ポータブル電源を展開するEcoFlow Technology(エコフローテクノロジー)が、電力会社からの送電に頼らずに電気を自給自足できるオフグリッド型の施設「EcoFlow House」を長野県伊那市の山中に完成させました。4月20日より一般向けにグランドオープンする考えです。一体、どんな施設なんでしょう? メディア向けの内覧会で見学してきました。

  • SDGsにも貢献するオフグリッド型の施設「EcoFlow House」を覗いてきた

EcoFlow Houseとは?

EcoFlow Houseは、JR飯田線の伊那市駅からクルマで20分前後、木曽山脈の麓にある施設です。伊那市でアクティビティ体験施設「ASOBINA」を運営しているERUK(エルク)をはじめとする地元各社が運営に協力しています。訪れたのは4月上旬。穏やかな春の日で、あちらこちらで桜が満開の時期を迎えていました。

  • 長閑な田園風景が続く伊那盆地

もともとスキー場やキャンプ場などとして使われてきた敷地にお目見えしたEcoFlow House。利用用途は、宿泊、デイユース、ロケ場所など、さまざまなケースを想定しています。現在は、ポータブル電源「DELTA 2」(実売価格は123,000円前後)の購入者を対象に、“事前招待制”で宿泊者を募集しています。EcoFlow公式HPにて3月17日より募集を開始したところ、すでに30組(80名)を超える応募があったといいます。4月20日より順次、宿泊がスタートする見込みです。

EcoFlow Houseでは、同社のポータブル電源やソーラーパネルのうち12製品を試すことができます。屋根には合計2,000Wのソーラーパネルを設置しており、毎時1kWを発電中。担当者は「3人家族が1日に消費する電力は12.2kWhほど。今後はソーラーパネルを増やすことで、晴天時にわずか6時間の日照時間で12kWhを発電できる設計にしていきます」と説明します。

  • EcoFlow Houseに設置したポータブル電源やソーラーパネル、パワーグリッドシステムの一覧

  • 屋根には400W×4枚、100W×4枚のソーラーパネルを設置済み

細長い建物の手前側は多目的スペース。奥は居住スペースになっており、1階がリビング、2階がベッドルームという設計です。

  • 多目的スペースではこの日、地元レストランのkurabeがメディアに向けて「信州伊那谷ガレット」「伊那谷生パスタ」を提供。ここでもDELTA PROなどのポータブルバッテリーが活躍した

  • モダンな居住スペース

完全オフグリッド型のライフスタイル実現に欠かせないのが「パワーシステム」。小住宅のほか、トレーラーハウス、キャンピングカーなどの電源としても最適な小型サイズの製品です。IH調理器、給湯器、電子レンジ、食洗器、冷蔵庫などに給電することで「都会の生活と遜色なく暮らせる」と担当者。電気の使用量 / 蓄電量はiPadのアプリ上でも確認できる仕様です。

  • パワーシステムから分電盤を経由し、部屋の各コンセントへ電気が送られている

  • 使用中 / 充電中の電力はアプリでモニタリングできる

ネット環境が気になる、という人も多いことでしょう。正直なところ、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの電波が何とか入る(楽天モバイルは厳しい)状況でしたが、心配ご無用。衛星通信「Starlink」(スターリンク)により、しっかりと通信手段が確保されていました。

EcoFlowで環境負荷の低減へ

EcoFlow Houseの目的は「1.地域の活性化に貢献すること」「2.移住希望者を増やすこと」「3.地元企業との連携」「4.災害対策(ポータブル電源やソーラーパネルの活用により)」。メディア内覧会には、ERUK代表取締役の呉本圭樹氏のほか2名が登壇し、「山」「気候の変化」「エネルギー」をキーワードにトークセッションを展開しました。

  • (左から)ERUK代表取締役の呉本圭樹氏、BEE DESIGN代表取締役の山下勝彦氏、ファーストアッセント代表取締役の花谷泰広氏

呉本氏はパラグライダーの日本代表として、世界中の空を飛んできた経験を持つ人物。エネルギーに対する考え方は国によって違う、という話の流れのなかで「ヨーロッパには原子力発電所を持つ国もありますね。ただスペインなどは、山という山に風力発電があって、そこで多くの電力をまかなっていました。日本の空を飛んでいて『嫌だなぁ』と感じるのは、太陽光パネルが無作為に広がってしまい、山の景観を損ねていること」と語ります。とはいえ、パラグライダーにも電力は必要です。2~3週間の長きにわたり世界を転戦するときには、いかに電源を確保するかが重要になる、と呉本氏。そこで折り畳めるEcoFlowのソーラーパネル、そして持ち運べるバッテリーの有用性について強調していました。

  • ERUK運営のASOBINAで提供しているいくつかのアクティビティは、EcoFlow Houseでも利用可能。その電源としてEcoFlowのエネルギーを活用している

EcoFlow Houseの内装に携わったBEE DESIGN代表取締役の山下勝彦氏は伊那市の出身。子ども時代を振り返り、「昔は山に万年雪が残っていたでしょう。でも現在は雪が留まっておらず、山の雪はすべて溶けてしまいます。そういったことからも地球温暖化を肌で感じる日々です」と話します。普段はコンプレッサーを回してエアブラシを吹き付けることで絵を描いている山下氏。外の現場では電源を確保できないで困ることがある、電気の取り合いになることもある、と話したうえで「ポータブル電源があれば、働き方自体も変わってくると感じています」と説明しました。

  • 山下氏によるデモンストレーションも行われた

  • ものの30~40分でアート作品が完成

伊那市とは甲斐駒ヶ岳を挟んで反対側にある北杜市(山梨県)で山小屋の経営や旅行業を運営しているファーストアッセント代表取締役の花谷泰広氏も登壇。アルピニストとして四半世紀以上にわたりヒマラヤを訪れていると、どんどん氷河が後退しているのが分かります、地球環境はいま加速度的に変化しています、と警鐘を鳴らします。EcoFlow製品については「小さな歯車から回すことができるのが素晴らしいですね。もっと環境にシビアな山小屋でも活用できるでしょう。いま環境省では2050年カーボンニュートラルの実現に向けて取り組みを進めていますが、民間や個人レベルでもこうした小さな歯車から回していくことができれば良い。5年前にはなかったような、こうしたテクノロジーが生まれてくることで、環境に対する負荷が少しでも低減できるのでは、と感じています」と話していました。