三菱自動車工業が新型軽自動車「デリカミニ」を発表した。発売は5月25日の予定だ。三菱自動車の軽自動車といえば「eKワゴン/eKクロス」と「eKスペース/eKクロススペース」というラインアップだったが、eKクロススペースがデリカミニに入れ替わる。その理由とは?

  • 三菱自動車「デリカミニ」

    三菱自動車の新型軽自動車「デリカミニ」

背高軽のアウトドア派生モデルが人気?

名前からも姿からもわかる通り、デリカミニは三菱自動車の人気ミニバン「デリカ」のファミリーに属する新型車だ。デリカミニの事前撮影会があったので現場でいろいろと話を聞いたのだが、三菱の人たちはミニバンの「デリカ D:5」を「親デリカ」と呼んでいたので、軽のデリカミニは「子デリカ」的な位置づけなのだろう。

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    デリカの親子共演。左が「子デリカ」こと「デリカミニ」、右が「親デリカ」こと「デリカ D:5」

軽自動車の販売台数は全体で年間130万台ほど。そのうちの4割以上が背の高い「スーパーハイトワゴン」という車種だ。例えばホンダ「N-BOX」、スズキ「スペーシア」、ダイハツ工業「タント」などが軽スーパーハイトワゴンであり、三菱自動車の既存ラインアップでいえば「eKスペース/eKクロススペース」が該当する。軽の売れ筋商品でイメージチェンジを実施するのは、けっこう勇気のいる決断だったはずだ。

軽自動車を売っているメーカーは、同じ車種に「スタンダードモデル」と「カスタムモデル」をラインアップしがちだ。例えばN-BOXにはN-BOXカスタム、タントにはタントカスタム、スペーシアにはスペーシアカスタムがある。カスタムと名の付くモデルは、通常版よりも押し出しが強かったり、顔がギラギラしていたりする場合が多い。

そこに最近、新たな流れが生まれている。アウトドア系派生モデルの興隆だ。スペーシアにはもともとスペーシアギアというモデルがあったが、先ごろ、タントにもタントファンクロスというアウトドア系が追加となった。

eKクロススペースもSUVテイストのアウトドア系スーパーハイトワゴンだったのだが、三菱自動車は「もっとSUVに踏み込む」(開発陣)ため、これをデリカミニに置き換える。SUVテイストを強調するうえで「デリカ」を名乗るのは効果的だ。

  • 三菱自動車「デリカミニ」
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  • SUVテイストの強い「デリカミニ」

三菱自動車によればeKクロススペースは「アクティブシニア層」によく売れていたものの、デリカミニではそれ以外のところにもリーチしていきたい意向。具体的には「アクティブヤングファミリー層」に訴求したいそうだ。軽自動車を「日常づかいもするし、キャンプやアウトドアにも使いたい」と考える人たちにデリカミニを売り込むという。開発陣が提示したターゲットカスタマーは以下の通り。

  • 小さな子供のいる30~40代のヤングファミリー層。共働きで家族の送迎や買い物などに軽自動車を日常づかいし、週末にはアウトドアレジャーへ出かけるようなイメージ。

  • 40代後半~50代のアクティブミドル男性。子離れ済み、妻と生活。もともと好きだったアウトドアをこれからも無理せず、気ままに楽しみ続けたいという人たち。車中泊、キャンプ、夫婦での遠出などにクルマを使う。多少は荒れた道でも安心・快適に運転したい。SUVやミニバンからのダウンサイジングも多いので、内外装の質感を求める。釣り道具やキャンプ道具をたくさん積めるところも重要視する。

見た目だけでなく、サスペンションをクロスカントリー路で鍛えて専用のチューニングとしたり、大径タイヤを採用したりと中身もアウトドア色を強めてあるのがデリカミニの特徴。eKクロススペースと比べると装備内容も充実している。具体的に見ると、Tプレミアムというグレードでは、オプションだったハンズフリーのオートスライドドアが運転席と助手席に標準装備となっていたり、これまでは「寒冷地パッケージ」に含まれていたシートヒーターやステアリングヒーターが標準装備となっていたりする。そのぶん価格も上がっていて、eKクロススペースが165.55万円~206.8万円だったのに対し、デリカミニは188.1万円~223.85万円となる。

  • 三菱自動車「デリカミニ」
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  • 撥水シート生地を採用

  • 三菱自動車「デリカミニ」
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  • 後席は片側ずつのロングスライドが可能。シートアレンジは多彩だ

デリカミニはゼロベースで開発したクルマではなく、eKクロススペースをベースにイメチェンを図ったクルマだ。なので、完全新規のクルマよりも作るのに手間がかからなかったはずなのだが、デリカファミリーという見せ方により新味も感じるし、三菱らしさが強まり、軽スーパーハイトワゴン市場でも個性的な1台として存在感が高まった。ミニバンのデリカ D:5を所有しているユーザーがセカンドカーとしてデリカミニを買うこともあるだろうし、あるいはデリカミニで三菱自動車にデビューしたユーザーがデリカ D:5にステップアップする可能性もありそうだ。