渡辺明名人に藤井聡太竜王が挑戦する第81期名人戦七番勝負(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)は、第1局が4月5日(水)午前9時に東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」で開幕しました。渡辺名人の封じた封じ手が開封され、戦いは2日目に突入しています。
「あ、角換わりじゃない!」
数多くの関係者・報道陣が見守るなか、振り駒で先手となった渡辺名人が飛車先の歩を突いて注目の七番勝負が幕を開けました。この直後、渡辺名人は角道を止めて角換わりを拒否する趣向を見せます。3月末まで両者の間で戦われていた棋王戦五番勝負が全局角換わり腰掛け銀のシリーズであっただけに、控室の棋士たちも意表を突かれた様子です。
渡辺名人の指し手からは、ともすれば暗記力の勝負になりがちな角換わりの研究勝負を避けて総合力の勝負に持ち込む意図が見え隠れします。矢倉系の将棋になれば自身の経験が生きることも織り込み済みでしょう。盤上は、後手の藤井竜王が雁木囲いへの組み換えを図ったところで渡辺名人が早繰り銀の要領で仕掛けて中盤戦に突入しました。
堅さ対バランスの構図
対局開始から30手進んだ時点で渡辺名人は2時間、藤井竜王は3時間を消費して戦いは1日目の山場を迎えます。3筋で歩がぶつかった状態のまま囲いを整備したのは渡辺名人らしい間合いで、金銀が密集する好形を築きつつ自玉の堅さを主張します。対して藤井竜王が居玉のまま桂を跳ねて仕掛けたのは、陣形のバランスを重視する現代的な感覚といえます。
この直後、後手の藤井竜王が飛車先の歩を交換したところで対局は封じ手の定刻である18時30分を迎えました。やがて渡辺名人が記入した封じ手を立会人の中村修九段が受け取って1日目が終了。2日目の封じ手開封以降は、藤井竜王が9筋、渡辺名人が2筋に手をつけて攻めの手がかりをさらに増やし、局面は一触即発の様相が強まっています。2日目の午後からは盤面全体を使った激しい攻め合いが予想されます。終局は本日4月6日(木)の夕方以降が見込まれています。
水留 啓(将棋情報局)