ボルボが東京・青山に「Volvo Studio Tokyo」を開設した。電気自動車(EV)に特化したスペースでクルマを見たり試乗したりすることも可能だが、あくまでブランド発信拠点という位置づけで、この場所でクルマは売らないという。どんな施設なのか、開店前に訪問してみた。
収益ゼロ? オープンの狙いは?
「Volvo Studio」は世界に6カ所ある。所在地はストックホルム、ニューヨーク、ミラノ、ワルシャワ、上海、東京だ。東京のスタジオは「Volvo Studio Aoyama」としてもともと青山にあったのだが、今回は青山通り(国道246号)を挟んだ向かい側に場所を移転して新たにオープンした。Volvo StudioでEVに特化したのは東京が初めて。スペースは倍くらいに広くなっている。
店内にはボルボのEVが並んでいる。日本で販売しているEVは「XC40」と「C40」の2車種だが、今後はさらにコンパクトな車種の導入を検討しているようだ。
専用のアプリをダウンロードすれば、ARを用いたいろいろなコンテンツを体験することができる。具体的にはスタジオ内のマーカーをスマートフォンのカメラでスキャンして、ボルボのトリビアやEVの特徴などを学んでいく内容となっている。
アプリを入れてもらった人には、クルマを売る側としては、プッシュ通知を送って何らかのセールス活動を展開したくなるところだと思うのだが、ボルボにはアプリをそうした用途で活用するつもりはないらしい。アプリをダウンロードしたときに「ニュースレターを購読するかどうか」を聞かれたが、登録はスキップできた。
「Volvo Studio Tokyo」ではEVを売らない。店舗にいるのは販売員ではなく、ボルボのブランドやEV、スウェーデンのカルチャーなどに詳しい「ブランド・アンバサダー」だ。
クルマのディーラーは、クルマの「購入検討度」が高くない人にとってかなり敷居の高い施設だ。ボルボ・カー・ジャパンでは「Volvo Studio Tokyo」の垣根を低くして、「EVって何?」というレベルの人にも来店してもらいたいと考えているという。デジタルコンテンツを充実させたのには、若年層に対する間口を広げるためという側面もあるようだ。
ボルボは「2040年までにクライメートニュートラルな企業になる」ことを目標に掲げている。EVの販売比率は2025年までにグローバルで50%(日本国は45%)、2030年までに同100%を目指す。なかなか野心的な数字だ。目標達成に向けてはボルボのEVを多くの人に知ってもらう必要がある。「Volvo Studio Tokyo」はクルマも売らない、グッズも売らない、コーヒーもタダなので1円も収益が発生しない施設だと思われるが、ボルボEVのタッチポイントとして大事な役割を担うことになる。