ASUSは4月21日、同社ノートPCシリーズ「Zenbook」における最新モデルとして、「ASUS Zenbook S 13 OLED(UX5304VA)」を発表しました。今回発表に先駆けて実機を借りられるチャンスがあり、さらに同じ日程で台湾ASUS本社ツアーにもお招きいただいたので、ついでとばかりに海外出張へと実際に持ち出して試用(もちろん了承済みです)。発売前の製品とみっちり過ごせたので、本製品について紹介しようと思います。

  • 「ASUS Zenbook S 13 OLED」をもって台湾出張! 薄さ10.9mmの衝撃、OLEDの鮮やかさ

13.3型2.8K有機EL搭載! 薄くて軽くて高性能

まず今回紹介するASUS Zenbook S 13 OLED(UX5304VA)の概要についてまとめておくと、13.3型サイズの有機EL(OLED)パネルを搭載し、2.8K(2,880×1,800ドット)もの高解像度で画面表示を行えるノートPC製品です。15W駆動で動作する第13世代Intel Core Uシリーズプロセッサを搭載して性能とバッテリー駆動時間のバランスを最適化し、最大14.1時間(カタログスペック)もの動作時間を確保。本体ボディは環境に配慮してPCR素材(post-consumer recycled、再利用のこと)をふんだんに活用しつつ、それでいて高級感を前面に押し出しています。

  • とても見やすくまとまっている販促資料からスライドを拝借。13.3型2.8K有機ELノートPCです

  • CPUにもいろいろありますが、要は「いちばんスリムなパソコン向けのスマートなもの」が採用されています

  • 本体素材にはかなりPCR素材を採用。リサイクルしやすいアルミニウムに加えて、素材の品質を担保しずらいプラスチックでもふんだんに活用しています

  • これは発表会の会場で見た素材の展示。キーボードに加えて、実はスピーカーのハウジングもPCRプラスチックの使いどころです

  • シャーシの製造上出てくるアルミのクズももちろん再利用

  • パッケージももちろん再生素材。持ち手のところがプラスチックではなく紙になっていたり…

  • 緩衝材をスタンドとして活用可能です

いざ実機を見たところ、リサイクル素材がそんなに使われているとは思えない高級感。表面加工としてプラズマ電解酸化処理が施されており、本体カラーは初めて設定される「バサルトグレー」。なめらかな手触りとシックな印象に加えて極めて高い耐摩耗性を備え、質感と耐久性を両立。大きくあしらわれたZenbookロゴはコンクリート建築のクラックを思わせるスタイリッシュさで、個人的にとても気に入りました。

  • 取り出したところ。13.3型、1kgなので片手で持てるレベル

  • この製品で一番気に入ったのがこの天面デザイン。フチまで完全にフラットで、巨大なZenbookロゴがクラックのようなスタイリッシュさを演出。左下のエンブレム含めてパーフェクトな外観です

  • 底面。幅広いゴム足がついていてガタガタしません

  • 左側面。この薄さなのにHDMI端子を搭載! USB4端子を2個備え、USB PD充電中でも高速なインタフェースを利用できます

  • 右側面。USB Type-Aが確保される本気のビジネス仕様。ディスプレイは開くとキーボード面が持ち上がるエルゴリフト機構になっています

  • タッチパッドはとても広々。クリックボタンは独立していません

  • キーボード全景。かな入力用のひらがなは省略してもよかった気も

  • やはりどうしても右側が詰まりがち。ShiftキーやEnterキー、BackSpaceが分割されており、スタンダードなレイアウトとはいきません

  • 無変換キーはスペースキーと同居しています

  • 充電器は65W出力のType-C。最近のGaN採用USB充電器と比べると若干大きめかも

さらに今回、台湾ASUS本社の発表会会場では、分解されたモックアップを眺めることもできました。10.9mmもの薄さにおさめるためにパーツは極限まで無駄が省かれ、タッチパッドには極薄パネルを搭載。キーボードのフレームはボディと一緒に成型されているのか、薄さと強度の両立に向けてあらゆる工夫がなされているようです。

  • 薄いパソコンをさらに薄くスライスした展示

  • CPUクーラー。風量を稼ぐべく薄い羽根が大量に詰まっています

  • CPU周辺。至近距離にLPDDR5メモリを搭載しており、2本のヒートパイプで効率的に熱を移動させます

  • まとめるとこのようになっています

電源プランで一変する振る舞い。高度なCPU機能へのかんたんなアクセス

今回この製品を実際に試してみて強く印象に残ったのは、第13世代Intel Core i7-1355Uの振る舞いでした。Windowsの設定画面から選択できる電源プラン「バランス」ではとても静かで、ひと昔前のWindowsノートPCのように、少し触っただけでファンが全開で動作することはありません。性能も一般的な操作でもたつくことは全くなく、バッテリー駆動でも快適な作業が行えそう。

ところが、「最適なパフォーマンス」に設定すると様子は一変。あらゆる操作でプロセッサの出力が大きくなるようで、ファンの動作もしばしば全開に。ただ性能は大きく引き上げられており、Intel Core Uプロセッサとは思えない速度で高負荷なワークロードにも対応できそうです。

ちなみにファンの排熱はディスプレイとのヒンジの間から吹き出す仕様で、手には当たらず快適。ファン音はキーンという高周波成分がそれなりに抑制されており、熱くなる部分もキーボード上部に集約されていた点も好感触でした。

  • 体感しやすい性能差の指標として、Speedometer 2.1がわかりやすいです。「バランス」設定時の数値は186

  • 「最適なパフォーマンス」設定時の数値は239。断然高性能ですが、失うものもあります

  • 参考までに、「最適なパフォーマンス」時のPCMark Extendの結果

  • SSDの性能。ランダム性能も高速で、もたつきは一切ナシ

  • HWiNFOで取得したハードウェア構成

性能面以外で感じたこととしては、OLEDパネルの鮮やかさがとても印象的。2.8Kの解像度は全くドット感のないクリアさで、小さめの文字が好きな筆者としては、150%スケーリングでくっきりした画面表示とのバランスを実現できました。16:10のアスペクト比は情報量が多く、画面占有率87.4%の没入感は伊達ではありません。まさに最新ノートPCという印象で、特に新しさを強く感じたのがこの部分。

  • ちらつきを防いで目の疲れを減らしてくれるDC調光機能を搭載しているようで、輝度を下げると同機能が無効化される警告が表示されます

また、第13世代Intel Coreプロセッサにはさまざまな便利機能が内蔵されており、独自ユーティリティ「MyASUS」から設定可能。F12キーに割り当てられているので、簡単に呼び出せます。マイク入力のAIノイズキャンセリングやWebカメラの背景ぼかし機能、顔優先AEに加え、オートフレーム機能もありました。最新技術に分かりやすくアクセスできて便利。GUIが新しくモダンなデザインなのも素晴らしいです。

  • 「MyASUS」のインタフェース。スッキリ整頓されたモダンな印象で、使ってやろうかなという気にさせてくれます

  • カメラ機能。ぼかしとオートフレームは同時に使えないみたいです。解像度はフルHDで、IRカメラによるWindows Helloも利用可能でした

  • 有機ELといえば焼き付き。表示をほんの少しずらすなどして、緩和する各種機能を搭載します

  • マイクの入力音声もAIで品質向上。指向性も選択できます

性能面で不満に思うことは一切なく、HDMI端子の搭載で外部モニターも快適に利用可能。USB Type-A端子を搭載してSDカードリーダーもすんなり利用でき、出張中本当に重宝しました。

まさに最新仕様、OLEDと第13世代Core Uを満喫できる製品

ここまでASUS Zenbook S 13 OLED(UX5304VA)について紹介してきた本記事。13.3型の小型サイズで金属素材を採用しつつ、約1kgの軽さとわずか10.9mmの薄さに仕上げられた製品は、まさに現行最新仕様という印象。天板のデザインはZenbookによくあった同心円状のヘアライン仕上げよりも個人的にかなり好みで、耐摩耗性に優れるという表面加工も大変気に入りました。性能もUプロセッサとはいえ極めて高く、ビジネスシーンで不足に感じることはまずないでしょう。

惜しむらくは、小型ノートPCだけにどうしても苦しくなる日本語キーボードのレイアウトのみで、英語キーボード搭載モデルの販売もあればなおよさそう。EnterキーとBackSpaceキーで押し間違いが頻発したほか、デザイン的にはかな入力用の印字も省略していい気がします。

ともあれ、海外出張というクリティカルなシーンで使い倒せて大満足。新製品の発表会にその新製品を持っていく、珍しい経験ができてよかったです。

  • バッテリー持ちが素晴らしく、カメラやiPhoneの充電でACアダプタが占有されていても問題なく作業を続行できました