日本M&Aセンターホールディングスと十六フィナンシャルグループは4月6日、事業承継・経営承継の支援に関する合弁事業の検討開始について基本合意書を締結した。
十六フィナンシャルグループが営業基盤とする岐阜県・愛知県では、後継者不在が深刻化している。両者が一丸となって地域企業の経営継承問題の解決に貢献するべく、2023年夏の合弁会社設立に向けて検討を進めていくという。
なお、日本M&Aセンターと地域銀行における経営承継支援に関する合弁事業は、これが全国初の取り組みとなる。
■「後継者不在」が深刻化する岐阜・愛知
国内の中小企業380万社の約3分の2にあたる、245万社で経営者の年齢が67歳を超えており、うち127万社で後継者不在となっているなど、「後継者不在」が社会問題化している。
十六フィナンシャルグループが営業基盤とする岐阜県・愛知県では、後継者不在率が全国平均を上回っており(岐阜県:62.9%、愛知県:58.4%、全国平均:57.2%)、休廃業・解散件数は両県で年間約4,000件に上っている。
十六フィナンシャルグループ傘下の十六銀行は、2019年3月に「経営承継支援室」を設置し、地域の経営継承の課題に取り組んできた。一方、日本M&AセンターはM&A仲介のリーディングカンパニーとして、中堅・中小企業のM&A 仲介において累計7,500件を超える成約実績を有している。
今回、M&A支援を通して岐阜・愛知の経営継承にさらに注力すべく、両者が合弁会社設立に合意した。
■経営継承問題の切り札として注目されるM&A
日本M&Aセンターと十六フィナンシャルグループは、十六銀行がM&A業務を開始した2000年以来のパートナーだ。十六銀行が百五銀行、名古屋銀行とともに設立した「中部金融M&Aネットワーク」において、三宅卓氏(現 日本M&Aセンター 代表取締役社長)がアドバイザーを務めるなど、長年にわたって信頼関係を積み重ねてきた。
両者の合弁会社設立には、日本M&Aセンターの「最高のM&Aをより身近にしたい想い」と、十六フィナンシャルグループの「地域のために、銀行業務の枠にとらわれず貢献したい想い」が詰まっているという。
M&Aは近年、経営継承問題の切り札のひとつとして注目されている。M&Aによって、後継者不在企業は事業存続ができるだけでなく、大手・中堅の傘下に入ることで、さらなる成長も期待できるからだ。また、譲渡企業の経営者はハッピーリタイアができ、従業員の雇用も守られる。さらに、譲受企業は人材や顧客の獲得によって、成長を加速させることができる。
「M&Aというと冷たいイメージがあるかもしれませんが、成約式は結婚式のような雰囲気です。自分が苦労して創りあげた会社が存続でき、家族のように付き合ってきた従業員の雇用が守られるということで、譲渡企業の経営者の多くが涙を流して喜ばれます」と、日本M&Aセンターホールディングス 代表取締役社長 三宅卓氏は語る。
■両者の強みを掛け合わせ、地方創生を推進
2023年夏に設立予定の合弁会社のミッションは、岐阜・愛知で深刻化する後継者不在問題を解決し、企業の存続と発展に貢献することだ。
140年以上の歴史の中で十六銀行が培ってきた、広く深い顧客基盤や情報網、人的ネットワークと、日本M&Aセンターが有する事業承継・成長戦略の多彩なソリューションを掛け合わせることによって、地域企業を休廃業から救い、地方創生を推進していくという。
日本M&Aセンターホールディングスの三宅氏は、岐阜・愛知以外の地域における地域銀行との合弁事業にも意欲を見せており、今後同様の取り組みが他地域に広がっていく可能性もありそうだ。