「自尊心」とは文字通り、自分を尊いと思う感情のことで、個々人ごとに自尊心の高さは異なります。
本記事では自尊心について、意味はもちろん、心理学での考え方やプライドとの違い、自尊心が低い人の特徴と原因などを解説します。自尊心を高める方法や、自尊心が高まる名言もまとめました。
自尊心とは? 意味やプライドとの違いをわかりやすく解説
自尊心の基本的な言葉の意味は、自分を尊いと思う心、つまり自分を大切にする気持ちのことです。自らの考えや言動に自信を持ち、他人からの干渉を排除して、自分の品位を保つ心理や態度を意味しています。
また心理学の世界では「self-esteem」の訳語として、長く研究が続けられている概念で、文献に最初に登場したのは1892年とされています。
心理学では、自尊心の中にも「顕在的自尊心」と「潜在的自尊心」があるとされています。顕在的自尊心とは長らく研究されてきたいわゆる「自尊心」のことで、自己に対する肯定的または否定的な態度や、自分の価値についての感情のことです。
潜在的自尊心は近年提唱されている概念で、自己認識の外にある無意識の部分での、自己に対する肯定的または否定的な態度のことを表しています。この概念では、自らの意識としては自尊心が高いとしても、無意識下では自尊心が低い、ということも起こりうると考えられています。
自尊心とプライドの違い
自尊心の類語にプライドという言葉があります。プライドとは英語の「pride」からきたカタカナ語で、英語の「pride」には自尊心という意味もありますが、うぬぼれや思い上がりという意味もあります。
また自尊心とは前述のように自分を大切にする心であるのに対し、プライドはそれに加えて、他人より優れていると思う心、というニュアンスがあります。
どちらも自分を大切にする感情ではありますが、自尊心はプライドと違って、他人と比べる気持ちはありません。
自尊心が低い人の特徴
自尊心が低い人にありがちな特徴は以下の通りです。
- 自分の評価を他人に求め、他者に嫉妬してしまう
- 基本的にネガティブ思考
- 過去にとらわれやすく、諦めがち
- 自分に対して否定的
- 自分のことが嫌い
それぞれの特徴について詳しく解説します。
自分の評価を他人に求め、他者に嫉妬してしまう
自尊心の低い人は、自分の評価を自分ではなく他人に求めるという傾向にあります。
自分の評価を他人に求めている人は、他人からの評価でしか自分の価値を決められません。そのため、他に褒められている人を見ると嫉妬してしまったり、目に見えて評価してもらえないと「自分はダメな人間なんだ」と思い込んだりしてしまいます。
基本的にネガティブ思考
自尊心が低い人は自分に自信がなく、物事をネガティブな方向に捉える傾向があります。
ネガティブ思考の場合、褒め言葉を疑ってしまい素直に受け入れられなかったり、ちょっとした失敗を大きなものとして捉えたりしてしまいます。そういったバイアスがかかってしまうため、物事を悪い方に考えてしまうのです。
過去にとらわれやすく、諦めがち
自尊心が低い人には、過去の失敗に気を取られやすいという特徴もあります。
過去にとらわれすぎた結果、行動に移せないこともあるでしょう。「どうせまた失敗する」「どうせ自分には無理だ」などと、すぐ諦めてしまいます。
また、行動に移せない自分に対してさらに嫌悪感を抱き、自尊心が低くなってしまうという負のループに陥る場合もあります。
自分に対して否定的
「自分は何をしてもダメ」と、自己否定の感情を抱いてしまいやすいことも、自尊心が低い人の特徴です。
本当は良いところもあるはずなのに、悪いところだけに目を向けてしまい、「自分には価値がない」と、自分のすべてを否定してしまいます。他の人に比べて劣っていると感じやすい傾向もあります。
自分のことが嫌い
自尊心が低い人は、自分のことが嫌いです。自分のことを過小評価し、「自分はこんなこともできない」と自分を嫌いになっているのです。
自信がないのでチャレンジする勇気がなく、自分の決めた枠内での行動しかできないため、他人からはやる気がないように見える場合も少なくありません。そのため、周りにその人の良さが伝わらなかったり、「やる気がないのかな」とマイナスに捉えられたりしてしまいがちです。
自尊心が低くなる原因とは
自尊心が低くなることには何かしらの原因があります。自尊心が低くなることを防ぐためには、その原因を知っておくことが大切です。
そこでここからは、考えられる主な原因を紹介します。
過去の失敗体験を引きずっている
過去に大きなミスをした、期待に応えられなかったなど、失敗体験が原因で自尊心が低くなることがあります。失敗ばかりを思い出していると、過去ばかりに目が行き気持ちの切り替えができません。
「こんな失敗をした自分が嫌だ」「自分がいると周りに迷惑を掛けてしまう」と思ってしまったり、過去の失敗から挑戦することが怖くなって「挑戦できない自分が嫌い」と思ってしまったりするのです。
意見を否定された経験から、流されやすくなっている
他人に流されやすいことが自尊心の低さの原因となることもあります。そして他人に流されやすくなっているのは、自分の意見を他人にないがしろにされたという経験のせいである可能性があります。
自分の意見を軽んじられたり、むげにされたりすると、人は自分の意見や自分自身に価値がないと思い込んでしまうものです。そして自分の意見を言わなくなったり、持たなくなったりして、他人に流されるようになり、自我のない自分をますます無価値だと思うループに入ってしまうのです。
自尊心を高める方法
自尊心を高めることで、さまざまなことに積極的にチャレンジできるようになり、ポジティブに過ごせるようになる可能性があります。
自尊心が低いと感じている人や自尊心を高めたい人は、以下の方法を実践してみるといいでしょう。
成功体験や自分の長所を紙に書き出す
まず、自分の成功体験や長所を紙に書き出してみましょう。なぜなら、今までに成功したこと、自分の長所を書き出して可視化することが、自信をつけることにつながるからです。
自尊心が低い人は、過去に失敗したことや自分の短所ばかりに目を向けてしまいがちです。しかし、誰にでも必ず成功体験や長所があるはずです。そこに目を向けることで、自分の価値を再認識しましょう。
小さな目標を立てる
少しの努力で達成できるような小さな目標を立てることも、自尊心を高めることにつながります。なぜなら、小さな事であっても成功体験を積み重ねていくことで、自信が生まれるためです。
自信がつけばネガティブ思考が改善され、自分のことを好きになれるかもしれません。
他人と比較するのをやめる
他人と比較することで向上心が芽生えるケースもありますが、自尊心の低い人は他人と比較して、自分は劣っていると思い込み、マイナス思考に陥ってしまう癖があります。そのため、他人と自分を比較しないように心掛けましょう。
他人と自己の境界を意識し、自分自身のことに集中することが自尊心を高めることにつながります。
自尊心を高めてくれる名言3選
自尊心を高めるためには、自尊心を高める言葉を知ることも効果があるでしょう。そこで最後に、自尊心を高めてくれる名言を3つ紹介します。
「根本的な才能とは、自分に何かが出来ると信じることだ」
まずご紹介する言葉は、ジョン・レノン氏が発した「根本的な才能とは、自分に何かが出来ると信じることだ」という言葉です。
成功体験を得るためには、挑戦することが重要です。そして、挑戦するために最も重要なことは、自身にそれができると信じることだといえるでしょう。
与えられた目標に対してただ漠然と努力して成功することもありますが、自分を信じていなければ、自分が得たい成功の形を得ることは難しいといえます。
自分を信じられるように、成功体験や自分の長所を思い出しましょう。
「自分の決断を信じること」
次にご紹介する言葉は、「自分の決断を信じること」という有馬頼底(ありまらいてい)氏の言葉です。
禅僧、住職の有馬頼底氏は8歳で仏門に入り、『力を抜いて生きる』『無の道を生きる−禅の辻説法』『「雑巾がけ」から始まる禅が教えるほんものの生活力』など、多数の著書を出版しています。
「自分の決断を信じること」という言葉には、もし失敗したときには改めて別の道を選べばいいという旨の言葉が続きます。成功のためには、決断することが重要です。しかし、その決断が失敗だったからといって深刻に思う必要はありません。次につなげられる失敗は、成功へと至るための糧とも呼べるでしょう。
「100の練習ができなければ、50でもいいし、30でもいい」
この言葉は、「公務員ランナー」の別名を持つマラソン選手、川内優輝氏の言葉です。埼玉県庁に入庁後、フルタイムの社会人生活を送りながら、マラソンの練習を積み重ねてきました。
誰もが常に「100の練習」ができる環境にいるわけではありません。100ができなかったとしても自分を責めるのではなく、そのとき、自分ができる限りのことをすることが大切だ、ということを表しています。
できなかったことより、少しでもできたことに目を向け、前向きに進んでいきましょう。
自尊心を高めて、自信を持ってポジティブに生きていこう
過去の失敗体験を何度も思い出したり、他人と比較したりして落ち込んでいると、自尊心が低くなってしまいます。
自分の長所に目を向けたり、小さな目標を立てて成功体験を積み重ねたりなど、考え方や行動一つで自尊心は高められます。少しずつでいいので、試してみましょう。
また、自尊心が低くなりかけたり、ネガティブ思考になったりしてしまったら、自尊心を高めてくれる言葉を思い出してくださいね。
他の誰でもなく、あなた自身が自分を認めてあげることが大切です。