そして得られた変光振幅と星のカラーとの相関を調べたところ、ダスト形成過程供給量の指標となる中間赤外線カラーが変光振幅と関係しており、変光が大きいほど赤いカラーを示すことが判明したとする。
さらに、中間赤外線放射は中心星だけでなくダストからも影響も受けるものの、星のダストに関する輻射輸送計算を実施し、中間赤外線の変光振幅は中心星の明るさの振幅変化率に対応することも確かめられたとしている。これは、AGB星の光を、その周辺に分布するダストが吸収し、中間赤外線領域で再放射するためと考えられるという。
研究チームはこれらの結果から、AGB星のダスト形成過程供給量が、星の明るさの変化の強さによって決まっているということが示唆されるとしている。
ダストは、星の周囲に存在するガスがある一定以上の密度・一定以下の温度を持つ領域で形成されると考えられている。そのため、この関係を引き起こすメカニズムとして、中心星の明るさの振幅変化率が大きいほど、光度変化時に温度が低下してダストが形成可能になる領域が広くなり、これに伴ってより多くのダストが形成供給される可能性が推測されるとする。
今回の研究をさらに進め、宇宙におけるダスト供給のメカニズムを明らかにするには、さまざまな天体に対して中間赤外線波長で長期間モニター観測することが有効だという。研究チームは、南米のチリ・アタカマで建設が進められる口径6.5mの赤外線望遠鏡「東大 アタカマ天文台」(TAO)用の中間赤外線装置を開発中で、同装置を用いたAGB星のモニタ観測を計画中だとし、それ加え、高い空間分解能を持つ望遠鏡によるダスト形成過程の直接撮影も計画中だとする。そしてこのような研究により、宇宙のダスト形成過程と形成供給の描像の理解を深めていくとしている。