そこで、この記事では、「もとい」の意味や用法について詳しく解説します。
「もとい」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。日常会話ではあまり馴染みがないという人もいるかもしれません。 そこで、この記事では、「もとい」の意味や用法について詳しく解説します。
「もとい」の意味とは? 漢字で書くと?
「もとい」は現在の日常会話でも使われる、日本語として正しい表現です。
「もとい」は、
- 前にいった内容を改める
- 間違いを直す
- 間違いを訂正するために元へ戻る
などの意味をもつ言葉です。
漢字では「元い」と表記されます。 この表記からも分かるように「前の内容を打ち消すために一旦元へ戻る」といった意味合いで使われる言葉です。 このひと言によって訂正の意を表せるため、スマートで便利な表現として用いられます。
また、相手との関係性や、状況による使い分けは生じません。日常会話やビジネスシーンなど、どのような場合においても「もとい」と発言するだけで、訂正を表現できます。
「もとい」の由来とは?
「もとい」の由来には、2つの説があるとされています。
具体的には、
①軍隊の号令で使われる「元に戻れ」
②髷を結う際に使われる「元結」
の2つです。
①は、昔、軍隊用語として使われていた「元に戻れ=元の姿勢に戻せ」という号令が語源とされる説です。 やり直しの意味で使われていたため、「間違いを正す」ための言葉として広まったとされています。 また、その過程で、発音が「もとい」へと変化したとされます。
②の「元結」とは、髷を結うときに使われる紐のことです。 「もとい」と発音が似通った言葉であること、やり直しの意味をもつ言葉であることから、「もとい」の語源とされる説です。 昔、髷を結び直すとき、元結をすべて外して最初からやり直していました。 このことから「もとい」が広まったとされています。 また、元結は別名「もっとい」と呼ばれています。
「もとい」の使い方と例文
ここで、「もとい」の使い方を具体的にみていきましょう。
「もとい」を訂正するために使うとき
たとえば、「(言い間違い)+(もとい)+(言い間違いの訂正)として使うシーン」では、以下のような例文が挙げられます。
《例文》
- ご予約は、3名、もとい4名でいただいています
- 明日の出発時間は13時、もとい14時となります
間違えた箇所のすぐ後に「もとい」を置き、「もとい」を挟んだ直後に正しい情報を続けます。
また、「もとい」はビジネスシーンにおいても違和感なく使える表現です。 たとえば、以下のような例文が挙げられます。
《例文》
- 明日10時に社内ミーティングを行います、もとい明後日10時です
前述の使い方と同じように「もとい」の直後に正しい情報をつなげることで、それより前の発言に訂正があることを表せます。
「もとい」をジョークや皮肉で使うとき
「もとい」はジョークや皮肉としても使用されることがあります。 たとえば、以下のような例文が挙げられます。
《例文》
- あなたは時間にルーズ、もといおおらかですね
- 彼は忘れっぽい、もとい小さなことにこだわらない人だから
このような例で用いられる「もとい」は、前の語句を打ち消す使い方ではありません。前に述べた情報を、別の表現で言い換えている使い方です。
発言者側からすると、本当に伝えたいことは「もとい」の前に置かれた情報です。 親しい間柄においては、このような使い方が話を弾ませることもあるでしょう。
「もとい」の類義語
それでは、「もとい」と似たような意味や用法の言葉は他にあるのでしょうか。 ここからは「もとい」の類義語について解説します。
ではなく
「ではなく」という表現は「もとい」と同じく、前言を撤回・訂正するときに用いられます。 用法も同様で、訂正したい情報の後に「ではなく」と置き、その後に正しい情報を続けましょう。 また「ではない」という否定の表現として、日常的に使用している人も多いため、「もとい」よりもカジュアルな印象があります。ビジネスやオフィシャルなシーンにおいては「もとい」を使用することで、フォーマルな印象になります。
というより
「というより」は、前言を、より適切な表現に言い換えるときに用いられる表現です。 「もとい」は、前に置いた情報を完全に打ち消して、正しい情報に訂正する意味合いをもちます。 一方「というより」は、ひとつの事柄に対し、前に述べた情報と比べて、より適切な情報が続く場合に使います。 「もとい」と「というより」では意味合いが少し異なるため、使い方に注意が必要でしょう。
また「ではなく」と同様に、日常の会話で使われることが多いため「もとい」よりもカジュアルな印象を与える言い方です。 そのため、やはりビジネスシーンにおいての多用は好ましくないといえるでしょう。
改め
「改め」は「もとい」と同様に、前言をまったく別の言葉へ言い換えるときに用いられる表現です。 伝統芸能の役者たちが襲名を発表するシーンでよく使われる表現であるため、馴染みがある人も多いのではないでしょうか。 これは、他動詞「改める」の連用形に由来しています。 「もとい」と「改め」の使い分けについての詳細は後述します。
「もとい」と「改め」の違いは?
ここで、「もとい」と「改め」の違いについて、詳しくみていきましょう。
「もとい」は訂正に、「改め」は変化に主題が置かれる
注目すべきポイントは、「もとい」と「改め」の主題が異なる点です。
- 「もとい」は、前言の訂正を主題としている
- 「改め」は、前言が新しいものに変わることを主題としている
つまり、「改め」は、前言の訂正や否定ではなく、前言に変更があった場合に使用されます。 この点で、ジョークや皮肉で使われるときの「もとい」は、どちらかといえば「改め」に近い意味をもつといえるでしょう。
「改め」の例文
それではここで、「改め」の例文を挙げます。
《例文》
- 創業100年の老舗が、○○堂改め△△堂となった
- ○○改め△△を襲名いたしました
ポイントは「前に置かれた情報が、打ち消されているわけではない」点です。 「改め」は「前の情報が、後に続く情報に変化すること」に主題があります。 この点において、訂正の意味をもつ「もとい」とは明確な違いがあり、使う場合は注意が必要です。
「もとい」の英語表現
「もとい」を英語で表現するとしたら、どのような言い方になるでしょうか。 近い表現としては、
- I mean(つまり、いやその)(いや、ではなく)
- anyway(訂正)
- but(訂正させてください)
などが挙げられるでしょう。
「もとい」の意味と使い方を知ってビジネスシーンで活用しよう
「もとい」は、前言に間違いがあったことを表し、正しく訂正するために使われる言葉です。この一言を挟むだけで、スマートに前言の撤回ができるため、ビジネスシーンにおいてはとくに重宝される言い方です。
ふさわしい場面や用法を抑えることで、フォーマルなシーンでもすぐに取り入れられる表現だといえるでしょう。