韓国Samsung ElectronicsのDX部門Mobile eXperience事業部長で社長のTM Roh氏が来日し、報道陣に対するインタビューに応えました。4月20日の「Galaxy S23」シリーズ発売を前に、Roh氏はGalaxy Sシリーズの進化について「消費者が最も望む昨日の要求に合わせて、新しい革新を通じてエクスペリエンスの価値を提供できるように発展させていきたいと考えている」と話し、ニーズを踏まえた開発をしているとアピールしています。
停滞気味の日本市場でも「Galaxy S23」の拡大を期待
最新の「Galaxy S23シリーズ」は、国内ではNTTドコモとauから「Galaxy S23」「Galaxy S23 Ultra」が、楽天モバイルからは「Galaxy S23」が発売予定。ハードウェアとソフトウェアに加えて、AI処理による高画質化を図ったカメラ機能は、夜間の動画撮影機能も強化するなどの進化をしています。
4月6日の国内での発表以来、「ファントムブラックカラーを中心に、ひとつのカラーに偏ることなくすべてのカラーを選択してもらっている」と、Roh氏は好調な予約状況だと話します。
ただ、日本のスマートフォン市場は停滞傾向にあるため、Roh氏も「難しい状況にはある」ということは認めています。そのうえで、日本の消費者は「良い商品を見極め、必要なものには投資を惜しまない」とし、そうした消費者に対して「Galaxy Sシリーズは深く愛されていると確信している」として、期待感を示しています。
「Galaxy S23」で注力した4つのポイント
Roh氏は、最新モデルの特徴について「最高のコネクテッド体験、カメラ体験、ゲーム体験、そして地球のためのサステナビリティやセキュリティ、プライバシーなどの機能の1つ1つにこだわった」と紹介。
カメラ機能では、「ビデオのナイトグラフィー機能などをさらに強化し、映画の撮影まで可能なレベルまで進化した」とアピール。Qualcommとの戦略的な協力によって専用チップセットとハードウェアの設計、ソフトウェアの最適化で、Galaxy史上最高の性能とゲーム体験を実現したとしています。
サステナビリティの面では、リサイクル素材の利用をさらに強化し、エコパッケージを採用。修理サポートも充実させて長期利用に耐える耐久性を備えたほか、4世代分のOSアップデートと5年間のセキュリティアップデートに対応することで、長期間でも使い続けられる端末としました。
Roh氏は、「最近のスマートフォンはこれまでとは異なり、ハードウェア/ソフトウェア/AIなどのアルゴリズムがそれぞれ個別に動くのではなく、有機的に一体化して動作する」と説明。トータルで開発するSamsungだからこそより良い製品とエクスペリエンスを提供できると指摘します。
企画段階から設計/開発/生産までグローバルの消費者ニーズを分析して反映しているという「Galaxy S23」シリーズでは、求められている機能が4つあると分析したそうです。
1つ目がカメラ機能で、撮影機能として動画や夜景撮影機能だけでなく、他の人に共有する機能を含めて提供できるように開発をしているといいます。
2つ目がゲームを中心とした性能に関する部分で、さらにその性能を維持できるバッテリー部分の開発も行っています。これは大容量バッテリーと言うだけでなく、ケーブル接続時にバッテリーを経由せずに給電することでバッテリー寿命への影響と発熱を抑えるという仕組みです。
性能面では、専用チップセットというだけでなく、AIアルゴリズムの開発を含めて研究努力をしてきたというRoh氏。「最高の性能」を今後も提供し続けたいとの考えを示します。
3つ目が接続性能とUXの面で、標準AndroidをカスタマイズしたOne UIをさらに強化し、ソフトウェア面での高度化に注力したそうです。そして4つ目はサステナビリティやエコといった面だと言います。
SとZ、2つのプレミアムモデルの関係は
Galaxyシリーズでは、プレミアムモデルとしてGalaxy SシリーズとフォルダブルのGalaxy Zシリーズがあります。Galaxy Sシリーズでは、同じくプレミアムだったGalaxy Noteシリーズと統合されてペンによる手書き入力もサポートし、さらなる強化を図っています。
Sシリーズは、性能面やカメラなど「最高の性能」を追及するシリーズとして今後も継続して開発していく考えだといいます。
それに対してフォルダブルのZシリーズは、同じプレミアム製品とはいえ、カメラ性能などはSシリーズには届いていません。折りたたみという特徴はありますが、物足りないとも感じます。
Roh氏は、「消費者が望むニーズを綿密に分析し、そのニーズに合うように開発していく」というスタンスを示し、Zシリーズについては折りたたみによる大画面の要望が強く、生産性や閲覧性を望む声が大きいことを紹介。持ち運びしやすさが重視され、より軽く、より薄くというニーズが強いそうです。
そのため、例えば現行の「Galaxy Z Fold4」では薄型軽量化を図っていますが、カメラ性能へのニーズもあることから継続的な発展を続けていく計画。最近のカメラは、ハードウェア性能だけでなくAIによる処理が画質に大きく影響しており、こうした技術を総合して、カメラ性能を改善していく考えです。
他社からもフォルダブル製品が登場しており、Googleからも同様の製品が登場すると予想される中、Samsungとしての優位性についてRoh氏は、「ハードウェアだけでなくユーザービリティを高めるため、アプリベンダーなどのパートナーと協力している」点を挙げます。
大画面を折りたたんで持ち歩けるフォルダブルスマートフォンは、通常のスマートフォンとはUXが異なるため、本体のソフトウェアだけでなくサードパーティのアプリやサービスの対応も重要になり、Samsungは「オープンの考え方」によってパートナーと協力することで、フォルダブルに最適化されたサービス/アプリを開発してもらい、一番に提供されるようにしたことが強みだとRoh氏は話します。
Roh氏は、日本特有のアプリやサービスもニーズが高ければ早期に最適化していきたいとの意向を示しており、日本からの要望を歓迎しているようです。
「Galaxy」から「SamsungのGalaxy」へ
なおサムスンはスマートフォンの日本での展開にあたり、これまで「Galaxy」ブランドを重視して表に出していましたが、今回からはグローバルと同様に「Samsung」の社名も出すようになりました。Roh氏は「Galaxy製品は10年前から日本市場に進出していますが、まだ認知度やシェアは努力が必要な状況」との認識を示します。
これをさらに推進するために日本ではキャリアやパートナーとも継続的に議論しつつ、消費者調査も実施。この3年間のブランド指数は5位となっており、継続的に上昇傾向にあるそうです。
「Galaxy S23」シリーズから「SamsungのGalaxy」という位置づけを強化することで、この価値をさらに高めたい意向で、さらなる取り組みを続けていく考えです。
SIMフリーモデルの展開は?
日本市場の規模は、グローバルのモバイル市場で5~6位にあるとRoh氏。品質や性能を重視し、要求の高さから「先進的な市場」というのがRoh氏の評価で、こうした日本市場で成功することでグローバルの成功にも繋がる……とリップサービスも交えつつ語ります。
プレミアム製品のシェアが高い日本においては、ハイエンドのキャリアモデルに加えて、ミドルレンジのSIMフリー(オープンマーケット)モデルを提供しています。消費者に選択肢を提供するという考えから、日本でも継続的にオープンマーケットモデルを提供することを検討しているとRoh氏は話します。日本ではキャリアの販売モデルもあり、「グローバルのように成功できるか悩む部分もある」として、「キャリアとの協力を強化するとともに、選択肢を広げるという消費者のニーズにも応えることも重視したい」という考えを示していました。
Roh氏は、「『Galaxy S23』シリーズによって、お客様にさらに愛されるSamsung Galaxyブランドへと邁進していく」と日本でのブランド強化を目指すとともに、日本市場に向けて「これからも日本のスマートフォン市場に新しい風を吹き込むことができるイノベーティブな製品と技術を紹介していきたい」と意気込みを語っていました。