財布やスマホを出さずスマートに支払いを済ませたい、でもスマートウォッチまでは……という方にぴったりなスマートリング。一見ふつうの指輪のようで決済も解錠もできる「EVERING」を試してみました。
シンプルなスマートリングという選択肢
コロナ禍による「非接触」意識の高まりにも後押しされ、現金を使わないキャッシュレス決済の存在感はここ数年で一気に高まりました。キャッシュレス決済と聞くとコード決済や非接触型電子マネーのような新しい決済手段を思い浮かべがちですが、経産省が公開している決済比率の推移などを見ると、主役は依然としてクレジットカードであることが見て取れます。
クレジットカードを使った決済も年々進化していて、最近では店舗の決済端末にかざすだけで済む「タッチ決済」が多くのカードに搭載されるようになりました。さらに、iPhoneのApple PayやAndroidスマートフォンのGoogle Payにカードを取り込み、プラスチックカードを取り出さなくても同じようにタッチ決済ができる機能も普及しています。
しかし、他のキャッシュレス決済手段に慣れている人、特に日本特有の「おサイフケータイ」の便利さを知っている人からすると、クレジットカードのタッチ決済は手間や素早さで一歩及ばないと感じるかもしれません。
「財布からカードを出してかざす」場合は言わずもがな、スマホにカードを取り込んだ場合でも、iPhoneならFace IDによる認証、Androidならかざす前に画面ロックの解除が必要となり、どうしてもワンテンポ遅くなります。例外として、Apple Watchなら生体認証なしでタッチ決済ができ、GoogleのWear OSスマートウォッチも同様です。
つまりクレジットカード系のタッチ決済を最も快適に使えるのは、財布から出さないといけないプラスチックカードでも生体認証必須のスマートフォンでもなく、いつでも身に着けていて決済までの手順も少ないウェアラブルデバイスということに。ただ、スマートウォッチはそもそも腕時計を着ける習慣のない人には受け入れにくかったり、毎日の充電がわずらわしかったり、高価だったりと少々ハードルの高いデバイスでもあります。
そこで、より負担なく身に着けられるスマートリングという選択も考えてみる価値はあるのではないでしょうか。
ふつうの指輪感覚で着けられるデザイン、充電も不要
今回使ってみたスマートリングは「EVERING」という製品。Visaのタッチ決済に対応したNFC機能が搭載されていますが、見た目は少しボリュームのあるふつうの指輪そのもので、一見ハイテクな機能が組み込まれているようには見えません。デザインも至ってシンプルで、ファッションに取り入れやすそうです。
カラーはブラック、ホワイト、シルバーの3色から選択でき、今回はシルバーを中心に試用しました。この色は金属そっくりに仕上がっていますが、NFC決済のためのアンテナを内蔵している都合上、実は他の2色と同じジルコニアセラミック製。軽量なことに加え、金属アレルギーのある人でも着けやすい指輪でもあります。
ふつうの指輪感覚で身に着けられる気軽さに加え、充電不要という点も導入のハードルを下げてくれるでしょう。同じスマートリングというジャンルでも、種類によっては活動量計などの機能のために定期的な充電が必要な製品もありますが、EVERINGの場合はNFC機能に特化しており、一般的な非接触型ICカードと同じように電磁誘導方式で通信に必要な電力をまかなうので、電池自体が入っていないのです。
また、価格面でも多機能なスマートウォッチよりは手頃です。リングを購入して使う「スタンダードプラン」なら19,800円~、サブスクリプション型の「定額プラン」なら月額500円で利用できます。
総じてスマートウォッチよりも手を出しやすいデバイスといえますが、唯一、指輪型特有の注意点となるのがサイズ合わせ。USサイズで製造・表記されており日本の号数表記ではないため、普段から指輪を着け慣れている方でも必ずサイズを測っておきましょう。着ける指は特に決められていないので、各自の使いやすい指でかまいません。
「手をかざすだけ」の決済体験
EVERINGが対応している決済手段は「Visaのタッチ決済」のみですが、利用にあたってVisaブランドのクレジットカードが必須というわけではなく、マスターカード/JCB/アメックスでも利用できます。
どういうことかというと、Apple PayやGoogle Payのように「デバイスに取り込んだクレジットカード情報で直接決済する」仕組みではなく、スマートリング自体が非接触決済専用のVisaプリペイドカードとして扱われ、そこにスマートフォンアプリ経由でクレジットカードを使って都度チャージして使うという流れです。
この仕様は一長一短で、1カ月あたりのチャージ限度額が12万円までに制限されるためまとまった額の買い物には不向きなほか、プリペイド不可の加盟店では利用できません。一方で、裏返せばプリペイド型であることのメリットもあり、紛失時には高額な不正利用をされにくく、チャージしていた残高の範囲に留まるため傷は浅く済みます。スマートリングでなくとも、ちょっと外しておいたら指輪をなくしてしまったというのはよく聞く話ですし、非常に小さなデバイスゆえの怖さをうまく打ち消せる仕様といえるでしょう。
さっそく、チャージ済のEVERINGを着けてコンビニへ。
クレジットカード系のタッチ決済/コンタクトレス決済が出始めたばかりで認知度が低かった頃には、決済端末の対応や現場での周知もあまり進んでおらず「クレジットカードをかざして払いますよ、でもQUICPayやiDではありませんよ」ということを伝えるのにけっこう苦戦したものですが、最近は単純に「カードで」と伝えながらカードを手渡したりカードリーダーに通したりせずにかざす、という行動もさほど珍しくなくなってきたのか(特に都市部であれば)スムーズに受け入れられるようになった印象です。
普及が進んで多くのカードに搭載されるようになったことに加え、店舗の決済端末も、店員がクレジットボタンを押すと磁気/IC/非接触ICのどれでも処理できる状態になる(具体的な手段まで指定する必要がない)通称「3面待ち」という仕様のものが増えてきたことも背景にあります。
今回はセルフレジで試しましたが、この場合も使い方は同様。支払方法は「クレジット」を選び、決済端末にEVERINGをかざします。
この際、手をパーにして手のひらをかざすイメージではなく、軽く握りこぶしを作り、読み取り部分に対してリングが平行になるように向けるのがポイント。リング全体にコイルが入っている構造上、この角度が最も受信感度が良くなります。決済端末に触れるほど手を近付ける必要はなく、数cm離れた状態でも問題なく反応します。
スマートウォッチのように手首をかざすよりも、決済端末の設置位置やリングを左右どちらに着けているかを問わずスムーズに扱えますし、手ぶらで快適に支払いを済ませられました。
スマートロック「bitlock」と連携可能
発売当初は決済機能のみでしたが、2022年3月にはビットキー社の「bitlock」との連携に対応。スマートロックの鍵としても使えるようになりました。今回は「bitlock MINI」と「bitreader+」の2製品を借りてスマートリングを使った解錠操作を試してみました。
bitlock MINIはスマートロックシステムの要となるデバイスで、ドアの内側にあるサムターンに被せるように設置します。bitlockそのものは最低限これだけあれば利用でき、アプリ経由で解錠・施錠できます。
EVERINGと連携させるには、bitreader+という拡張アイテムが必要。こちらはドアの外側に設置するもので、解錠手段として暗証番号やICカードを追加できます。ワイヤレスなので設置の手間は少なく、粘着テープでドアに貼ってアプリから設定をすればすぐに使えます。
使い方は決済時と同様、bitreader+とEVERINGが平行になるようにかざします。認証に成功すると室内のbitlock MINIに解錠指示が送られ、中からサムターンを回す形で鍵が開くという流れです。
bitlockにはオートロック機能が標準搭載されているため、外出時の施錠操作は特に必要ありません。あらかじめドアの開閉位置を登録しておけば、開き戸の場合はジャイロセンサー、引き戸の場合はマグネットセンサーを使って開閉状態を認識し、扉を閉めたら自動で施錠してくれます。
EVERINGは、ウェアラブルデバイスを身に着けていることをほとんど意識させず、充電の手間もなく生活を便利にしてくれるデバイスです。スマートロックも含めてフル活用するとなると導入コストが高くなってしまうところですが、4月30日まで期間限定で販売中の「新生活応援セット」に注目。
今回紹介したEVERING、bitlock MINI、bitreader+の3製品に加え、bitlock用のもう一つの拡張アイテム「bitlink」を加えた4点セットで、1カ月あたり1,700円程度の負担で利用できます(※総支払額=初期費用+2カ月目以降のEVERING月額料金+2年目のbitlock年間料金。2年利用と仮定して1カ月あたりの負担額を計算)。この機会にぜひ一度チェックしてみてはいかがでしょうか。