第36期竜王戦3組ランキング戦(主催:読売新聞社)は、準決勝の三浦弘行九段―阿久津主税八段戦が4月17日(月)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、113手で勝利した三浦九段が決勝トーナメント進出まであと1勝としました。
相掛かりの空中戦
振り駒で先手となった三浦九段は相掛かりの戦型に誘導します。後手の阿久津八段が角道を開けたのを受けてすぐに飛車を3筋に回ったのがさり気ない工夫で、縦に歩を取る手をチラつかせることで後手の駒組みを制限する狙いです。後手の阿久津八段は飛車先の歩を交換できていない点が不満ですが、ひとまず玉を中住まいに囲って戦いの時を待ちます。
駒組みが頂点に達したところで、阿久津八段は盤面全体をにらむ自陣角を放ちます。この角が左右をバランスよくにらんでいるのが主張で、阿久津八段は直後に7筋と3筋の歩を突き捨てて桂頭攻めから局面を動かしにかかりました。続いて飛車を8六~5六~5五~3五と大きく転回して3筋に持ってきたのが継続の構想で、と金づくりを見せた阿久津八段がペースをつかみました。
長手数の詰みを読み切り三浦九段が勝利
黙っていては作戦負けと判断した先手の三浦九段は、盤面左方に手段を求めます。桂交換から左辺の攻め駒をほぐしたのが好着想で、手順に後手陣にと金を作って逆転の種としました。左辺での攻防が一段落すると主戦場は3筋方面に移り、やがて局面は形勢不明の終盤戦に突入。三浦九段のと金に対抗し、阿久津八段は2筋に馬を作って攻めの拠点としました。
三浦九段が飛車を取って竜を成り込んだ局面が、本局における最後の分岐点になりました。この手で持ち時間を使い切った阿久津八段は素直にこの竜を取りましたが、ここから三浦九段の20手近くの即詰みを見ることになりました。阿久津八段としては結果的に、いったん先手玉に馬での王手を入れておくことで自玉の詰みを緩和しておく必要があるとされました。
終局時刻は21時16分、自玉の詰みを認めた阿久津八段が投了。勝った三浦九段はこれで2組昇級を決めました。三浦九段は次局で本戦トーナメント進出をかけて郷田真隆九段と対戦します。
水留 啓(将棋情報局)