Eco-Porkは、2023年4月12日に、消費者向けに豚肉の提供を行う専用ECサイトを公開。それにあわせて、新規事業発表会を開催した。

  • (写真左より)Eco-Prokフードディレクターの田村浩二氏、Eco-Pork 代表取締役の神林隆氏、ユーグレナ 代表取締役の出雲充氏

発表会ではまず、Eco-Pork 代表取締役の神林隆氏が登壇。世界で40兆円、国内で6,000億円という非常に大きなマーケットを持つ養豚市場の現状を紹介しつつ、養豚業界が抱える、「養豚農家数の激減」「需要と供給の課題」「食肉の抱えるSDGs課題」といった3つの課題を挙げ、これこそがEco-Pork創業のキッカケだと語る。

日本の養豚農家数は、1970年代のおよそ450,000軒から2000年には11,700軒に、そこからさらに70%以上が廃業し、2022年時点では3,590軒となっているという。

一方、世界的には爆発的な人口の増加により、今の食肉だけでは供給限界に達してしまう恐れも。昆虫食などの話題が出てきているように、タンパク質危機を迎える予測もされている。また、豚の穀物消費量は米の生産量の1.3倍にのぼるなど現行の畜産業は非常に環境負荷が高く、食肉文化自体の「持続可能性が低い」と捉えられていると指摘する。

そして、2040年には畜肉(動物由来の従来の肉)の割合が40%まで減少。代替肉や培養肉がシェアを取る流れにあり、このままでは穀物が余っているところにしか畜肉文化が残らないのではないかという悲観的なシナリオも出ている。そういった背景を受け、Eco-Porkでは2050年も畜肉を食べられるように、ICT、AI、IoTといったDX技術を畜産の自動化パッケージとして提供し、テクノロジーにより生産量を上げ、環境負荷を下げる取り組みを続けてきたという。

同社は創業以来5年半の取り組みの中で、180万頭分/年の農家と契約。国内導入率は10%に達し、導入農家では平均年率7%の生産性改善を達成している。今回、これまでのB to Bによる生産性の向上にとどまらず、新しい取り組みとして「豚肉の流通事業」に参入することで食肉文化の持続可能性を高めていきたいと熱弁した。

新規事業のコンセプトは「Join Our Farm」。「本物の肉の美味しさ、食べる喜び。食肉文化を次世代に。」という活動に企業、そして消費者の参加を促すことによって、「未来を一緒に変えていく仲間を増やしたい」と語る神林氏。流通事業に取り組むにあたり、まずは「ECサイトの構築・運営」を行い、認知の拡大、ブランド化、そして収益力と価格競争力を高めることで、生産者自体の持続可能性を高めていく。第一弾は、新潟県魚沼に拠点を置く「鬼や福ふく」が手掛ける「鬼の宝ポーク」の販売をECサイトにてスタートする。

さらに、ユーグレナとのパートナーシップによって、「ユーグレナ(ミドリムシ)」を給餌することで、環境に配慮しただけではなく非常に美味しい豚肉を生産していくという。59種類もの栄養素を含み、持続可能性にも配慮された「ユーグレナ」を配合した飼料で飼育した「ユーグレナEco-Pork」は、透き通るような“透明な脂肪”が特徴で、“豚特有の臭みが少ない”上品な豚肉となるほか、豚の腸内環境を良くする効果や繁殖期の母豚への健康効果も期待できるという。

ユーグレナ 代表取締役の出雲充氏は、神林氏と大学時代のサークルの同期で旧知の仲。神林氏との対談という形で登壇した出雲氏は、「日本中の皆様がEco-Prokを導入していただくと日本は救われる」と断言。Eco-Porkを導入することで適切な給餌が可能となり、それによってエサ代は3割削減、CO2排出は100万トンも削減できるという。

養豚飼料として提供される「ユーグレナ」自体も、製造過程で一定量発生してしまう商品として使用しない「未利用」の粉末。本来は捨てるものだが品質や効能にはまったく問題がなく、安全性を検査し直し、衛生上も問題がないものが提供されるという。

また、「豚肉の美味しさ」の価値を向上するため、田村浩二シェフがフードディレクターとして就任。ECサイトの豚肉、加工品、ミールキットの監修を行うだけでなく、養豚場における「美味しい豚」の生産メソッドの研究にも関わっていく。

田村氏は、十数年にわたり日仏でフランス料理に携わり、「ゴーエミヨジャポン2018期待の若手シェフ賞」を受賞。現在は「Mr.CHEESECAKE」プロデュースのほか複数事業を手掛けている。Eco-Porkの「本物の肉の美味しさ・食べる喜びの価値を尊重し、食肉文化を次世代につなぐ」という理念に共感し、フードディレクターの職を引き受けたという。

レストランでメインの肉が豚肉となると、出す側も食べる側も少しがっかりする傾向にあるが、Eco-Porkと関わる中で、あらためて豚肉の美味しさや価値を感じたという田村氏。日本において豚肉は「手頃な肉」というイメージがあり、和牛と比べて強いブランドが少ないという現状に対して、「豚の育つ環境やエサによって、世界に誇る豚肉のブランドが生まれるのではないか」という可能性を感じたそう。美味しい豚を作るだけでなく、「どうやってその豚の美味しさを引き出し、より美味しく食べてもらえるかを一緒に考えていくことで、世の中に対してすばらしいことができるのではないか」と将来への展望を語った。

新規事業発表会に続いては、鬼や福ふくで生産された「ユーグレナEco-Pork」を、田村氏が考案した「香味出汁豚しゃぶ」で食す試食会を実施。この「香味出汁豚しゃぶ」は、5月下旬を目処に、Eco-Porkオンラインストアにて数量限定で販売予定となっている。

なお、ECサイトの事業目標としては、2024年を目処に年収1億円以上、参加養豚生産者を3-5軒に増やし、定期便ユーザー1,000名超を目指すとしている。