「お伺いしたい」という言葉は、ビジネスシーンにおいてよく使われる表現ですが、「敬語として正しいのだろうか?」と疑問に思っている方も多いでしょう。
そこで本記事では、「お伺いしたい」の意味や敬語として間違っているのかどうかを解説した上で、正しい使い方・ビジネスシーンで使える例文を紹介します。また、類語・英語表現についても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
「お伺いしたい」の意味とは
「お伺いしたい」は、「訪問したい」と「尋ねたい・聞きたい」という2種類の意味を持ちます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
「訪問する」の謙譲語
「伺う」は、相手先へ行く・出向くという意味を持つ「訪問する」の謙譲語にあたります。自分をへりくだって相手を立てる敬語表現で、こちらから相手の場所へ訪問したいことを目上の人や取引先などに伝える際に使う表現です。
<例文>
・部長の山田がお伺いしたいと申しているのですが、ご都合いかがでしょうか。
・子どもと一緒にお伺いしたいのですが、よろしいでしょうか。
「聞く・尋ねる」の謙譲語
もう一方の「伺う」は、「聞く・尋ねる」の謙譲語です。目上の人や取引先などに何かを聞きたい場合には「聞きたい」「尋ねたい」ではなく、敬語表現である「お伺いしたい」を使います。
<例文>
・◯◯さんのご意見をお伺いしたいです。
・1点お伺いしたいことがあり、ご連絡いたしました。
「お伺いしたい」は間違った敬語?
「お伺いしたい」という言葉は当たり前のように使われていますが、厳密にいうと間違った敬語表現です。なぜ誤りなのか解説しましょう。
二重敬語で本来は正しい使い方ではない
前述したように「伺う」は「訪問する」の謙譲語にあたり、「お伺いしたい」はそこへさらに謙譲語の「お」をプラスしたかたちになっています。つまり、謙譲語が重複した状態です。このように同じ種類の敬語を重ねることを「二重敬語」といい、本来は間違った使い方になります。敬語として正しいのは「伺いたい」という言い方です。
しかし、「お伺いしたい」という言い回しが浸透しているため、基本的には使っても問題はないとされています。2007(平成19)年2月に文化庁が発表した「文化審議会答申」の中でも、本来二重敬語は適切な表現ではないが習慣として定着している言葉もあり、その一例として「お伺いする」を挙げています。
本来のルールを照らし合わせると間違った使い方ではあるものの、文化庁も習慣化していると認めるほどなので、使っても許容されると考えていいのではないでしょうか。
引用元:文化庁「文化審議会答申敬語の指針」
「お伺いさせていただく」にも注意
「お伺いしたい」のほかに「お伺いさせていただく」というのも、よく見聞きする言葉です。しかし、「お+伺い+させていただく」の3つの謙譲語から成るフレーズのため、こちらも正しい表現ではありません。過剰な敬語となってしまうので、正しい表現である「伺います」などを使うようにしましょう。
「お伺いしたい」の使い方・例文
「お伺いしたい」の使い方を例文とともに紹介します。
【訪問】メールで伝える場合
メールの場合は口頭で話しているときと違いニュアンスが伝わりにくいので、特に言葉遣いには気をつけたいものです。訪問したい旨をメールで伝える場合は、下記のように使いましょう。
<例文>
お世話になっております。△△株式会社の田中です。
先月ご案内した新製品のサンプルが完成いたしました。
3月5日に貴社にお伺いしたいのですが、ご都合いかがでしょうか。
【聞く】電話で伝える場合
電話で何かを聞きたいときは、下記のように使うことができます。
<例文>
お忙しいところ失礼いたします。先日購入した◯◯についてお伺いしたいので、恐れ入りますが担当者の方におつなぎいただけますでしょうか。
「お伺いしたい」の類語・言い換え表現
ここでは、「お伺いしたい」の類語・言い換え表現を紹介します。状況に合わせて上手く使い分けましょう。
参る
「参る」は「行く・来る・困る」と複数の意味を持つ言葉で、「訪問する」の謙譲語でもあります。
「伺う」「参る」どちらも同じ「訪問する」の謙譲語ですが、「伺う」は訪問先を敬う表現で、「参る」は話し相手を敬う表現という違いがあります。敬意を払う相手によって使い分ける必要があるので注意しましょう。
お会いする
「お会いする」は「会う」の謙譲語です。内容によっては「お伺いしたい」の言い換え表現として使えます。
ただ、少しフランクな印象を与える場合があるので、使う相手に注意しましょう。より丁寧な表現をしたいときは、「お目にかかる」を使うのがおすすめです。
お聞きする
「お聞きする」は「聞く」の謙譲語にあたります。すなわち、「お伺いする」と同じ意味です。ただし、「お聞きする」よりも「お伺いする」の方がより丁寧な表現といえます。状況によって上手く使い分けてみてください。
「お伺いしたい」の英語表現
「訪問する」という意味のお伺いを英語で表現したい場合、「visit」「come」などを使います。「聞く」という意味のお伺いの場合は、「ask」などを使って表現することが可能です。
「〜したい」は「want to」と「would like to」がありますが、丁寧な言葉遣いが必要な場面では後者を使います。
<例文>
・I would like to visit you at your company next week.(来週、御社へお伺いしたいです。)
・I'd like to ask you something. (お伺いしたいことがあるのですが。)
「お伺いしたい」の正しい使い方を覚えよう
「お伺いしたい」の意味や使い方を紹介してきました。
本来「お伺いしたい」は二重敬語で誤った敬語の使い方になりますが、「お伺いしたい」という使い方で浸透しているので、一般的には許容されています。しかし、気にする人もいるかもしれないので正しい使い方も覚えておくといいでしょう。
また、言い換え表現も覚えておくと相手や状況に合わせて使い分けることができるので、ぜひ参考にしてみてください。