の準備はしておきたいものです。