伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は、挑戦者決定リーグ白組の佐々木大地七段―増田康宏七段戦が4月18日(火)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、104手で勝利した佐々木七段がリーグ成績を4勝0敗として白組内でのプレーオフ以上を確定させました。
両者得意の腰掛け銀
振り駒で先手となった増田七段は角換わり腰掛け銀を採用します。後手の佐々木七段も腰掛け銀で応じたのを見て、飛車先の歩を保留したまま駒組みを進めたのが増田七段の工夫。▲2六歩型と呼ばれるこの布陣は、右桂を跳ね出す余地を残すことで攻めの幅を広げる意味があります。対して佐々木七段は飛車を4筋に回って徹底防戦の構えを取りました。
仕掛けのタイミングをめぐる間合いの計り合いが続いたのち、先攻したのは後手の佐々木七段の方でした。6筋で銀を使って歩交換した直後、佐々木七段は先手陣の空いたスペースに角を打ち込んでプレッシャーをかけます。盤面全体を使った押し引きが続いたのち、3筋に馬を作って盤上右方を開拓した佐々木七段がペースをつかむことに成功しました。
攻め急ぎ誘って佐々木七段が完勝
形勢をリードする佐々木七段はここからうまい構想で優位を拡大します。攻防の要と思われた馬を先手の金と刺し違え、返す刀でこの金を5筋に打ったのが場合の好手。瞬間的な駒割には後手の駒損ながら、この金打ちで捕獲した角を取る手のほか、4筋に跳ね出した先手の桂を捕獲する手も見せて増田七段の攻め急ぎを誘う狙いがあります。
攻めを急ぎたい先手の増田七段は飛車を縦横に使って必死に手をつなぎますが、佐々木七段の対応は冷静でした。空間を埋める桂打ちで自陣の隙を消しておいてから、一転して7筋に桂を打って先手の玉頭を狙ったのが緩急自在の決め手。終局時刻は19時11分、仕掛けから一度も形勢の針を譲らなかった佐々木七段が攻め切って快勝譜となりました。
これで4勝0敗となった佐々木七段は白組内でのプレーオフ以上が確定しました。敗れた増田七段は1勝2敗となり、残り2戦にリーグ残留の望みを懸けます。
水留 啓(将棋情報局)