ビジネスメールなどの決まり文句としてよく見掛ける「ご検討よろしくお願いします」について、詳しい意味や使い方、例文を紹介します。
「ご検討のほどよろしくお願いいたします」など、目上の人向けのより丁寧な表現や、間違えやすい言葉に類語、英語表現、返事の仕方もまとめました。
「ご検討よろしくお願いします」の意味とは
まず「検討」とは、物事を詳細に調べて考えることを意味する言葉です。
「検」は「調べる」「取り締まる」、「討」は「極める、調べる」「攻めうつ」といった意味を持ちます。この「調べる」「極める」という意味が重なったものが「検討」です。
そこに、丁寧を表す接頭語の「ご」をつけて「ご検討」としています。
「ご検討よろしくお願いします」という表現は、「ただ考えるだけでなく、慎重に吟味してほしい。深く考えてほしい」という意味が含まれています。「深く考える」という意味のため、重要度が高い内容に対して使われる傾向があります。
「ご検討よろしくお願いします」の使い方
「ご検討をお願いします」は、ビジネスメールや手紙などで文末に使うのが一般的です。物事を検討してほしい際の依頼文に使われる丁寧な表現です。口頭や電話で使用することもあります。
丁寧語の表現であるため、上司や取引先など目上の人に使用することもできます。しかしさらに敬意を表したい場合は、後ほど説明するより丁寧な敬語を使うといいでしょう。
「ご検討よろしくお願いします」の例文
「ご検討よろしくお願いします」を使うシーンに分けて、例文を紹介します。
複数の候補から選んでもらう場合
日程調整のメールを送る時の文末の締めとして、「ご検討よろしくお願いします」を使っている例を見てみましょう。
次回のお打ち合わせですが、下記日時のご都合はいかがでしょうか。
1.◯月◯日 ◯時~◯時
2.◯月◯日 ◯時~◯時
3.◯月◯日 ◯時~◯時
もしご都合がつかない場合は、他の日程で調整いたしますので、いくつか候補をお聞かせいただけましたら幸いです。
ご検討よろしくお願いします。
このように「相手にお願いをしている」という意識を忘れず、「ご検討よろしくお願いします」を文末に使います。
なお日程調整のメールでは、往復の手間を省くためこちらから候補を提案し、さらに都合が合わなかった際のことも考え、最低限のやりとりで済むように文章を組み立てることがポイントです。
相手にメールの返信を考えてもらう時間=相手の時間を奪うことですので、簡潔で分かりやすい文章を送ることを心掛けましょう。
提案の承諾可否を判断してもらう場合
こちらの提案の検討・承諾をしてもらう際にも、「ご検討よろしくお願いします」を使用します。
この意味合いで使用する場合は前述とは少しニュアンスが異なり、提案に対して前向きに考えてほしいという意味も込められています。
例えば、新サービスや商品の導入の際に、契約を結ぶかどうか判断してもらう際に使う「ご検討よろしくお願いします」などがこのケースです。
普段「何卒、よろしくお願いいたします」などと文末で締めるところを、「ご検討よろしくお願いします」に置き換えるだけで、より相手の承諾を強く求めることができます。
本日は、ご提案の機会をいただきまして、ありがとうございました。
ご多忙と存じますが、ご検討よろしくお願いします。
例文のように、時間や機会をもらったことに対する感謝の言葉を前置きすることによって、より丁寧な印象を相手に与えられるでしょう。
「ご検討よろしくお願いします」のより丁寧な表現
前述のように「ご検討よろしくお願いします」は目上の人に使用することができますが、より丁寧な印象を与えたい場合は、クッション言葉や謙譲語などを活用するといいでしょう。下記で、より丁寧な表現を紹介します。
ご検討のほど
「~のほど」を加えて、「ご検討のほどよろしくお願いします」などの形で使用することができます。
「ほど(程)」とは、物事の状態・段階や、ある広がりを持った時間・空間などを表す言葉です。「~のほど」と付け加えることで、断定や強制を避けて、印象を和らげる働きがあります。
「ご検討をお願いします」だけでは、検討するという行動を指示しているように感じられる危険性があります。その印象を避ける目的で「~のほど」を付け加えるのです。
お願いいたします
「します」を「いたします」に変えて、「ご検討よろしくお願いいたします」と表現することもできます。
「いたします」は謙譲語で、「します」より相手への敬意が強いとされています。謙譲語とは、自分側の立場を下げて、相手への敬意を表す言葉です。
もちろん、前述の「のほど」と組み合わせて「ご検討のほどよろしくお願いいたします」などと表現することもできます。
なお「お願い致します」のように、「いたします」の部分を漢字で書く人がいますが、これは一般的ではありません。「水の音が致します」のように、動詞の場合は漢字で記載しますが、「お願いいたします」のように補助動詞の場合は、ひらがなで書くことが一般的だからです。
お願い申し上げます
「申し上げる」を使って、「ご検討よろしくお願い申し上げます」とすることで、目上の人への敬意を表すことができます。
お願いを「申し」「上げる」ので、厳密には二重敬語に当たるともいわれますが、「申し上げる」は一つのまとまったフレーズとして広く使われているため、使用して問題ないでしょう。
存じます
「存じます」は「思う」「知る」などの謙譲語です。詳しく説明すると「思う」の謙譲語である「存ずる」に、丁寧語の「ます」が付いた言葉です。
多くの場合「ご検討いただければと存じます」や「ご検討いただきたく存じます」などの形で使用されます。
謙譲語を用いた丁寧な表現のため、目上でない会社の同僚や後輩に使うと違和感が生じるため注意しましょう。
幸いです、幸いに存じます
「幸いです」を用いて、「ご検討いただけますと幸いです」や「前向きにご検討いただければ幸いです」などと表すこともできます。
ここでの「幸いです」は、「~してもらえるとうれしいです、ありがたいです」といった意味で、依頼を表しています。
「幸いです」という言葉は、柔らかい印象で、相手の行動を間接的に促す表現です。ただし「です」と断定しているので、相手に対して一方的に要望を伝えるような印象を感じる人もいるようです。また、「です」は丁寧語ではありますが、それだけだと敬意が足りないという意見もあります。
そこで、「ご検討いただけますと幸いです」のように謙譲語の「いただく」と併せて使ったり、「ご検討いただけますと幸いに存じます」のように、「存じます」と共に使ったりすることで、強い敬意を表すことができます。
「ご検討よろしくお願いします」の類語・言い換え表現
次に、「ご検討よろしくお願いします」とよく似た言葉を紹介します。併せて覚えておきましょう。
「ご一考のほどよろしくお願いします」
「一考(いっこう)」には、「一度考えてみること」という意味があります。「一考」に「ご」がつくことで丁寧な印象を与えます。
「検討」が「物事を詳細に調べて考えること」なので、それよりやややライトなニュアンスがあるといえるでしょう。
「ご思案(しあん)のほどよろしくお願いします」
「思案(しあん)」とは、「思いを巡らせ、深く考えること」という意味です。こちらも「ご」がつくことで丁寧な印象を与えます。
「いろいろある手法から最善の方法を考える」というニュアンスを含みます。
「ご検討」と間違えやすい表現
「ご検討」とはその物事をしっかり調べて深く考える、物事の良しあしを考えるという意味を表します。「しっかり」と吟味する意味を元々含んでいるため、真剣さや責任感が求められます。
ここでは「ご検討」と似ているけれど、意味が異なる表現をご紹介します。
ご査収
「ご査収」は「ごさしゅう」と読みます。「査収」とは内容をしっかり確認してから受け取ってください、という意味です。「ご検討」のように、深く考えることや判断することを促し、返答を求める言葉とは意味が少し異なります。
例えば請求書のように、よく確認して受け取ってほしい書類や添付ファイルを送る際に用いられる表現です。ビジネスシーンで頻繁に使われるため、意味や使い方をしっかり把握しておきましょう。
なお取引先などから「ご査収ください」と書類が送られてきた場合は、「チェックした」ことが伝わる返信を行いましょう。
ご考慮
「ご考慮」は「ごこうりょ」と読みます。「考慮」とはある事柄を判断する際に、さまざまな情報や条件を踏まえて慎重に考えることを指します。
重要な意思決定や問題解決などに際して、何か注意すべき事柄があるときによく用いられます。例えば、「誠に勝手ながら、○○についての事情もご考慮いただけますと幸いに存じます」などの形で使用されます。
見当
「見当」も「けんとう」と読みます。ここで指す「見当」とは、物事を推測、予想したりすることで、「検討」とは意味が全く異なります。「見当」と似た言葉には、「おおよその見積もり」「ざっと推測する」「ある程度予測がつく」などが挙げられます。
「○○の発注先については、私にていくつか見当をつけておきます」などのように使用します。
「検討」と同じ読みであるため、メールでの誤変換には気を付けましょう。
「ご検討よろしくお願いします」と言われたときの対応、返事の仕方
ここまで「ご検討」の使い方についてご説明してきました。
では逆に、相手から「ご検討よろしくお願いします」と言われた場合は、どのような対応が正しいのでしょうか。
きちんと検討して、早めに明確な返事をする
前述した通り、「検討」とはしっかりと調べて決断することです。「ご検討ください」と言われた際には、検討した結果どうするのかを伝える必要があります。YESかNOか、明確な返事をできるだけ早く返しましょう。
もちろん、答えにかかわらず、返事をしないことが一番失礼に当たります。早く答えを出すことがベストですが、さまざまな事情ですぐに答えが出せないのであれば、検討中であることや、答えが出せる時期の目安について返答するのが、最低限の礼儀でしょう。
YESなら「承りました」などと伝える
検討した結果、返事が「YES」の場合、「承りました(うけたまわりました)」「承知しました」「かしこまりました」などを用いて返事をしましょう。
例えば、「スケジュール変更の旨、ご提案いただいた内容で承知いたしました」といった形で表現します。
NOなら理由を述べつつ、代替案の提案か「またの機会に」と伝える
一方検討した結果、返事が「NO」の場合、ただ断るだけではなく理由を説明すると親切でしょう。予算不足や人手不足など、明確な理由をきちんと伝えることで、相手も納得しやすくなります。
また、もし代替案や「これであれば受け入れられる」という条件を提案できるのであれば、それらを伝えることがベストです。厳しければ、今後の会社同士の付き合いも考慮し、「またの機会に」とフォローを付け加えることをおすすめします。
「ご検討よろしくお願いします」の英語表現
英語では「検討する」をどのように表現するか、紹介します。
まずビジネスシーンでよく使われている表現に「Thank you for your consideration.」があります。
「consideration」は、「検討、考慮、思いやり」などを表す名詞です。
ここで使われている「Thank you for ~」は、相手に依頼をする際に、先に「ありがとう」を伝えることで「よろしくお願いします」のニュアンスを表しています。
また、ビジネスメールなどの結びによく使われる表現として「Thank you for taking the time to consider my application.」もあります。「application」は「申し出、申し込み」といった意味です。
「ご検討よろしくお願いします」を正しく使おう
ビジネスシーンで頻繁に使う「ご検討よろしくお願いします」についての意味や使い方を説明しました。
使う相手によって、より丁寧な
- ご検討のほどよろしくお願いします
- ご検討よろしくお願いいたします
- ご検討よろしくお願い申し上げます
- ご検討いただければと存じます
- ご検討いただけますと幸いに存じます
などの表現も併せて覚えておくと便利でしょう。